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フクオカ  作者: 夜紫希
第一章
7/32

残念な大人たち

竹志が学校を訪ねてから翌日。援軍補助の代表者である四人———竹志、優香、華道、小笠原は第弐高校の会議室に来ていた。ちなみに優香は会議に参加させるが、絶対に戦争には参加させない。当然、当日は見学参加である。

夜戦の見学は夜戦関係者以外入場することはできない特別席があるのだが、援軍補助代表の関係者として見学は可能。風紀委員と一緒に見るという条件付きだが、何も問題ないだろう。

「私も連れて行きなさい!」と何度も言うのでしぶしぶ連れてきた。妥協して会議参加と見学。心配なのは分かるが、どうか足の(すね)だけ狙って蹴らないで欲しい。地味に痛いンゴ。

会議室の中心には長方形のテーブル。そこに四人は窓側に並び、廊下側には第弐高校の生徒が座っていた。もちろん、バッチリと七三を決めた生徒会長の鹿野と毒舌書記の西城も座っている。


「これより合同作戦会議を始めます。戦争は明後日なので急いで決めましょう」


鹿野が進行を務める。大まかな作戦を決めようとした時、問題は突如起きた。


「ガンガン行こうぜ」

「戦争前に毒殺したら戦争する必要ないかもね」

「お金で敵を味方につけよう!」


三人の大学生が、真面目なことを何一つ話さなかった。

竹志は大雑把過ぎて話にならない。小笠原は現実的なことを言うが恐ろしい法に触れる行為ばかり。華道は笑顔でえげつない行為で法に触れない作戦を提案してくる。後者二名は特にヤバかった。

第弐高校の生徒たちは思った。こいつら、ダメな大人たちだ!っと。


「えっと、ごめんなさい!」


唯一真面目だった優香が、第弐高校の癒しだった。


「アンタたち! ちゃんと会議をしなさい! じゃないと…えっと…竹志のバイト、クビにさせるわ!」

「何で俺だけ被害くらってんだよ!? 他の二人はお咎めなしか!?」

「うーん、それは困るね。この戦争が終わったら奢ってもらうお金が無くなっちゃうのはねぇ」

「えっ、小笠原? 今、俺の知らないこと言わなかった? ねぇちょっと? ねぇってば」

「焼肉に決定!」

「堂々と言いやがったな華道! 俺に焼肉を奢らせようとするな! というかお前らやめて! 俺たちはマジでもやし生活を少しやってるからホントやめて!」


ギャーギャーと騒がしくなる四人。第弐高校は全員で一緒にため息をついた。


「ったく、後で覚えとけ。というか…あの…」

「鹿野です」

「そうそう鹿野。俺たちに提供できる武器の一覧とかあるか?」

「えっと、ハイ。ありますよここに」


急に真面目な作戦の話になったので鹿野は戸惑ってしまう。竹志は流れるように武器を見た後、小笠原に資料を手渡す。


「さすが《技》の高校と呼ばれるだけのことはあるな。全員分の武器ありそうだぜ。ほら、これとか強そうだろ?」

「この武器は新しく国が正式に認めたアサルトライフルだね。あっ、弾倉の数が多くて良いね」

「えー、私はこっちがいいな」

「まーたこの武器か。相変わらず二つ名に恥じない特攻バカか」

「タケ君? 何か言った?」

「何でもないですごめんなさいハイ」

「じゃあ愛理さんはこの武器を当てて、予備にこっちの武器を渡しておくよ」

「はーい」

「で、小倉君は素手で」

「おいちょっと待てゴラァ。死ねってか? 死ねって言っているのか? あぁん?」

「タケ君! これで勝てばモテるよ!」

「よし、やるか———ってならねぇよ! アホか!」

「あとの武器は特殊弾を使ったショットガンにする? 敵は死ぬと思うけど?」

「やめてやれ小笠原。殺傷力をちゃんと抑えた武器にしてやれ」

「タケ君…優しさは時に味方を(あや)めるんだよ?」

「今日の華道怖ぇよ!」


「ストーップッ! ストップストップストーップ!!」


白熱していた会話が止まった。会話を中断させた優香は怯えながら大声を出す。


「何その会話!? 怖いっちゃけど!? 恐ろしいっちゃけど!?」

「ちゃげちゃげうるせぇっちゃけど?」

「タケもアタシと同じやん! ちょっと何今の会話!? 何なん!?」

((((((なま)っているなぁ…)))))


二人の会話に周りにいた人たちは苦笑い。

《フクオカ》の現地の人たちが使う《ハカタ弁》は年々使う人は少なくなっていた。隣国の日本から来る学生たちの増加と共に、日本語の標準語を使う人も増加する。そして標準語の人たちに通じない《ハカタ弁》は次第に消えていってしまう方言になった。なので二人が使っているのは珍しい光景だった。


「みんな怖がっとうとよ!?」


優香の言う通り第弐高校の生徒たちは怖がっていた。三人はキョトンと首をかしげる。


「「「普通だけど?」」」

「バリ歪んどる!」


マジか。自覚がないって怖いね!

