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フクオカ  作者: 夜紫希
第一章
9/32

脅威の片鱗

現時間は十九時二十五分。暗い道には竹志と優香、そして三人の軍学生以外は誰もいない。誰もいないのは当然。もうすぐ夜戦開始時刻が近づいているのに外にいる方がおかしい。

駅まであと少しのところで第壱高校の軍学生に目を付けられてしまった。三十分が最終列車なのに、タイミングが最悪だった。

軍学生たちが手を出そうとした瞬間、竹志が一歩前に出てきた。


「あぁ? 何だよ?」


反抗的な態度を取られたせいか苛立ちを露わにしながら軍学生は手の関節をパキパキと鳴らし、竹志を見る。

優香は図書館で言われた『軍学生卒業生は十分に強いんだよ柳。制服が無くても、戦える』という言葉を思い出す。もし竹志の言うことが本当なら―――この後の展開に、優香は最悪な状況を容易に想像してしまった。


「選ぶ相手を間違えたな。俺の後ろには大切な人がいるんだ。やるなら手加減はしないぞ」


キッと目を細めて軍学生を睨んだ。真剣に怒った表情をする竹志を初めて見た優香は息を飲むが、軍学生たちは違った。


「「「アッハハハハハ!!」」」


腹を抱えて笑った。それは完全に竹志をバカにして舐めていた。


「嘘だろおい! 俺たち軍学生に勝てると思ってんのかよ!」

「馬鹿だ! 大馬鹿がいるぞ!」


軍学生の下劣な態度に竹志は眉一つ動かさない。ただ黙って睨み続けた。

優香は何もできず、竹志が傷つかないことだけを祈る。竹志が蔑まれたことに怒りを爆発させてしまいそうだが、自分の勝手で状況を悪化させるわけにはいかない。湧き上がる感情をグッと抑えた。

優香はポケットに入れた携帯電話を取り出して、()()()()()()()()()()に助けを求めようとするが、ここで不審な行動を見られるわけにはいかない。


「…チッ、何だよその目はよぉ」


ずっと睨み続けた竹志が気に食わなかったのか、軍学生の一人が舌打ちをした。他の二人も笑うのをやめて、一緒にイライラし始めた。

辺りに助けを求めようと優香は周りを見渡すが、やはり誰もいない。今にも竹志に殴りかかりそうになってる軍学生たちに焦るばかりだった。


「お前たちは隙が多過ぎる」


その時、竹志が話しながら動き始めた。

体を前に傾けて足にグッと力を入れて大きく踏み込み、走り出した。

突然の出来事に軍学生は呆気を取られ、対処に遅れる。


「「「なっ!?」」」


まさか逃げ出すとは彼らは思わなかったのだろう。

竹志の体は軍学生たちの間を走り抜け、そのまま駅のある方角へと駆け出している。


「に、逃げやがった!?」

「お、追え! 国に知られたら計画がパーだ!」

「おいおいおい! 失敗したら先輩に殺されちまうぞ!?」


軍学生が焦り出したと同時に、竹志はある2つの事を確信した。

まず一つは、やはり第弐高校が違法夜戦を国に報告することを恐れていること。このことは会議をした時に予想されていたことだ。もし第弐高校がプライドや尊厳も名誉も捨てて、泣きながら第壱高校の悪事を暴かれてしませば『悪事を働いた高校』として名を知れ渡らされ、第弐高校は『負け続けた高校』と、両高校共倒れになってしまう結果になる。

そうならないように第壱高校は慎重に物事を進め、強者命令を利用しながら上手く事を動かした。一つの失敗が計画の失敗に繋がってしまうから。

国に報告すれば戦うことはなくなるが、第弐高校のプライドが許さないだろう。生徒会長の鹿野が強く望み、夜戦で決着を付けると生徒たちと約束している。

ならばここは定石通り逃げて事を大きくしない案にするのが一番だが…もう一つの確信と策があるので国に助けを求めることはパスする。


(反応速度と動きが素人だな。この軍学生は一年生に違いない。二年生じゃないなら―――余裕だな)


