ドラゴンvs女子高生
「きゃああああああ!!」
ドガドガドガ!!
「ゴオオオオオオオ!!」
バッサ、バッサ、バッサ!!
「ねえ、梓ちゃん、ボク達怪獣映画のキャストに選ばれるかな!?」
「そんなこと、言ってないで走れ~~!!」
ダダダダダダダダダダッシュ!!
ドガッ! ドガドガドガ!!
「ゴオオオオオオオ!!」
全力で走るボク達の後ろで、ドラゴンが舞い上がる!! そして!
ドビュン!!
一瞬前に、ボク達がいた場所に突っ込んでくる!!
ドゴオン!!
すでに陥没していた地面にドラゴンが頭から突っ込み、その頭が完全に埋まってしまう!!
「グロロロロロッ!!」
……………ガバッ!!
頭が地面にめり込んだドラゴンはかなり必死の形相で地面から頭を抜く――!!
ドガドガドガ!!
その間にボクと梓ちゃんはかなりの距離を稼ぐ――
「早く、あの扉に戻るわよ! 真琴!!」
「ちょっと待って、梓ちゃん。おかしいと思わないの?」
日本とは違う所々に草が生えているだけの岩だらけの地面に、いくつものクレーターを作りながら疾走するボクと梓ちゃん。
って、いうか、なんで走るだけでドカドカドカッと地面がえぐれていくのだろうか?
「そうだね、いつもツッコミで蹴り技を使う梓ちゃんならキック力がムエタイ選手並ありそうだからこうなるのも不思議じゃないかもしれない。だけど、ボクはそうじゃないはずなんだけどなぁ……」
「何を呑気なことを言っているの!! 早く逃げないと!!」
「ちょっと待って――対処できるかもしれない――」
「はぁ!? こんな時にまでボケかましてるんじゃないわよ!!」
そう言って梓ちゃんはボクの手を掴んで思いっきり引っ張る――うん、ごく普通の女子高生の力だ……やっぱり梓ちゃんは蹴り技に優れた人間なんだろう!!
「早く、逃げましょう、あのドラゴンから!!」
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
え? 状況が理解いない? なんでボク達がドラゴンに追いかけられているかって?
それを話すと長くなる。
まぁ、簡単に言うと、ドラゴンの動画をタッチしたらそれが扉と一体化して、ボク達はそこに入ることができた――どうやらあの鍵穴から出た光は、沢山浮かんだ動画の一つをタッチするとその動画の異世界への扉と変化すると言う変化形次元の扉だったらしい――
もしかしたら異世界に召喚されたクラスメイト達はこの異世界にいるんじゃないかと思って探索することにしたんだけど……動画に映っていたドラゴンに速攻で見つかって、追いかけられているという状況になってしまったのである!!
ちなみに、この異世界へ入ってきたときに出来た扉はまだボク達が異世界へ来た場所に鍵穴だけ存在している。梓ちゃんの鍵が抜けた瞬間、光が消えて鍵穴になってしまった――多分だけど……梓ちゃんの持っている鍵をもう一度押し込めば日本へ帰れると思うんだけど……
そういえば、扉が消える前に向こうの世界――日本から何かが飛び出してきたような気がしたんだけど、それを確かめる前にドラゴンに見つかって逃げる羽目になってしまった――梓ちゃんもそれには気がついているのかな?
もし、本当にボク達以外の何かがこの異世界に来ていて、ボクと梓ちゃんが日本に逃げ帰ったら、飛び出してきたそれは、この世界に置き去りということになってしまう――
「だから、日本に帰る前に何ができたのかを確かめないと――」
「そのためにはまず、あのドラゴンをどうにかしないといけないでしょう!!」
梓ちゃんの指差す先に、あのドラゴンが再び舞い上がるのが見える――
「まったく、ドラゴンって言ったらファンタジー系のアニメやゲームで出てくるものは人間の言葉をしゃべるやつもいるのに、本物が人間を襲うただの怪物なのね……」
「言葉をしゃべるドラゴンって……『さあ、願い事を言え。どんな願い事でも叶えてやろう』ってやつだね」
「それは、宇宙全体に散らばる七つの星を集めないと出てこない最強のドラゴンでしょう!? あんな風にポッと出のドラゴンとはレベルが違うわよ!!」
あ、梓ちゃんもスタードラゴンファンタジーは見てたんだ。大人気だったもんね、あのアニメ!