その後、竹志はもう一度夜戦について説明した。当日までに先生に事情を説明すれば夜戦に向けての実戦訓練をしてもらえること。武器は何でも使っていいが、自分に合った武器を選ぶこと。

そして命を落とした場合も、審議が通れば最悪無罪になるケースがあるくらい怖い戦争だと。しっかりと危険だということを改めて説明した。

特に雑用で雇われた援軍補助は命の危険だということを伝えた。一撃でも当たれば簡単に倒せる相手だから、軍の補助を潰すこともできる点もあり、敵はよく狙う対象とする。当然一発で終わると考えて良いと竹志は注意を促した。

しかし、その注意を聞いてなお意見する者がいた。


「その当日の補助に、アタシは手伝えないの?」


唐突に提案した優香の言葉にギョッとする一同。

絶対に戦争に参加させないと決意したにも微妙な表情で竹志はもう一度聞く。


「夜戦、危険。アンダァスタンド?」

「understand」

「おい俺より流暢(りゅうちょう)な英語で返すんじゃねぇ真面目な話してんだぞ」

「小倉君が全面的に悪いと思うけどなぁ」


小笠原の言う通りである。


「本気で言っているのか柳? 怖いなら無理して来なくていい。誰も責めないぞ?」

「…それでも来るって言ったら?」

「そりゃ決まっているだろ」


竹志はサラッと答えを出す。


「守る。擦り傷一つ負わせないようにする」

「えッ……」


意外な解答に優香は言葉に詰まる。もっと厳しい言葉が返ってくると思っていたからだ。


「…俺、当たり前のことを言ったよな?」


何も返さない優香の反応に心配し出す竹志。小笠原と華道は笑顔で答える。


「いいと思うよ、この天然」

「さすが鈍感童貞!」

「やっぱ今日の華道、鬼だわ。心に結構来てるよ今。精神ズタズタにされてボロボロだぞ」


グサリッと心にナイフが刺さったような感覚だった。少し泣きそうになっている。


「おい柳。大丈夫かお前? 危ない場所に来ているのに、ハイさようならってことはないだろ? ちゃんと責任持って守るのが普通だ」

「え、でも…普通、来るって言ったアタシの自己責任じゃない?」

「責任は俺がある。ここに来させた俺にな。それにお前が手伝いたいっていう意志を無視したいとは思わないから」

「そ、そう…」


少しズレた考えを持った竹志。しかし、それは悪いモノではない。

優香は頬を朱色に染め、髪を指で巻きつけていじり始めた。小笠原と華道はニヤニヤとその光景を楽しんでいる。

第弐高校の生徒は竹志がカッコイイと思い、鹿野は師匠と呼ぼうと思った。


「そうでした。師匠、伝えたいことがあります」

「急にどうしたお前。頭大丈夫か」

「夜戦の場所が今日の朝、決まりました」

「そしてスルーかよ。どいつもこいつも俺の扱い酷過ぎるだろ」


鹿野はホワイトボードに地図を張り付けて、大きな赤い円を描いた。


「場所は《カシイ》区画の全域。勝敗は敵軍の降参、もしくは風紀委員の審判(Judge)で決まります。制限時間は日が昇るまで」

「普通だな。代表戦とかだったら楽なのに」


建物が多くて大規模な夜戦をするには少しやり辛い気もするが、作戦を上手く組めたなら有利に事を運ぶことができる土地だ。

建物が多いと視野が狭くなり、奇襲を受けやすい。気を抜けばすぐに負けてしまう。

しかし、逆に言えば奇襲がやりやすい土地なのだ。つまりこの夜戦は作戦次第で勝負の優劣が大きく決まる。これは高みから冷静に指示できる者が必要となる。


「僕が必要でしょ?」

「小笠原……あぁそうだよ。頼んでいいか?」

「もちろん」


意図を汲み取った小笠原は立ち上がり、張られた地図に印を次々と赤でつける。


「じゃあ作戦を提案するね。今赤でマークした場所に狙撃手を配置。無線は部隊長に届くようお願いね」

「あ、私もする! えっと前に出る人は私の後をついて来てね! 以上!」

「今の言う必要あったか? あぁ部隊は少数で組んで多めに分けた方がいいぞ」


途端に作戦がドンドン決まり出した。展開の早さについていけない鹿野は焦り出す。


