第十一話 『ねっとりとした風声』
やはり投稿時間が遅い。どうしよう(真顔)
その言葉を聞いた時、レイはそれほど驚愕も、驚きもしていなかった。
というのも、今更能力者が増えたところで何も変わらないからである。レイは能力もはっきりしない未熟者であるのだから、美鈴や詩織のような能力者が何人増えようが、結局は死ぬか生きるか、ただそれだけだ。死に至るダメージに、さらに死ぬほどのダメージを受けてもオーバーキルになるだけ、という事である。
そもそも、能力者が現れるたびに驚いていたら、身が持たないというのが本音である。例え穿独が自分の能力を把握していたとしても、今のところ対立しているわけでもないし、それどころか礼をするとまで言っているのだ。学校であっても、虐殺されるようなことにはないだろう。
必ずしも戦闘系の能力と決まったわけではないし、戦闘が嫌い、暴力が嫌いと言う可能性もあるだろう。美鈴の戦闘や詩織の性格を見ているせいか、なぜかそっち方面ばかり考えてしまう。
身の危険を考えていると思えば、少しは聞こえがいいだろう。
其れよりもレイが気になったのは、『どれぐらいの頻度で能力者はいるのか』、という事だった。何人に一人と言う割合までは分からないにせよ、こうも頻繁に能力者がいたら命がいくつあっても足りない。というよりも、そんなに多くいたら日本が滅ぶだろう。
その問いに対し、詩織の回答は、『何人いるかは分からない』という事だった。能力者の見分け方を知っている詩織だが、見分ける際の目印となる物は、必ずしも目視できるわけではなく、本人しか知らないような細かな目印の場合もあるらしい。
その中でも、目視で判断できる能力者の数は? とレイが疑問をぶつけたところ、ウィンク付きで『ひ み つ』と返された。ウザイのはこの際スルーしよう。
とは言っても、現状世界が滅んでいるわけでもなければ、たびたび犯罪が起こっているわけではない。ライトノベルや漫画だとよく犯罪が起こるもんだが、そういう話は聞かないのだから意外にそうでも無いのだろう。
だが赤髪の少年の例もある。能力者の戦闘が、少なくとも起こるのだとすれば、美鈴と少年の戦闘のように、何かしら大音や戦闘跡があってもよさそうなものだが……とは言っても、詩織に聞くのは既に論外であるし、自分で考えたところで何も分からないというのは、もはや明白だ。
一体何個の疑問が出てくればいいのかと、少し頭が痛くなりそうなレイである。
その後、話は終わったとばかりに二人は歩みを再開した。もちろん、詩織は両手いっぱいに食材を持ちながら、である。
しかし、神社に近づいてくるころには、詩織は全てを食べきり満足そうな表情だ。まるで掃除機とばかりに食べ物が口に吸い込まれていく様は、圧巻としか言いようがない。
やがて数分後、二人は神社に到着した。
「うわぁ……人いっぱいだねぇ。こりゃ、見つけるのは一苦労掛かりそうだよ。人は群れるものっていうけど、ここまでくると絶景だね。飽和状態かな?」
たはは……と、乾いた笑みを浮かべるのは、人の多さに唖然とする詩織の言だ。やはり祭りという事もあってか、神社にいる人の数は道中とは比べ物にならないほどだった。飽和状態────とまではいかないものの、それに近いほどの密度である。そんな中で一人の人間を発見するのは、それなりに困難な事だろう。