ニヤリっと竹志の頬が緩んだ。

逃げ出した竹志を追いかけようと軍学生は走り出す。その走りは人類が不可能とする速度だった。


「嘘っ!?」


優香の目の前でヒュンッと風を切る音と共に、軍学生の姿が突如消えた。信じられない現象に驚きの声を上げる。

否。彼らは消えたわけでない。速過ぎて消えたように見えたのだ。

彼らにとって音速を出すことは簡単なことだった。軍制服を着用した生徒たちだけ使える直線を高速で走り抜ける【瞬速(ダッシュ)】。第壱高校の軍学生は既に基本動作を完璧に会得していた。

第弐高校を潰すなら新一年生強化すれば差は開くことは明白。人数でこちらが有利ならさらに有利になるような簡単な条件を揃えればいい。

基本動作を習得した第壱高校の新一年生は他の新一年生から見れば強者にしか見えないだろう。真っ直ぐにしか走れない者が様々な動きができる者たちに対して勝てる見込みなど考える余地もない。


「そこまでだっ!」

「おっと。危ない危ない」


一瞬で竹志の横を追い抜き、前方の道を塞いだ。もちろん、竹志はぶつかる寸前のところで足を止めて後ろに軽く跳んで下がる。走ることをやめた竹志だが、軍学生たちは違和感を覚えた。

音速で横を通ったにも関わらず、竹志は風圧で飛ばされることなく平気な顔をしていた。普通ならありえないことだと分かっていたが、すぐに対処しなければならない焦りがその疑惑を頭の隅へと追い出してしまった。


「夜戦まで時間はあるぜ? まさかと思うが戦うわけ、ないよな?」


余裕を持っているような態度で軍学生に尋ねる。軍学生は話し合いをするまでもなく、答えは決まっていた。


「覚悟しろ…今からお前を徹底的に潰してやるからよ」

(しっかりと俺を警戒してくれたようだな…)


軍学生から先程のヘラヘラした様子は見られない。腐っても自分たちが戦士だということは理解しているようだ。

三人はゆっくりと歩いて間合いを調整し、いつでもマッハの速度で飛び込める準備をしていた。

竹志の前方の方向を塞ぐことに成功した安心感からか、軍学生の一人が竹志に提案を持ちかけた。


「情報を全部吐くなら二人とも見逃すけど。どうするよ彼氏さん?」

「馬鹿じゃなくても分かるだろ。自分がどんな状況に置かれているかどうかくらいさぁ」


軍学生は竹志を軽視していた。こちらの強さを安く見ていた敵に竹志は心の中で嘲笑い返した。

お気遣いどうも。じゃあ情報提供しますね。

…なーんて、言えるわけないだろ。こっちはビビッているわけじゃない。


―――勝利を確信してんだよ。ここで逃げたら損するだろ。


「もう一回言ってやるよ。『お前たちは隙が多過ぎる』。アンダァスタンド?」


背負っていたリュックを右手だけで持ち、左手でクイクイッと手招き挑発した。その行動に軍学生と優香は目を見開いて驚いていた。

軍制服を着ていない人間が軍学生に挑むなど、戦車に向かって裸で突撃するような無謀な行為だった。


(からってたリュックで何ができるとよ!?)


リュックの中に武器が入っているわけがない。教科書や筆記用具、大学で使うモノしか持っていないことを知っている優香は急いで携帯電話を開いた。

勝機などあるはずがない。

無理に決まっている。

痛い目に遭って負けてしまう。

だから助けを呼ばないといけない。しかし、携帯電話を持っていた手は止まっていた。


「…どうして、そんな風に立つとよ」


―――何で守るようにアタシの前に立っているの?


