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フクオカ  作者: 夜紫希
第一章
2/32

フクオカ学園大学

「———よしっと」


今日の講義は既に終わり、休憩スペースで提出するレポートを書きまとめ終えた。四人用のテーブルの上に置いた教科書やノートを片付け、缶に入った極甘コーヒーを飲み干す。無糖のブラックでも飲めるが、こういう勉強をしている時、甘いモノが欲しくなるのは俺だけじゃないはず。

ふと周りを見渡せば人が多くなっていることに気付き、女子と男子が集まって楽しく談笑しているのを見てしまう。リア充共が、爆発しろよちくしょうが。

…見ているのが辛くなってしまい、そろそろ帰るかっと考えていた矢先、右肩をポンポンと叩かれた。


「よ、よっす……」


振り返ると相手の指が頬に当たった。よくある『引っかかったー!』というやつだ。

慣れない挨拶のせいか女の子の動きはぎこちなかった。


「ん…俺以外の男にこれをしたら勘違いされるぞ」

「———ッ! せ、せんけんね! アンタ以外に!」

「ほう…まさか俺が好きなのか?」

「しゃーしい! 何勘違い———ってそっちが勘違いしとる!?」

「おい、言葉言葉。俺以外には通じないぞ。この前シャーペンの芯を渡された出来事忘れたのか」


顔を赤くしながら肩に結構痛いパンチを食らう。相変わらずからかいのある奴だ。

ゆるふわパーマな茶髪のショートボブに、白トップスと薄い茶のミニスカ。そして黒のストッキングを穿き、ローヒールを履いた女性。休憩室にいた男子たちが注目するくらい可愛い彼女の名前は柳原(やなぎはら) 優香(ゆか)。俺と同じ大学二年生だ。


「それに勘違いなんかしてねぇよ。それよりもう講義は無いのか?」

「…休講よ。先生が急病でね。来週の土曜日に補講があるわ」

「怠いなそれ。休日潰しじゃん」

「仕方ないじゃない。病気なんだから」


そう言って柳はわざわざ俺の隣に座った。別に四人席はまだ空いているんだから正面に座ってもいいだろ。誰も相席なんてしないしない。


「タケは勉強? 真面目ね」

「今日もバイトだからな。今のうちにやっておかないと時間がねぇんだよ。そういうお前はどうなんだ、(やなぎ)

「何度も言っとるけど優香でいいって。バイトはやめた」


互いに『タケ』と『柳』といったあだ名で呼び合うくらいは仲が良い。何故か柳は俺に名前を呼ばせたがるが俺は断固拒否する。くだらない理由は後程。

柳との出会いは入学式の日。俺は理系で柳は文系と普通なら関わる機械はないであろう組み合わせのはずだった。

しかし、俺は入学式当日遅刻をしてしまった。遅れた理由は弟の三者面談。書類提出の遅れた弟(あれほど学校から貰う紙はすぐに出せとうるさく言っていたが、結局無意味だった。お兄ちゃん号泣)はその日しか面談を受けることができなかった。面談に出ないと弟の進路はダメな方向に行ってしまうので、出ないわけにはいかなかった。放課後にやってくれれば助かるのだが、その日のうちに書類を提出しないと高校にはいけないっと担当教師に言われたので無理は言えなかった。そもそも先生が朝早くから三者面談をやってくれることや事情を知って早く終わってくれること。十分過ぎるほど優しくしてくれた。感謝することはあっても、責めることなど論外である。

電車に乗り降りた後は駅から走る。駅と学校の距離は50メートルしかないので全力で走ったのはいいが、その途中問題が起きた。

入学式の場所が分からない。学校の敷地は広く、どこに何があるのか、当然入学式が行われている体育館も知らなかった。

案内地図は貰っているが持って来るのを忘れてしまい、案内してくれる在校生も既におらず、しばらく学校内で迷っているうちにもう家に帰ろうと諦めていた。その時だった。


「「あっ」」


自分と同じスーツ姿の女性に出会った。それが俺と同じように遅刻し、迷子になった優香だった。

それから入学式をサボり、後日どうにかすればいいっと二人は悪い方向で意気投合した。ラーメン屋に寄り、ゲーセンで遊びまくったのは今でも良い思い出だ。


「何でバイトやめたんだよ? 結構儲かっていたんじゃないのか?」

「あのエロ店長、アタシにメイド服を着て接客しろって言うのよ!? 信じられない!」


手をグッと握りながら優香は怒る。

恐らく店長は美少女である優香にメイド服を着せて店を繁盛させたかったのだろう。そこに私欲はあると思うが、可愛いは罪って本当にあるんだな。


「そだなー」

「…何よ。興味ないって言うの?」

「俺はメイド服よりチャイナ服派だから。あの太股がチラリズムするのが最高。尻は世界が誇る遺産だから見えないほうが…いや見えないからこそ至高の存在として———!」

「死ね変態ッ!!」

「———ふごッ!?」


カンッ!っと優香は竹志に向かって飲み終えたコーヒー缶を投げつけて良い音を響かせた。竹志の額にクリーンヒットし、そのまま缶のゴミ箱へと奇跡のシュートを披露した。周りからおぉっと歓喜の声が上がる。


