秘密の会議
フクオカ学園大学の図書館三階。管理人から大きな部屋を貸してもらい、その部屋の中で竹志は作戦会議を開いていた。
ホワイトボードに書かれたお題は『最近うるさい馬鹿どもに鉄槌』だ。
「これは半分だけ建前。本当は俺の弟の学校が危ないんだ」
「半分私情が入ってるのね…」
竹志の本音に苦笑いの優香。いやいや、安眠妨害とか十分キレる理由になると思うよ? 俺だけじゃない。近所の人たちだってイライラしているはず。壁ドンどころか壁ドッカーンくらいはやり返したいと思っている。朝、大家さんと会ったがすっげぇ怒ってた。あの時は怖かったな。
対して小笠原と華道は学校を心配していた。
「学校存続の危機……二年前以来の出来事じゃないか」
「第弐高校潰れちゃうの!?」
昨日の出来事を全て二人に話した。日曜日だというのに集まってくれた二人に心の中で感謝する。もちろん優香にも。
小笠原は顎に手を当てて深刻そうに考え、華道も腕を組んで考えてくれている。
「うーん、やっぱり夜戦戦争しか無いんじゃないかな? 彼らがどうにか第壱高校に勝つことが一番良いと思うよ」
夜戦で学校と学校の全面戦争。それしか無いと小笠原は断定した。これから対策を立てて逃げるより戦争に勝つ方がメリットが多く、打開し易いと踏んだのだろう。
華道も同意するようにウンウンと頷いている。
「普通に考えて戦力が足りなさ過ぎる。敗北が見えているから悪いが普通に戦争するなら却下」
第壱高校の全高校生徒数は約三千。対して第弐高校は約千人だ。倍どころの話ではない。差があり過ぎてしまっている。
今度は優香が小さく手を上げて提案する。
「話し合いは?」
「柳。第壱高校は脳筋野郎しかいない。お前はゴリラと会話できるのか?」
「言い過ぎじゃない!?」
「優香さん。言語能力が低いんだよ彼らは。ゴリラだからね」
「優香ちゃん。ゴリラとお喋りしちゃダメだからね? 頭、悪くなっちゃうから」
「二人とも!?」
三人の毒舌に優香は驚くことしかできなかった。とりあえず第壱高校の頭に関しての扱いの酷さは置いておく。大体、そんなイメージが付いてしまった原因は第壱高校の元生徒会長に問題があるのだが、思い出すだけでイライラしてしまう。
今度は華道が元気良く手を上げて提案した。
「お金で解決する!」
「この女笑顔でバリ汚ねぇこと言いやがった」
流石と言うべきか平常運転というか。平和に解決できる可能性があるからなお汚い。女の子がそんなことを言って欲しくなかった。
俺と小笠原はドン引きだが、優香は苦笑いだ。さすが親友。笑みを頑張って作っている努力は認めてあげよう。ノーアンダァスタンド。
最後にもう一度考えた小笠原はこの話し合いの結論を出す。
「じゃあ…僕たちが援軍補助として第壱高校と戦争をするしかないね」
「え…?」
優香は自分の耳を疑った。信じられない言葉が小笠原の口から出たのだ。
ただの一般人が軍学生に戦争を仕掛ける。そんな無謀な挑戦は敗北の二文字しか待っていない。
軍学生の強さは世界から見たら『兵器を超えた最強兵士』と称されるほど、最強を誇っている。軍学生一人で村の破壊。十人で街を破壊。百人で国を滅ぼすっと認識されているくらいだ。
小笠原の異常な発言に、竹志と華道は予想に反する反応を見せた。
「それしかないな」
「どうせタケ君のことだから、最初からそうするつもりだったでしょ? ねぇーねぇー?」
「うぐッ…バレて———!?」
横からグリグリと華道は人差し指で竹志の頬を軽く突く。華道は気付いていないが、竹志の腕に豊満な胸が当たっているせいで思考と言葉がフリーズしている。
数秒後にはハッとなり、竹志は拳をグッと握りしめる。
「違う。俺は尻の———!」
「小倉君がよくないこと言う前にまとめるよ」
小笠原がすぐに声を被せてきた。バカな発言は見事に掻き消えたが、竹志は頭を抑えながら唸ってしまった。
「大学にいる高校卒業生を集めて第弐高校の援軍に加わる。これで決まりだね。人数集めなら任せて」
「はーい! 私も手伝う!」
小笠原の提案に華道が賛同し手を挙げた。トントンと進む話に優香は思わず大声で止めてしまう。
「待って! ありえない! 私たち一般人は軍学生に勝てんよ!? 分かって言っとる!?」
「お、落ち着け柳。一般人じゃない、軍学生卒業生だ」
騒ぎ出す優香に気付いた竹志が落ち着くように言うが、
「落ち着けん! 軍制服も無いのに勝てるわけない! 分かっとうと!?」
核心を突いた言葉に三人は黙る。あまりに静かな状況に優香は正気になり、言い過ぎたと謝罪の言葉を口にしようとする。
しかし、竹志の表情を見てその言葉を止めた。
「いや、勝てないことはないんだが…」
困った顔をした竹志を見て優香は困惑した。またしても普通じゃない発言に優香以外誰も異議を唱えようとしない。
「あまり知られていないけど軍学生卒業生は強いんだよ柳。制服が無くても、多少は戦える」
「そ、そんなこと…聞いたことないわよ…」
「だろうな。あんな死屍累々が出来上がってしまうような場所に軍服無しで戻ろうとか考えられねぇよ」
「だったら———!」
「でも、全く戦えないとは言っていないだろ」
冷静に答える竹志に優香は首を振ることしかできない。
―――軍学生卒業生が強い? そんな話、聞いたことがなかった。
取り乱す優香を見ていた華道が微笑みを見せて安心させる。優香の両肩にそっと手を置き、
「大丈夫。男子を前線に出して囮にするから!」
「「ちょい待て鬼女」」
何故か男が必要以上に命を懸けてしまう状況になってしまっていた。それは解せぬ。
「小倉君が最前線にいるにはおかしくないけれど、僕は後方支援だよ?」
「おがちゃんおがちゃん。さりげなく俺を売るのやめてくれない? ねぇねぇ? こっち向けメガネザル」
三人は誰が前線に行くのか作戦を決め始める。(竹志の意見は全く通らなかった)
優香は状況を全く飲み込めず、ただ聞き逃すことしかできなかった。
ただ、竹志の最後に言ったあの発言だけは覚えている。
「さて、俺たちが戦争で勝つということでアンダァスタンド?」