気が付けば竹志は優香の前に居た。

竹志は話しながら軍学生に勘付かれないように、優香の前までゆっくりと下がっていた。

軍学生たちは今になっても気付かない。竹志という存在にを釘付けになっているせいで。潰そうとすることに夢中で。

竹志は三人に囲まれた最悪の状況を打開するためにワザと逃げ出した。軍学生は見事に竹志の策に掛かり意識をこちらに向けさせた。

そして軍学生の三人は竹志を追い越して退路を塞いだ。それは同時に優香から軍学生を引き離す作戦でもあったのだ。

そして、竹志は気付かれないように少しずつ下がり優香を守れる位置に着いた。


「言っただろ。守るってよ」

「ッ…!」


背を向けたまま答える竹志に優香は息を飲み込んだ。


『守る。擦り傷一つ負わせない』


会議で言われたあの一言を思い出した。

しかし、軍学生たちの戦いによって起きた巻き込みから守る程度―――万が一の場合だけだと思っていた。

軍学生と戦ってまで守ってもらうとは思っていなかった。

しかし、その思っていなかったことが今、目の前で起きている。

首を横に振りながら優香は声を出す。


「お願い…やめて…!」

「大丈夫だ。すぐに終わる」


心の底にある願いは、叶えて貰えなかった。だが返ってきたモノがあった。

それは竹志が笑った顔だ。


「俺だって、華道や小笠原と同じくらい強いんだぜ?」


不安げな表情で体を震わせる優香を安心させようとするために送った言葉だった。

人の心情が少し分かる程度の竹志だが、人を励ましたり慰めたりするのは別で苦手だ。不器用なりに頑張ったつもりで、今言える精一杯の言葉がそれだった。


「おい、いつものように潰すぞ」


低い声で指示を出す軍学生。彼らの準備は万端。時間は二十時になっていないにも関わらず、戦闘に入ろうとしていた。

小さな声で指示していたが、竹志には聞こえた。ニヤニヤと竹志は軍学生を見ながら馬鹿にする。


「おいおい? まさかただの一般人に三人でボコボコにするのか? ()じ気付いたか?」

「何だと!?」

「待て! 挑発に乗るな!」


一人が先走ろうとするが冷静な軍学生がそれを止める。そのまま挑発に乗って突撃してくれれば良かったが、駄目だったようだ。一人はそこまで甘くはないと敵の認識を改める。

しかし、効果があることは知れたので竹志は同じ調子で挑発を続けてみることにする。


「まぁそうだよな。卑怯な手で第弐高校を潰そうとするからな。真正面から戦わずに小物がやるような戦い方、俺は良い作戦だと思うぜ?」

「テメェ…言いたい放題言いやがって…!」

「だから挑発に乗るなと―――!」

「うるせぇ! 大体雑魚相手に何慎重になってんだ!」


今度は効果アリ。手応えを感じ取れた。仲間の一人が怒鳴り散らし、仲間割れを始めた。


「こんな奴はなぁ、一秒で―――」

「ッ!」


大声を上げていた軍学生の一人がズカズカと歩き出す。竹志はすぐに身構えて警戒する。

だが身構えた瞬間、軍学生の姿は一瞬で消えることになる。


「―――十分だろうがぁ!!」


風を切る音とアスファルトの地面が抉れる音と共に、軍学生は超スピードで竹志の懐にタックルを決めようとする。

直線を音速で走り抜ける【瞬速(ダッシュ)】だ。普通の人間なら対応することができない速度向上動作を使う軍学生には勝利を確信していた。

もしかしたら一秒もかからないのでは? そう思っていた。


―――その油断が、学生に取って最悪な一時(ひととき)へと変貌することになるとは知らずに。


ドゴォッ!!