「アンタの言うことはいっちょん分からん!」

「分かれ! 胸より尻だ俺は! 簡単だろ! あと『いっちょん』とか周りの人たち分からねぇからな!?」

「死ねッ!!」

「死ぬかッ!!」


「はい、喧嘩はそこまでー」


その時、竹志と優香の顔に手が当てられた。横目で手を当てた人物を見る。


華道(はなみち)か…」

「えッ!? 愛理(えり)!?」

「もうッ、二人はすぐに喧嘩するんだから。今からおがちゃんが来るからね?」


華道、愛理と呼ばれた少女———華道 愛理は腰に手を当てながら笑顔で怒る。うん、これは怒っていないな。むしろふざけている。

ツンツンした優香とは真逆。フワフワした性格の愛理。膝下まである白いワンピースを着ており、黒髪のロングストレートの女性。優香が美少女なら華道は美人と言った所だろうか。しかし性格が()()でフワフワしているので残念美人かな。

華道とは元々面識があり、この大学に通っていたことを知った時は目玉が飛び出してしまうくらい驚いた。


小笠原(おがさわら)もいるのか?」

「おがちゃんはタケ君のことずっと探していたんだよ? 優香ちゃんは私が探していたからね!」

「ちゃん付けはやめてって———キャッ!?」


華道は優香が文句を言う前に抱き付いた。百合百合してんじゃねぇよ。男子たちが全員立ち上がっただろうが。おっと俺もか。

大きく揺れる華道の胸が優香の控えめな胸に押し付けられる。その光景は山の頂上より絶景だ。尻派の俺が言うんだ。生きてて良かった。


「友達をそんな目で見てはいけないよ、小倉君」

「あん? なんだ、小笠原か」


俺の両肩を掴んで無理矢理座らせたのはおがちゃん———小笠原 春町(はるまち)だ。

黒縁の眼鏡を掛けており、一度も染め上げていない短い黒髪。カッターシャツに黒のネクタイに紺色のズボン。頭の良いできる男を思わせる雰囲気を漂わせていた。実際、成績が良いのは確かだ。

性格は大人しい方だと思われがちだが、全く違う。静かで落ち着きのあるイメージに見えるが、全然違う。


「お前も講義終わりか?」


俺が尋ねると小笠原は首を横に振った。


「ううん、僕はこの一時間だけ空けているんだ。休憩のためにね。また後で二時間講義があるよ」

「私も同じだよー」

「ふーん、二人とも真面目に勉強するのね。すごいわ」


小笠原と華道の二人に優香は素直に尊敬する。二人はまた首を横に振って「そんなこと無いよ」と謙虚な反応を取っていた。

そんな感心する優香に俺は鼻で笑う。


「ハッ、柳は勉強していなさ過ぎるだけだろ」

「してるわよ! 何よッ、タケなんかアタシより勉強してないじゃん」

「俺は天才だからな。最低限の勉強である宿題だけをやれば単位は取れるし、テストで赤点は取らない。そう、どこかの誰かさんと違ってな」

「なッ———!?」


ガスッ!とテーブルの下で優香に足を思いっ切り踏まれた。声にならない痛みが襲い掛かって来る。


「———ッ!? 何すんだよッ!?」

「うっさい! ムカつくこと言うのが悪いっちゃけん!」

「んだとゴラァ!? 俺は『どこかの誰かさん』しか言ってねぇだろうが!」


パンッ!