「ちょ、ちょっと待ってください!? 俺たち、何をすればいいのか理解できていなくて……!」

「ガンガン行こうぜ!」

「ガンガン行きましょう」

「ガンガン行こう!」

「どんだけ行かせるつもりですか!?」


またふざけだした三人に鹿野は頭を抱える。再び優香の雷が落ち、残念な三人は反省する。そこで作戦を聞いていた西城が元気よく手を挙げる。


「し、質問いいですか!?」

「あ、お前は…」

「うん、いいよ」


竹志が何かを言う前に小笠原が代わりに聞いてしまった。とりあえず竹志は構える。


「こんな単純で、中身の無い作戦で本当に勝てるのでしょうか?」

「ちょっと説教が必要かな? ん?」

「落ち着け小笠原!!」


構えていたので小笠原を止めることは容易だった。生徒会メンバー、そして竹志は声を揃える。


「「「「「天然です」」」」」

「わかった。僕がちゃんと(しつ)けてあげる」

「軽くキレてんじゃねぇよ!」


その後、時間がかかったが、何とかなだめることができた。小笠原は西城に微笑み(絶対に笑っていない)ながら説明する。


「別に細かくする必要はないんだ。必要な手順を組めば勝利できるからね」

「ようは行動を必要最低限にまで抑えた結果がこれなんだ。中身が薄いわけじゃない。むしろ凄く良い作戦なんだ」


小笠原の発言を竹志はフォローしつつ説明した。西城は何度も頷いて納得してくれたようだ。


「何かあれば僕たち狙撃手が屋上から指示を出すから安心してね」

「なるほど! つまり高みの見物ですね! 良いご身分でよかったです!」

「そろそろ本気で泣かすよ君?」

「ドウドウ、落ち着け小笠原。女の子に手を出すのはよくないよくない」


ここまで小笠原を怒らせるとか…この子、バリ鬼畜だな。俺たちは怖くてできないな。

そんな会話をしていると、優香が質問するために手を挙げた。


「…聞くのが遅れたけれど、もしかして三人って、卒業生なの?」

「おそっ」

「さすがに遅い、かな」

「今更?」

「すっごいバカにした目で見られた!?」


優香は涙目になるが、さすがの俺も引いていた。


「お前……図書館の会議、ちゃんと聞いていたか?」

「聞いていたわよ! でも三人は違うって思っていたし、普通信じられないじゃない! タケだし!」

「何でもかんでも最後に俺を理由にすれば何でも許されると思うなよ!」

「そうだった……ごめんね愛理さん」

「うん、私たちが悪かった」

「もうやだこいつらすぐ裏切る」


優香は知りたがっていたようなので小笠原と華道はみんなに教える。


「僕は第参高校」

「私は第四高校だよ」

「「「「「ヒィ!!」」」」」


その時、第弐高校の生徒たちの顔が真っ青になった。

竹志は理由を知っている。頭が異常と呼べるくらいの天才鬼才が集まる第参高校。戦闘狂のような、血の気が多い連中が集まる第四高校。どちらもいろんな意味で頭がおかしい学校だからだ。


「タケは?」

「フクオカ幼稚園」

「まさかの高校じゃない!?」

「言いたくねぇんだよ察しろ恥ずかしい」


その後何度か優香がタケに尋ねるが高校を答えることはなかった。

不自然だと思った優香はこっそりと小笠原に聞いてみる。


「ねぇ、タケも卒業生なのよね? どこの高校なの?」

「うーん、言って大丈夫なのかな?」


小笠原はチラチラと竹志の方を見て様子を伺う。竹志は配られた資料を真剣に見て気付いていなかった。

しばらく小笠原は迷った後、苦笑いで教える。


「軍学生だったよ。本当にね。でも高校を教えるのはやめておこうかな」


小笠原の教えてくれたことは、小倉 竹志という人間をさらに分からなくしてしまうモノだった。

ずっと仲良くしていた人のことが、こんなに分からないなんて。胸が苦しくなった。

もうすぐ、命懸けの戦争が始まろうとしている。


(タケ……)


優香はそれ以上、会議では何も発言することはなかった。

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