鈍い音が辺りに響き渡った。

強固なモノで殴られたような音。普通に過ごしていたら聞くことは無いような音だ。

そして、顔面に殴られたような…いや、もっと衝撃的な鈍痛を軍学生は味わった。

驚きや痛みの声は出なかった。そもそも何故顔が痛いのかすら理解できていない。分からないから、何もしゃべることができなかった。

軍学生は確かに竹志に向かって突進した筈なのに、今見える視界は星が輝く夜空だった。


「嘘…」


ガシャガシャガララッ…


地面に落ちる筆箱やグシャグシャの教科書とノート。そしてボロボロになったリュックが宙を舞った。

優香と軍学生は目の前で起きた出来事に呆然とした。

軍学生が消えたかと思えば、いつの間にかアスファルトの地面に倒れているのだ。

竹志は息を吐きながら倒れた軍学生を見下した。


「ま、そうなるだろうな。音速で教材が入った重いリュックにぶつかればめちゃくちゃ痛いだろ? 俺が手加減しなけりゃ頭、吹っ飛んでいたぞ」


倒れた軍学生は既に気を失っており、竹志の言葉は耳に届いていなかった。

竹志は敵が素人―――1年生だということを見抜いていた。そして敵がどのような動きができて、どんな対応ができないのか理解していた。

もちろん敵が正面からタックルすることは簡単に予測できた。音速で向かって来たと同時に構えていたリュックを敵の顔にぶつけた。威力はご覧の有り様。

本当なら頭はぐちゃぐちゃに吹っ飛んでいるのが普通だ。だが軍服によって強化されたおかげと竹志の手加減によって威力は意識を奪う程度まで抑えてあった。それでも激痛であることは変わらない。


「お前たちの【瞬速(ダッシュ)】は基礎までしか習っていないだろ? 走る、止まる、跳ぶ。そんだけだろ? センスがある奴はコツを掴んで細かい動きができるようになるけど、たったそんだけだろ?」