その時、乾いた音が響いた。それは手を叩いて鳴らした音だった。

音源は小笠原。彼の笑顔はイケメンで女の子を虜にしそうだが、今の二人には閻魔大王より怖い存在に見えているだろう。


「ここは公共の場だよ? 分かるよね」

「「マジですいませんでした」」


刹那———竹志と優香は仲直りした。互いの肩に手を置き、反対の手で握手を交わす。周りの話し声も一切無くなり無音の空間となった。


「またおがちゃんを怒らせて…駄目だよ二人とも」

「深く反省…いや猛省しています」


華道の言葉をしっかりと受け止める姿勢を小笠原に見せた竹志と優香。「ならばよし。仲良くしようね」っと小笠原はまたニコっと笑ってくれた。

小笠原がこうなった最初の発端はこうだ。いつものように喧嘩していると、優香の振るった拳が俺に当たり、よろけてしまった。俺の倒れる方向には偶然通りかかった小笠原がいた。そして、小笠原の眼鏡に偶然俺の拳が当たり、そのまま偶然通りかかった学生の足元に落ちた。もう後は予想がついたであろう。その後も悲劇を起こす偶然はさらに起きた。学生は気付かず、そのまま眼鏡を踏んずけて壊してしまったのだ。あとは小笠原が激怒し———これ以上は話したくない。

それから小笠原は俺たちを喧嘩しないように見張っている。というか監視している。国だけじゃなくここでも恐怖政治が強いられていますよ。


「小倉君も優香さんも、もっと仲良くしようね」

「それよりもまだアタシのことを『さん』付けするの? 普通に呼んでいいのに」

「ありがとう。でもこれはクセのようなモノだから。僕より小倉君の方が問題だよね」

「…そうね」


あれ? いつの間にか俺が悪いことになってる? 何故だ。

小笠原の言葉に優香はシュンっと落ち込んだ。その様子を見た竹志は少し考えた後、優香の肩に手を乗せた。


「それは違うぜ。俺はお前の名前だけで呼んでもいいと思っている」

「じゃあ何で言わないのよ…」

「デレデレの柳よりツンデレの柳が良いってことだ」

「…もうわけ分かんない」


ため息をつき、優香は諦めるように言った。だがニコニコと華道は微笑みながら手を合わせる。


「遠回しに今の優香さん方が可愛いから照れてしまうって言ってるんだよ小倉君は。キャー!」


小笠原の発言に優香の顔がまた真っ赤に染まった。


「は、はぁ!? そんなわけないじゃん! タケ! アンタもなんか言いなさいよ!」

「大体合ってる」

「———ッ! 何言いよん!? タケの頭、おかしいっちゃない!?」

「また戻ってるぞ。可愛いって言っとうとー。聞いてて分かっとっちゃろー」

「真似せんで! 馬鹿! 馬鹿タケ、バーカ!」


ホントくだらない理由だな。そういう照れて怒るお前を見たいがために俺はお前を名前だけで呼ばないんだよ。素直に名前を呼んだら顔がデレデレしてたからな。アンダァスタンド?


(まぁ本当は、俺が恥ずかしくて女の子を名前で呼べないだけだけど)


小笠原と華道の二人はそのことを知っている。知っているから優香が見えない後ろで「プークスクス」って俺の顔を見ながら笑っている。殴りたい。あの笑顔、殴りたい。

そんなお前はチェリーボーイって? ノンノン、もっと酷いよ俺は。自分でも酷いって言えるくらいな。

罵倒のガトリングガンを一方に浴びていると、華道が俺の顔を見て何かに気付く。


「ん? タケ君、また寝れなかったの?」


ナイスタイミングで話題の方向を切り替えてきた。本人は無自覚だろうが。

華道は竹志の目の下に隈ができていることに気付いた。


「また暴れられたのかい?」

「正解。小笠原、俺に栄養ドリンク一本な」

「アハハッ……当てたのに僕が上げるのか……栄養ドリンクを欲しがるからキツイ思いしていることは十分に伝わったよ」


竹志の言葉に小笠原は苦笑い。金がヤバイのに驕る金なんてねぇよ。


「深夜でもアイツらはお構いなしで暴れやがる。俺が寝ている時にずっとギャーギャー騒ぎやがって…おかげで寝れなかったわちくしょう」

「ちょうど外が良い気温になる季節の時期だからね。熱い夜や寒い夜何かに戦いたくないしね。毎日怪我をしてでも戦いたい気持ちは分からないけど、今のうちに『夜戦』で序列を上げておきたい理由は理解できるよ」

「クソッ、俺も静かな場所に住みたいぜ」


大きな欠伸をしながら文句を垂れる。小笠原の言うことは同意せざる得なかった。熱中症にもなる炎天下の外や鼻水が止まらなくなるような極寒の地に行きたくないのは誰だって思うはずだ。


「…また軍学生の話ね」

「ごめんね優香ちゃん。難しい話をして」

「馬鹿にしてない!? 全っ然ムズくないからね!?」

「優香さんは『塾』だったね」


塾とは高校受験に失敗した者が入る学校だ。高校受験を受けて落ちた学生の約九割がこの学校に通うことになっている。塾と言っても中学校と変わらない学校のようなモノだ。普通に授業を受けて良い成績を出せば優香のように大学に通うことだって容易。就職もできるので険悪されるような要素は何一つ無いシステムだ。