「……なんで格好つけて飽和状態なんて言ってるんだよ。単純に人が多いとか、満員とかでいいだろ。というか、針城は神社のどこらへんで待っているんだ? 集合場所ぐらいあるだろ?」
詩織の呟きに対し軽くツッコミを入れ、疑問を口にするレイ。その疑問はもっともだ。これだけ人が多いのは予想できたことであるし、さすがに神社と言うアバウトな集合場所なわけない、そう思っての言葉であったが……
「……」
「おいまさか……」
「……………」
「まじデェ?」
「…………………ふっ」
「忘れたんだな」
「御免なさい……」
見事な謝罪を決める青色の少女。
しっかりしているのか分からない、と言うのは最早言うまでもないだろう。人一人の人生がかかっていると言うのに、ここまで天然を発揮する二人に対し、レイまでも毒気を抜かれてしまいそうである。その可能性を考えた上でこう言う行動をしているのだとしたら、それはまた冷酷なことだ。
ともかく、どうにかして合流しなければいけない。
だが現状、人が多すぎて近場しか見えない状態である。いくら美鈴の髪がわかりやすい金髪だからと言って、こうも視界が悪くてはどうにもならない。闇雲に探すのは論外だ。
さて、どうしたものかとレイが思っていると、詩織がポッケをガサゴソと探り、一つの機械を取り出した。薄い長方形で、ポッケにちょうど入り、現代人には必須のアイテム─────
「携帯あんじゃねえか!」
「スマフォよ」
「どっち、でーもいいッ!」
これあれば全部解決したよ!? と言う表情で、思わずリズムに乗ってツッコミを入れるレイ。連絡手段があるなら早めに使って欲しいものである。これがあれば悩むことなどなかったし、必死に悩んでいたレイがバカのようである。
詩織は、すぐにスマフォを起動させると、テキパキと操作を開始し、耳元に当て、通話を開始した。
「もしもし? ああうん。私私。今どこにいる? ……ん? なんだって? ごめん、もう一回言って? え!? なに!? 大きな声で!」
が、どうやら美鈴は声の届きにくいところ、もしくは人が多いところにいるようで、なかなか声が届かない。イラつくように詩織が声を荒げるも、やはり届きにくい様子。
それから数十秒が立ち、ようやく伝わったようで、少しキレ気味に電話を切る詩織。その表情を見れば、人の多さに参る感情と、早く伝わってくれと言う、イライラの感情が詰まっているように見える。
本気で怒っているわけではないだろうが、今までの会話を見ると、レイに八つ当たりをする可能性が高い。さすがに、勝手にキレられて勝手に八つ当たりされるのはごめんである。詩織が何か言い出す前にどうにかしようと、若干急ぎ足でレイは美鈴の居場所を訪ねた。
「そ、それで? 針城はどこにいるんだ?」
「ああ、それなんだけどね、説明するのはめんどくさいので前方斜め上をご覧ください」
そのイライラしているような投げやりな詩織の口調に、やっぱ若干怒ってる! とばかりに内心涙目になるレイ。詩織の声は若干無機質で、明らかに「こっちはめんどくせえんだよ!」と言う感情が込められている。
その上、詩織の投げやりな言葉ははっきり言って意味不明である。詩織の言葉に、レイがハテナマークを浮かべていると、若干怒りが収まってきたように、少しづつ表情が元に戻りつつある詩織が、「いいから」と、レイを急かす。
未だ意図は不明だが、そこまで言うのなら何かあるのだろう。やれやれと思いつつも、レイは言われた通りに斜め上を見ると───
(……はっ? あれは……針城の『黒い空間』?)