「そ、そんだけだと!? こっちは一週間、血の(にじ)む様な訓練を―――!?」

「時間は?」

「は?」

「一週間ってことは168時間だ。そのうち、訓練した時間は何時間だ? 血の滲む訓練ってことは、それだけの時間なんだろうな?」


突然の挑発的態度に軍学生は戸惑う。だが学生を馬鹿にするような挑発ではない。そんな目をしていなかった。

全てを知っているかのような、努力の価値を見透かしたような、失望しているようにも見えた。

弱者とは見れない存在を目の前にしたせいか、軍学生の二人は竹志に少しばかり怯えていた。

しかし、プライドがそれを許すわけがない。軍学生は大きな声で答えた。


「半日だ! こっちは十二時間も戦闘訓練を毎日繰り返したんだ! そんだけなわけが―――」

「百五十時間」


竹志の呟いた言葉に軍学生の口が止まった。

とてもじゃないが信じられない数字が聞こえた。


「血が滲む様な訓練だろ? 俺が知っている一週間は、それだけ訓練していたぞ」

「あ、ありえるわけねぇだろ!? 百五十時間!? 休める時間は一週間でたった十八時間って、死んじまうだろ!?」

「何言っているんだお前? 血が滲む訓練ってのはそれだけやらなきゃいけねぇだろ?」


普通に答える竹志にゾッとする軍学生。優香も同じように怖くなっていた。


『軍学生だったよ。本当にね。でも高校を教えるのはやめておこうかな』


小笠原の言っていた言葉が頭の中で(よみがえ)る。

アレは遠慮してたわけじゃない。言えなかったのではないかと考えが浮き出した。

元軍学生だということに負い目を感じていた竹志。言うことが躊躇(ためら)われる様な高校に竹志は通っていた。それだけは確信できてしまう。


「たかが基礎で学ぶ足し算引き算掛け算割り算できた程度で三角形の面積や因数分解できるわけねぇだろ。それと同じだ。基礎しか知らないガキ共のお前らはバカで弱い」


冷徹に告げて現実を突き付けた。言いたい放題させてしまった軍学生は当然激怒していた。手をグッと握りしめて鬼の形相で睨みつけていた。

しかし、二人は攻撃しようとはしなかった。先程、味方が一瞬でやられてしまったことに勢いを失っていた。


「来ないのか? ビビッて動けないか?」


だが竹志の挑発は、一人の軍学生が持つ感情―――怒りの引き金を簡単に引かせてしまう。


「…ゴチャゴチャとうるせぇんだよ。上からモノを言いやがって! まぐれで勝ち続くと思うんじゃねぇぞ!!」

「ば、馬鹿が!? だから挑発に―――!?」


先に行動を起こしたのはまたもや軍学生だった。血走った目で軍学生の一人が走り出す。もう一人が止めようと試みるが、遅かった。

再び風を切るような高速で走る。先程の軍学生のような正面からぶつかるようなことはしない。今度は右、左、右、左とジグザグにフェイントをかけながら竹志との距離を縮めていた。


「軍服を着ていても、いくつか弱点があるのは知っているか? 俺のような人間でも通じる弱点があることによ」


それでもなお、竹志の声音は変わることはなかった。

焦りの色はない。怯えた様子もない。彼はただ冷静に敵を見ていた。

彼の感情を多く支配していたのは勝てるという余裕。だから落ち着いていた。

軍学生の拳が届く範囲まで距離が縮んだ瞬間、竹志の顔にめがけて右ストレートが放たれた。

一般人の目では追いつけない速度の拳は、殺傷力のある見えない攻撃となっていた。

拳圧で巻き起こる風圧、破壊力が常識破りなのは明らかだと物語っていた。


だからこそ、軍学生は次も避けられるとは思わなかった。


「ふッ!」

「何っ!?」


そして、忽然と竹志は姿を消した。

軍学生が捉えていた敵の姿は見えなくなり、拳は虚しく空を突いた。

拳圧で生まれた風が強く吹き流れる。急いで竹志を探そうとするが、すぐに見つけることができた。

学生の視線は下へと向いていた。そう、竹志は右肩が地に着くまで低く伏せたのだ。体のバランスを風圧に崩されないように、最小限まで抑えて耐えられる態勢。

さらに敵の殴るタイミングを合わせて体を低く伏せることで学生の視界から姿を消えたように見せた。人の目は上下の動きに弱い。そこを上手く突いた行動だった。

竹志を探し出す時間に使った一秒。このたった一秒で学生の敗北は決定した。

右手の平を学生の右肩に置き、左手で右腕を掴み寄せる。竹志は一瞬だけ力を思いっ切り入れた。


「「っ!?」」


バギッと何かが折れるような音。その音が耳に届いた瞬間、軍学生と優香が息を飲んだ。

それは骨が折れる音。初めて聞いた音だとしても、骨が折れる音だとハッキリと分かってしまった。


「ぐっ…ぁあああああああああ!?」


痛みに絶叫する軍学生を見れば、一目瞭然だった。

手加減が一切されていない。不気味に捻じ曲がった痛々しい腕に、優香は血の気が引くような感覚に襲われた。


「う、腕がぁ!? お、おおお折れたぁぁぁあああああ!!」


右腕を抑えて無様に転がる。竹志はそれを見下しながらため息をついた。


「軍服で強化された肉体でも、骨の関節は全く強化されていないんだよ。関節技は学生同士の戦いでは重宝される技術だ。それとリアクションが引くくらい大袈裟だ。 亜脱臼で止めてある。病院に行きゃすぐ治る程度だぞ」

「ひぃ!?」


竹志の言葉は軍学生の耳に届いていない。打ち拉がれてしまった心の弱い人間は逃げることしかできない。必死に這いながら逃走する軍学生に、竹志は罪悪感を少しばかり感じつつあった。


(嘘だろ…ただの一般人に軍学生が…!?)


残り一人となった軍学生の足は震えていた。目の前で起きたありえない光景に、恐怖が体に染み込んでいた。

心の奥の奥まで。底の底まで。完全に恐怖の色に染まり切っていた。


「最後の一人になったな。どうする? やるか?」


無傷の相手に対して軍学生は顔面蒼白だった。



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