「ある程度のことは知っているわよ」

「当たり前だ。『夜戦』を知らないとか言ったら《フクオカ》の人間じゃねぇだろ」


夜戦。文字通り夜行われる戦いだ。もちろん戦うのは軍学生たちだけだ。

二十時から始まり明日の朝日が出るまで毎日行われる。一般人や参加したくない学生の人たちは二十時までに家や建物の中に入ることが国から命令されている。そして戦う者たちは建物に入っていけない規則があるのだ。

そのため二十時から全ての交通機関や店の営業は止まり、電車やバスの乗り遅れなどで、もし家に帰ることに失敗したら戦闘の巻き添いがもれなく待っており、一般人は大怪我、下手をすれば命の危険に晒される。そのためコンビニと同じ数くらいの格安ホテルが街に点々と建てられており、避難所の一種として機能している。

各高校には序列という制度がある。テストの成績順位と同じように、軍学生の強さを順位にしたモノが序列だ。各校内だけで出された校内序列、五つの全高校を全て含めて出された全校序列の二種類。この序列の上位にいる者は必然的に成績優秀者として認められ、学校を休もうが授業を受けなかろうがテストで0点を取ろうが高校を卒業することが許されるようになる。他にもいろいろと嬉しい特典などがあり、彼らはそれを目的として夜戦を行い、日々序列上げに勤しむ。弟もいつかこの制度のせいで戦いの日々に明け暮れるだろう。兄としてぜひやめてほしい。コツコツと努力を重ねることも大事だから。


「今日の朝、世志からもう一回聞いたら二年生の軍学生が戦っていたってさ。多分レベル2(セカンド)に成りたいんだろうな。ホント、うちの周りは戦う場所なら人気スポットだよな」

「確かにタケ君の場所は人気(ひとけ)がないからね。ボロい建物ばかりであまり人が住んでいないし」

「軽く俺の住むアパートをディスるのやめろ華道」

レベル2(セカンド)…何それ?」


聞きなれない単語に優香は首を傾ける。小笠原が優香に分かりやすく説明してあげる。


「軍学生の強さだよ。その人に合ったレベルが国から定められていているんだ。最初はレベル1(ファースト)から始まって、二年生にもなればレベル2(セカンド)になれる可能性を持てるようになる感じだね」

「と言ってもまぁレベル1(ファースト)は子供に銃を持たせたような雑魚だな。世志が先輩って言ってたからそこそこの強さになった二年生だろう」

「ざ、雑魚ってアンタねぇ…相手は軍学生よ? 私たちじゃ一瞬で殺されるわ…」

「そう怖がることはねぇよ。普通に暮らしていたら戦闘中の奴らとは道端で会うことはねぇし、風紀委員だって仕事をしている。しかもやっと今日一年生たちは【瞬速(ダッシュ)】の練習を始めたんだぜ?」

「だから分からないってば…」

「ん? いつも夜走り回っているだろ? 一瞬だけでも見たことないか?」

「…もしかしてシュンシュン走っている影のこと?」

「そうだよ。あれ、軍学生だからな? 【瞬速(ダッシュ)】を使った軍学生」

「嘘ッ!?」


軍学生たちが初めに習う基本動作———それが【瞬速(ダッシュ)】だ。直線を高速で走り抜ける動作で最高速度はなんと音速であるマッハ1だ。冗談ではなく本当のことだ。

そもそもどうやって彼ら軍学生は強くなっているのか。それは全て国から渡される『軍制服』に秘密がある。

別名『強化服』と呼ばれるこの軍制服は着用した者の身体能力を莫大に上げ、超人の力を手に入れることができる。個人個人、強さの差は出るが、一定ラインの強さは必ず手に入ることが約束される。

音速の風圧などにも体が耐えることができるのは軍制服のおかげ。全ては軍制服から強さが始まっている。昨日弟も軍制服を着用していた。制服に似ているのでその事情を知らなければ初見で見破れないだろう。見破った方が怖い。