そう、上空には、前日見た美鈴の黒い空間が公然と存在していたのだ。その規模は前回より少し小さいぐらいで、人より少し小さい程度だ。黒い円型で、空中に存在していると言うよりは、空中にべっとりと張り付いているかのようで、距離感がつかめない。
と言うのも、その空間は、まるで光が存在しないかのような、漆黒という言葉がぴったりだったからだ。近づけば大きく見え、離れれば小さく見えるものの、光が見えないせいで、どれぐらい空間が近くにあるのか分かりづらいのだ。
なぜ空に黒い空間が────いや、美鈴が黒い空間を出しているのか、レイには理解不能だが、あれが目印とでもいうのだろうか。
レイが黒い空間を見つめ、唖然としていると、詩織がいつの間にか背後に回り、レイを急かすように背中を押した。
ドンッ
「おおっとっ」
「ほら、あれが目印だよ。分かりずらいかもしれないけど」
レイの背後に詩織がいるため表情が見えないが、やはりあれは目印らしい。それを聞いてレイが思ったのは、こんな簡単に能力を見せびらかすような真似をしていいのか、という事だ。一般人があふれかえるこの場所で、いきなり黒い何かが現れたら普通は混乱するし、騒ぎにもなりそうなもんだが……
「お、おい。こんなところで能力を使っていいのか!?」
「……ああ、そういう事ね。大丈夫よ、一般人に能力は見えないから」
割とあたふたするレイに対し、冷静に対応する詩織。どうやら、能力とは一般人(能力が使えない人間)には見えないらしい。触れたり、影響を受けたりするものの、それを認識することは不可能だという。
例えば、炎を操る能力者が居たとする。その能力者が炎をいくら出しても、一般人は炎を視認できない。しかし、視認できなくても、炎に触れれば燃えるし、熱いと感じるのだ。見えないだけで、影響は受けるのだという。
能力者から見れば普通に燃えているのだが、一般人から見れば、今まで平然としていた一般人が突然苦しみだしたと思えば、体中に火傷跡が出来ていくのである。
要するに、一般人には過程を無視して結果だけが見えるのだ。炎で体が燃えているという過程を認識できず、火傷と言う結果だけを認識するという、一般人から考えれば恐怖そのものである。
美鈴が今やっていることもそれの応用で、こうして能力者だけに意図を伝えることもできる。つまりは、空中の空間はレイと詩織の二人だけにしか見えない、絶好の合図と言う訳だ。
言いたいことは言ったとばかりに、説明が終わった途端、空間の方へと歩き出す詩織。レイもそれについて行こうとして─────途中、デジャブを感じた。
(あれ? これ、『氷と炎─────)
「おーい! 美鈴ぅー!」
「あ、詩織ちゃん! って、ちょ、まって? ちょっとま頭が割れちゃうっ!」
その大声で、レイの思考は中断させられた。
まあいいやと頭を振り、視線を二人に向けると、そこには思わずため息をつきたくなるような光景が広がっている。
感動の再開! とでも言うかのように詩織は美鈴へと近づいたのだが、その途端詩織がアイアンクローを決めたのだ。どうやら先ほどの怒りや、レイへの情報伝達不足のことを怒っているらしく、顔に青筋を浮かべている。
それにしても、見事なアイアンクローである。まるでアニメのように、アイアンクローを決められている美鈴の体が浮いているのだ。これほどの握力があれば能力は必要なくないか? と、割とレイは本気で思ってしまった。
が、さすがに詩織も疲れてきたのか、ようやくアイアンクローを解除すると美鈴をゆっくり地面に下した。
「なんでいきなりアイアンクローなんだ?」
「八つ当たり」
「ひどいよ詩織ちゃん!」
投げやりな詩織の言葉に、涙目になりながら反論する美鈴。
やはりまだ怒りは残っていたようで、レイはこっちに矛先が向かなくてよかった、と、安堵するばかりである(空間はアイアンクローの途中で消えた)。
「うぅ~。顔が痛い。すごく痛い」
「まあ確かにやりすぎたけど、自業自得よ。しっかり伝えてなかった美鈴が悪いんだから」