「じゃあ、アニメと同じようにドラゴンに願い事を言ったらかなうかな?」
「そんなわけないでしょう!!」
「そうとは言い切れないでしょ!! ドラゴンよ! 梓ちゃんのパンティーをおくれ!!」
「いい加減にしろ!!」
バキャア!!
今度ばかりは流石の梓ちゃんもいつもの蹴りで突っ込みをいれてきた!
「冗談だよ! ドラゴンよ! お前を倒すチート能力をボクにくれ!!」
「そんなことでチート能力をもらえたら誰も苦労しないわよ!!」
そんなコントをやってる間にも、ドラゴンは上空から滑空して来ていてボク達に迫ってくる!!
「こんなことやってないで、早く逃げるわよ、真琴!!」
「だからちょっと待ってって! 少し試したことがあるんだよ!!」
慌てる梓ちゃんを制して、ボクはそこら辺にあった大きな岩に手をかける――
「………どっせい!!」
「えっ!? ……………ええっ!!」
梓ちゃんが驚いて声を上げる――そりゃそうだろう、だって僕は自分の身長以上もある巨大な岩を持ち上げているのだから!!
「そりゃあ!!」
ブオン!!
ビュン……………ドガン!!
ボクが投げた巨大な岩は、上空にいるドラゴンの顔面にまっすぐ飛んでいってブチ当たる!!
「グオオオ!!」
ドラゴンが苦しそうな声を上げる! 効いている!!
「よし、会心の一撃!!」
「ど、どうなってるの!?」
「これが、ドラゴンからもらったチート能力ってやつだよ!!」
「説明になってない!!」
「ドンドン岩を投げていくよ!!」
あまりダメージがないのか、上空で体勢を立て直そうとするドラゴンに対し、ボクは再び大きな岩を持ち上げる!!
「そりゃ、そりゃ、そりゃあ!!」
岩はどんどんどんどん飛んで行き、ドラゴンの顔面にヒットする!!
「グオ、グオ!! グオオッ!!」
苦悶の声を上げるドラゴン――
「梓ちゃん、ボケっとしてないで加勢してよ!!」
「え!?」
「まずはドラゴンにチート能力がほしいって願うんだ!!」
ボクに岩を当てられて苦悶しているドラゴンを見て梓ちゃんは、
「本当にあんなドラゴンが願いを叶えてくれるの? それじゃあ、チート能力をくれる? ドラゴン!」
あ、ほんの少しだけど本気にしているね。
「よし、それじゃあそこら辺にある岩をもってみて!」
「じゃ、じゃあこれで……」
ボクがドラゴンにぶつけているような大きな岩じゃないけれど、ボーリング玉ぐらいはある岩だ。
「――!? なにこれ、軽い――」
「そうだろう! それがチートってやつだよ!」
そう言ってボクは、巨大な岩を持ち上げる――
「梓ちゃんもその気になれば、これくらいの岩を持てるよ!!」
「本当にこれがチートってやつなのかな」
そう言って梓ちゃんも、持っていた岩を投げてドラゴンにぶつける!!
「ゴオオオオオオオ!!」
ドラゴンが苦し紛れに咆哮を上げる――
「もう少しで……」
「待って、あれを見て――!!」
梓ちゃんはドラゴンの後方を指差す!!
「――あれって――」
「まさか、ドラゴンの増援!?」
バッサ、バッサと遠くの空より何匹ものドラゴンの飛影が、こちらに迫ってくるのが見えている――
「あんな数、相手にしていられないよ!! チートがあるかもしれないけれど、それは逃げるために使うべきよ」
「そうだね――」
「ええっと、鍵穴の場所は――」
「ここから、太陽を背後にして5キロほど行ったところだ――」
不意に、ボク達以外の可愛らしい声が聞こえてきた――
「……!? ダレっ!?」
いつからそこにいたんだろうか?
そこには、小学生くらいの女の子が立っていた――
ただ、何かおかしい。体中至るところに機械的なギミックをその女の子はつけている――!
「あ、あなたは?」
「超常自衛隊所属のドローン・ガイノイド、稲葉りく――あなた達のガードのために派遣されてきたものよ」