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クラス召喚! 取り残されし者達

 ボクは大友真琴!! 風巻高校1年5組の応援隊長!!

 皆に元気を与える大役を担っているボクだけど、昨日は風邪をひいてしまい、無念の休みとなってしまった――

 母親から、

「バカは風邪ひかないって言うのは迷信だったのね」

 と言われれてしまった……心外だな!!

 

 新しい学校、新しいクラスになってまだ1ヶ月……、たった一日の休みだったけれど、クラスメイト達に顔を忘れられていないかと不安になってしまう――

「こういう時は、笑顔で教室に入っていって皆にボクの健在ぶりをアピールしなければいけないよね!! うん、そうしよう!!」

 そう言ってボクは学校に全力疾走していくことにする!!

「待ってて! ボクのクラスメイト達!! 今からボクの完全回復ぶりをその目に焼き付けてあげるから!! 応援隊長大友真琴、いざ参るぅ!!」


 タタタタタタタタタタッ!! ピタッ!


「あれ?」

 ところが、全力疾走で学校に着いたボクはとある違和感に立ち止まってしまう――

「あれって何……? 装甲車? それに……自衛隊?」

 学校の敷地内――先生用の駐車場があるところに、何台かの装甲車が停まっている――それと、どう見ても学校関係者では無い軍服姿の自衛隊員らしき人達がウロウロしている。


「……? 何かあったのかな?」


 他のクラスや上級生の生徒達、中には一部の先生達がそんな自衛隊員らしき人達を遠巻きに見ている――


「本当に何かあったのかな? まさか……校庭で不発弾が見つかったとか……!?」


 とりあえず、学校で自衛隊とかが動く事件などと言う出来事はそれくらいしか思い浮かばない。

 テロリストとかが学校に侵入したとかなら、もっと皆が慌てているはず……


「もしかしたらと思うけれど、戦車とか……あるかも?」

 あるとしたら、見てみたい……きょろきょろしながら校内を進む。

 でも、残念ながら戦車は見つからなかった。

 そして、ボクが教室の前に着いた時、1年5組の教室のドアに、何かの文字が書かれたテープが貼られていた。


「ほあっ!?」


 ―――――――KEEP OUT――――――――


「って、どういう意味だったっけ――?」

 うん、ボクは中学の時から英語はあまり得意じゃないんだから、意味が解らなくても仕方がない!

「立入禁止って意味よ」

 教室の入り口にKEEP OUTの文字が書かれた黄色いテープが貼ってあるのを見て立ち止まったいたボクの後ろから声がかかる。

「大友……そう言えば、高橋先生ともども昨日は休んでいたっけ」

「あ、梓ちゃん! ボクの事は真琴って呼び捨てにしてくれていいって、自己紹介の時に言ったじゃん!」

 ボクに声をかけてきたのは同じクラスの委員長、立花梓ちゃん。その隣には、クラス担任の高橋千歳先生が、落ち込んだ青い顔で立っていた。

「どうしたの? 高橋先生!? 元気ないみたいだけど?」

 ボクは高橋先生の顔を覗き込む――どうしたんだろう? 高橋先生も……そして梓ちゃんも、なんか知らないけどかなり深刻そうな顔をしている――

「それになんで、教室が立入禁止になっちゃってるわけ? これじゃ授業出来ないじゃん?」

 二人は、ボクを見つめる――

「大友……真琴、あなた……昨日の夜のニュース見てた?」

「ニュース? 宮城コージのミヤギヤなら見てたけど?」

 ミヤギヤじゃ、たいして面白ニュースもやっていなかった。あ、でもどっかの会社の女社長ととある国の王子様のラブロマンスは面白かったかな?

「違う違う! ミヤギヤじゃなくてニュース兄さんの方。夜の23時からやってる方。それか22時からやってるニュースエアラインの方でもいいけど……」

「あ、ごめんね……ボク、その時間帯ハードディスクに録画していたタンジュンキッドを全話見てたから!!」


「「…………」」


 梓ちゃんと高橋先生はあきれたようにボクを見る――なんでだろう? 昨日の夜のその時間帯はやっとのことで熱も下がりようやく頭も冴えてきたところだったんだよ? タンジュンキッドを最初から見直そうって気にもなるのは当然じゃないか?