「反論できないのが悔しぃ……」
顔の痛みを主張するかのように、頬を手で覆うような恰好をする美鈴。
今の美鈴の恰好は、先日のようなワンピースに麦藁でも、侍衣装でもなく、詩織と同じく浴衣である。
赤色と言うよりは、桃色に近い鮮やかな浴衣に、金髪の髪をツインテールで結んでいる。よくよく見てみれば、前日戦闘で使われた鞘を腰に付けている。
美鈴の刀は黒い空間によるものなので、刀身要らずなのだろう。鞘なんか持っていたら怪しまれるのはともかく、疑問に思われそうであるにも関わらず腰に付けているのは、この場所が祭り会場であるからだろう。他の人から見れば、その鞘は何かの屋台の景品に見えるはずだ。
八つ当たりに満足したのか、「ふぅ」と小さい息をつく詩織。動いたことで少し肩回りが乱れたのか、彼女は首を回しながら調整した。
さて、ようやく迷子云々の問題が解決し、こうして集合したわけだ。これからどうするのか美鈴に尋ねたところ、やはり美鈴の家に行くらしい。美鈴の家はそれなりに大きいそうで、彼女の部屋には能力についての資料などが眠っているらしく、レイの能力も判明するかもしれない、と言う話だった。
ようやく移動するか、と言う状況になるが、そこで────風が吹いた。
『────おめえら、間抜けか?』
「!?」「えっ!?」「……っ」
突然、『声』が響いた。否、響くと言う表現は正しくないだろう。正確には、脳内に直接声が届いたという表現が正しい。エコーがかかったかのように声が反響し、脳内を駆け巡っているかのようだった。低く、少し不快感を覚えるような声だ。直感的に気持ち悪いと思う───人を逆撫でするかのような声色である。
周りからガヤガヤと声が聞こえる中、なぜかはっきりと聞こえる声に、三人は一斉に身構える。
美鈴は鞘を右手に持つと、左手で小さく空間を展開した。前日の黒い刀を構築するためだろう。
詩織は浴衣の袖を捲ると、今まで隠れていた腕がむき出しとなる。そして、その腕にぐるぐると巻き付いている細いもの──────糸を少し解くと、腕ではなく手に巻き付けた。
いつでも使える状態という事である。鋼線、と言うのだろうか。アニメで登場するもんだと思っていたが、詩織はその使い手であるらしい。
一方、レイは武器など何もないので、手で手刀を作り、首の前あたりで構えるだけである。二人に比べ大分無様な姿だ。明らかに間抜けとわかるような構え、むしろ構えとも呼べないだろう。
それぞれ声に対して反応を表す中、声の主はレイたちを見えているのだろう。不快な感情を隠すことなく『フンッ』と言う声がレイの頭に響いた。
『んなところで『能力』使いやがってぇ。殺してくれと言っているようなもんじゃねえか。か? かぁ? それともなんだ? 自殺志願者か?』
ねっとりと、心を蝕むような『声』に、レイは思わずグゥ……と言う声を漏らしてしまう。脳内に直接響くと言うのも恐怖であるが、それ以上に声が気持ち悪い。嘔吐感を覚えるような、声だ。
十中八九敵だろう。今まであった能力者とは一線を画す、挑発的な声。赤髪の少年のような、自分の能力に自信があるものが放つ声だ。
「気をつけてねー。加古川くん。敵だ。鉄骨が飛んできても対応できるようにしてね?」
その声に対し、詩織はブラックジョークを吐きながらその青い瞳を細める。
やはり敵だったらしい。詩織の言葉だけでなく、美鈴がさらに警戒を強くしたことからそれが理解できる。
その声に、何が楽しいのか、いきなり少年は笑い出した。
『クヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!! そう警戒しなくてもいいんだゼェ!? 敵かどうかなんて関係ねぇっ! お前らは俺に叩き潰されるんだからなぁ! ……っと、これは『アイツサマ』が嫌いなんだったな。イケネエイケネエ俺としたこと……がなぁ!!』
先ほどの低い『声』とは打って変わって、今度は甲高い声で笑い出す。気持ち悪い。本能的にそう思うような声だ。それが周りに聞こえていないと言う事実が、レイの恐怖をさらに加速させる。