この制服には一つ規定があり、高校生にしか着用が許されていないということだ。理由は明らかにされていないが、破れば罰則や罪に問われる問題となる。

しかし、最初の【瞬速(ダッシュ)】は死ぬほど辛い。いくら身体強化したとはいえ、日頃鍛えている者でも負担がかかるのは避けられない運命なのだ。

最初のうちは【瞬速(ダッシュ)】を発動した後はその場にうずくまり、動けなくなる。今日も弟の足は動けず、平和な土曜日をダラダラと家で死んだ目で過ごしているはずだ。

基本的に学校が終わった直後に【瞬速(ダッシュ)】を発動して家に帰る。そうしなければ他校の奴らに絡まれたり序列上げの餌食になってしまう。弟もそれを回避するために急いで帰って来たはずだ。まぁ俺が鍵をかけたせいですぐに帰れなかったけど。


「———っと言ったところか」


以上のことを竹志は優香に説明してあげた。優香はうんうんと頷き理解してくれたようだった。

竹志は軍学生に同情しながらため息をつく。


「学校側も鬼だよなぁ。わざわざ遅くまで授業させて戦わざる得ない状況まで追い込もうとする教師もいるし」

「高校序列もあるからね。今は第()高校が二位だよ」


小笠原の発言に俺はふーんっと反応を返す。


「世志の通っている高校だな」


偶然弟が通う学校だった。学校が好成績だと嬉しい。

自慢の弟の話題に愛理が食いついてきた。


「《(わざ)》の高校! わぁ! 何作れるの!? 銃!? 剣!? 爆弾!?」

「物騒じゃない愛理!? タケの弟君がそんなこと———!?」

「全部いけるぞ」

「———もうなんなん!? タケたちのこと、いっちょん分からん!?」


高校には特色がある。

(いち)高校の《(ちから)》。第()高校の《(わざ)》。第(さん)高校の《()》。第四高校の《(とう)》。第五高校の《(ちょう)》の五つがある。

第壱高校は説明するまでもなく身体能力の強さや戦闘力など特化した学校だ。受験時にはペーパーテストはなく、疑似プチ戦争をしたとか。夜戦の参加率は非常に高く、野蛮な輩が多い学校だと言えよう。

第弐高校は技術。武器や罠、戦争兵器などの開発が主に盛んな学校だ。ニュースでは医学部の秀才がリアルバ〇オハザードが起こってしまうかのような危険薬品や、獣のように狂暴になる麻薬を作り上げてしまったりするのが日常的に報道されているので有名だ。こちらは野蛮というかヤバい人が多い。現在も戦争関連の兵器や武器に携わっており、この学校が無くなれば軍事力は大きく低下するだろう。

第参高校は知力が非常に高い天才学校。受験のペーパーテストの問題が大学卒業レベルという噂を聞いたことがある。中学生に一体どれだけの勉強をさせる気なのだろうか? こちらは非常に穏便に済ませる大人しい人材が多いので夜戦には参加せず、分析などをして直接関わることはしない。ゆえにずっと最下位だが、彼らを怒らせれば二度と世界に電力が流れることはないだとか、怖い噂がある。

第四高校は戦争の地にもっとも多く送られる学校だ。常に戦争のことを学び、常に戦争のことを考ええさせられるイカレた学校。人気は非常に低く、競争率は高くない。しかし、団体行動時などの強さは他の高校より優れており、チーム戦の戦争になると負け知らずと言われている。ちなみに毎年戦闘狂がいるのは確実なのでクラスメイトになれば最悪なので入学は本当にオススメできない。

そしてもっとも最強の高校と呼ばれるのが第五高校だ。小笠原があえて一位を言わずに二位を言ったのは不動の一位である第五高校があるからだ。

この高校は全校生徒三十人以下と極少ない学校だが軍学生の一人一人が超人的力を持っている。そのため受験内容はどの学校より超難関。通るのはひと摘みの選ばれた人間だけだ。謎が多い高校だが序列の上位にいる人間は大抵第五高校の生徒。他の高校から脅威の存在として見られている学校である。


しばらく話し込んでいると、学校のチャイムが部屋に響き渡った。


「あー! もう終わっちゃった」

「そうだね、残念だけど僕たちはこれで」


華道は残念そうに落ち込み、小笠原は名残惜しそうにする。


「おう、またな」

「またね」


俺と優香は小さく手を振って見送る。華道は両手を振ってくれたが、恥ずかしいからやめてくれ。


「どうする? どうせこの後は暇だろ? なら夕飯食いに来いよ」

「バイト先の?」

「おう」

「…サービスは何してくれるん?」

「チャーシュー1枚サービス。お肌の味方になる木耳(きくらげ)も多くしてやるよ」

「やった」


小さくガッツポーズする優香。その姿はちょっと可愛いと思えてしまう。

店長にバレないように頑張ろうと気合を入れた。


しゃーしい! 『うるさい!』って意味です。『せからしい!』と言う人もいますね。


自分はしゃーしい派です。

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