「それじゃ、あなた昨日何があったか全く知らないわけね――」

「……何かあったの?」


 梓ちゃんの表情から何かとんでもないことがあったんじゃないかと思ってしまう。

「本当に、ニュースになるような出来事があったっていうの? まさかクラスメイトの誰かが逮捕されてしまったとか!? そういえばまだ、梓ちゃん以外のクラスメイトが登校して来ていないみたいだけど――?」


「消えちゃったのよ……私達以外のクラスメイト、全員がね……」

「は……え……?」

 ボクは梓ちゃんが何を言ったのか一瞬理解できなかった。


「消えちゃった……? 消えちゃったって、誰が?」

「言ったでしょ、私達以外のクラスメイト、全員が……」


 そう言って、梓ちゃんは昨日クラスで何があったのかを話し始めた……



   ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



 真琴も知ってると思うけど私、立花梓はクラスの学級委員長に選ばれていた――

 まあ、立候補じゃなくて選挙によって選ばれた不本意なものだけどね。


 で、昨日は高橋先生が妹さんの結婚式に出席するためとか言う理由で休暇を取っていたため、午後一の授業は自習になっていた――そして出されていたプリントを私が職員室まで持っていくことになったの――


「はいこれ、委員長よろしく!」

「あずにゃん委員長、よろしくにゃ」

 近くの席にいた友人がそう言って私を送りだした。


「この教室は職員室から一番遠いからなぁ、わざわざ持って行ってくれる奴がいてくれて助かるぜ」

「できれば代わってあげたいところだけど、これは委員長に選ばれた君の仕事だからね」

 後ろでごちゃごちゃ言っている男子達は無視して、私は教室を出だ――全く、そう言っているのであれば代わってほしい。でも、代わってくれる気がないから言っていたんだあの男子達は……

 まだ授業終了のチャイムはなっていなかったので廊下には誰もいなかった――隣のクラスは数学の授業中か。うちのクラスでも数学教えている担任教師が教鞭を振っていた――


「なんでうちのクラスは職員室から一番遠いんだろうね……?」

 そんなたわいのないことを考えながら、廊下を歩いていた私の背後で、突然光が爆発した――!!


「え……?」


 コォォォォォォォォォォォォ……………


 その時私が最初に見たのは、私の足元から伸びた長い影だった――ものすごく長く伸び、階段のそばにある突き当たりの壁に私の影がユラユラとゆらめいているように見えた――それは光が揺らいでいるということでもある――その光とともに、地鳴りのような音が教室から聞こえていた――


「な、何!?」


 私は慌てて振り返った――私のでてきた教室が、クラスメイト達がまた中にいるその教室が、ものすごく、ありえないほど力強く光り輝いていた――


「何があったの……?」


 その時私は、私が知る知識の中から教室が光り輝く原因を思い浮かべていた――そして3秒後位に、全く心当たりがないことに気づいた――

 私は手に持っていたプリントを放りだして、教室に駆け戻った――


「何じゃこれ!?」

「まさか、異世界召喚か!」

「え? ええええ? つまり俺たち主人公!?」

「呑気なこと言ってる場合!?」

「でもこれ、魔法陣だよな?」

「床が消える!? 私たちも消える!?」

「うわああああああああああ!!」


 教室からクラスメイト達の叫び声……かどうかわからないモノが聞こえてきた。なんか、喜んでいる様な声もあったけど――だんだんとその声が小さくなっていくような気がして――


「ちょっと、何かあったの!? ねぇ、みんな!?」


 私はしまっている教室のドアを開けようとした――だけど、その時は内側から物凄い力で抑えられていているようで開けられなかった――


 ガ、ガラッ……!!


「よしやっと開いた――!!」

 何分かのドアとの格闘の後、やっと教室の中に入ることになってきたけれどその時にはもう教室の輝きはなくなっていた――

 そして――


「え…………え――――――――えええっ!?」

 その時に教室には、もう誰もいなかった―――――――――



   ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「その後、光と音に傷がついた他のクラスの生徒や先生達が集まってきたんだけど、結局クラスの皆がどこに消えたのかわからなかったわ」

 梓ちゃんは、神妙な顔つきでうつむく――

「わ、私も妹の結婚式の二次会でこのことを知り急いで学校にきたのですが、消えた生徒達の情報は今のところ何ひとつないのです――今、私のクラス――1年5組には立花梓さん、大友真琴さん……あなた達二人しかこのいないのです――」

 高橋先生の目から大粒の涙がどんどんどんどん溢れ出きた。

 そして、ボクの口から出たのは――


「マジ!? じゃあ、クラスメイト達は異世界に行って女神かなんかからチート能力をもらって大活躍してるってわけ!? 失敗した~~!! 風邪なんかで……39度の熱なんかで休むんじゃなかった!!」


「この一大事に何言ってのよ!! あんたはっ!!」


 ドゴッ!!


 梓ちゃんの回し蹴りがボクにクリーンヒットした―――――

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