それは思わず、先ほどまで強気だった詩織が鈍い声を漏らして怯むほどだ。そもそも『声』の話し方は常軌を逸している。
その中でも、美鈴だけは動揺していなかった。ただただ静止したまま、ひっそりと目を閉じているだけだ。声に反応を表さないのは、その強靭な精神力からか、それとも聞き流しているのか。ただ一つはっきりしているのは、この状況で美鈴だけが冷静だと言うこと。
「あなたは───お前は一体何者? なんで私たちを狙うのか分からないんだけど?」
『イヒヒヒ! なになになに言ってんの? 人を殺すのに意味があるとでも? ……しいて言うなら、お前の能力に興味を持ったからだ。なあ? 『空間』?」
「薄っぺらい狂気ね……」
美鈴が当然の疑問を問うが、それに対し帰ってくるのはありふれた理由。どうやら相手は美鈴の能力を知り、それが目当てらしい。戦闘狂──────と言うのだろうか。レイの周りにそんな人間はいるはずもなく、初めて会うタイプの人間だ。
「でも、私たちに戦う意志はない。穏便に済ませない? 怪我はあまりしたくないから」
『────ほぉ? つまり、お前は俺に勝てる程実力に自信があるという事だな? おナサらおもしろれぇッ!』
「狂ってる……」
『声』に対し、美鈴の言葉は悪手だったようで、ますます『声』は戦闘欲を強めたようだった。詩織が続いて感情のまま吐き捨てるも、『声』はどこ吹く風。感情の動きは見えない。見えないという表現はおかしいが、声色から察する言葉出来る。
『だがなあ、俺は『空間』以外に興味はねえ。しかし俺のことを知られちゃあ逃げすわけにもいかねえ。そこでだ、お前ら二人には特別な会場を用意した』
「会場……?」
『声』の唐突な言葉に、レイは疑問の声を上げる。文字通り美鈴にしか興味はないようで─────正確には、美鈴の能力意外には興味がないようで、『声』がレイに反応することはなかった。
だがその直後、声とは別に、まるで指を鳴らしたような音が響いた。
パチンッ
乾いた音がその場に響き、レイの鼓膜を震わせる。なぜ指を鳴らしたのか、その意図がレイには理解できなかった。会場と言う言葉を発して、何か場に変化が起きた訳でもない。まさか、能力で変化させるのか? と、美鈴を除く二人が警戒した瞬間、ゴウッ! と、暴風が吹いた。
「グッ……うぁ……!」
「!? つよっ……」
あまりにも強く、風の暴力という表現が合うだろう。その証拠にレイだけでなく、詩織さえも鈍い声を漏らす。腕で顔を覆うようにするも、無意味とばかりに弾かれてしまう。風が吹いているのはレイと詩織の直線状であり、その上にいる一般人なども影響を受けているらしく、突然の突風に困惑している。だが、彼らはそれが能力者のせいだとは思わないだろう。
不思議なことに美鈴には影響がないらしく、突然の風に晒される二人に対し、目を見開いて驚愕している。おそらく、それは言葉通り二人だけを狙った風なのだろう。
そうしている間にも風は強くなっていく。とうとう目を開けられなくなり、体が倒れそうになる。テレビで、暴風を発生させる装置に立ち向かう芸人を見たことがあるが、今レイが受けている風は、下手したらそれ以上である。
だが、体が倒れそうになる瞬間、それよりも早く……体が浮いた。
あまりの暴風に身体が耐えられなくなり、体がふわっという浮遊感に襲われる。一度体が浮けば、もう手遅れだ。空中に舞うレイの体に暴風が容赦なく叩きつけられ、のけぞりながらどこかに吹き飛ばされ始める。神社の後ろ、気が生い茂る森の方へと。
吹き飛ばされる中、レイの瞳が少しだけ世界を映した。体がのけぞった影響により、一瞬だけ目を開けることが出来たのだ。一瞬視界に見えた光景は、レイの後を追い吹き飛ばされる詩織と、それに対し手を伸ばそうとして、あと一歩届かなかった美鈴の姿。
──────神社のてっぺんで、狂気的な笑みを浮かべる、一人の男の姿だった。
七月二十三日:詩織の眼の描写を訂正しました(致命的)




