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フクオカ  作者: 夜紫希
第一章
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最強の国

最強の国とは、一体どこだろうか?


大きな経済規模を持ったアメリカ? 世界最大人口人数を誇る中国? 領土が世界一広いロシア?

それは全て違う。

では最先端技術を持った私たちが住む国、日本だろうか?

その答えはバツ。昔なら赤マルを貰える回答だろうが、今は違うのだ。


———答えは《フクオカ》だ。


元の名は《福岡県》という日本の九州地方の一部()()()()()()()となってしまったため、日本という解答は不正解になってしまう。。


———もう一度答えよう。世界最強の国は《フクオカ》だ。



#



ピピピッ


(あらかじ)めセットして置いたタイマーが鳴り響く。スイッチを消すと同時にカップ麺の蓋を開封した。

割り箸を綺麗に割り、麺をかき混ぜて汁と絡ませる。熱々のまま麺を豪快にすする。そして一言。


「バリうめぇ」


やはりラーメンの頂点は豚骨ラーメンだと改めて認識する。味噌ラーメン? 塩ラーメン? ハッ、外道たちめ。豚の前にひれ伏すが良い。王道の豚骨を一生食い続けることを我はここに誓う。

寒かった冬は過ぎ、暖房をもう点けなくなった部屋は現在ちょうど良い室温になっている。

そうだ、春なんだ。改めて四月の中旬になったことを思い出す。


「ここに住んでから四年以上も経ったのか。長かったような、短かったような」


時間の流れはやはり早いようで遅いモノだと認識する。人の感じる時の流れは同じであって同じではない。あ、今のセリフは深くてカッコイイ———深カッコイイ。何だその謎用語。マリアナ海溝でも褒めているのか。

自分が住んでいる少し古い二階建てアパートの201号室は中々快適だった。六畳の畳部屋にキッチン付き。シャワーとトイレが他の住人と一緒に共用して使わなきゃいけないが、ベランダには洗濯機(冬は水道が凍ってクソ面倒なことになる)が置いてあって最低限な生活が送れるくらい充実していた。さらに他の住人は下の部屋に住んでいる住人と、その隣に居る大家さんだけ。この二階フロアを独占している形になっているのだ。

つまり何が言いたいかと言うと、困ることはあまり…いや、全くない。家賃は訳アリ物件なので月々四万五千円で嬉しい値段。未だに訳は知らない。知らない方が良いって大家に脅されたら聞かないよな。うん。触らぬ神に祟りなし。

近くには()()()()も住んでいないようだし、良いこと尽くしのアパートだ。

ふとアイツらっという言葉で思い出し、時計を見る。デジタル時計は十九時五十九分と映っていた。


「もう始まるな。はぁ…頼むからこの近くでは争わないでくれ」


嫌な顔で溜め息をつきながらそう願った瞬間、時計が二十時へと時刻が変わった。


ゴオオオオオォォォォオオ!!!


暴風が窓を勢いよく叩き、ガラスが悲鳴を上げる。今にも割れてしまいそうな感じがしてしまうが、割れることは絶対にない。

超強化ガラスに超強化壁。こんなボロアパートでもちゃんと整備されている。というか全地域整備するならついでに綺麗に改装でもして欲しかった。外見の汚さを残す意味ある? 汚れを残したまま補強するとか匠の技、凄過ぎだろ。


「…今日は大人しく帰ってくれたか?」


音が聞こえなくなったのでカーテンを少しだけ開き外を覗く。街灯がチカチカと照らす道路や薄暗い道には誰もいない。

そう、誰もいない。普通の人間ならそう見えるだろう。だがフッと黒い何かが道を通ったのが一瞬だけ見えてしまった。


「あーあ、今日もノルマ達成ですか。デイリー達成ですか。報酬なんてねぇよ馬鹿野郎。もういい加減にしろよなぁ…」


カーテンを締め切りため息をついた。その瞬間———


ドガシャアアアン!!


———何かが盛大に壊れる音が響き渡った。耳が痛くなるくらい鋭い音に耳を両手で塞いだ。


ドゴンッ! ガゴンッ!


次々と大きな破壊音が部屋に響き渡る。うるさい音に堪えながら棚の上に置いてあった耳栓を探す。見つけたあとは速攻で装着した。

整備するなら防音加工も無償でやって欲しかった。有料って聞いた途端、大家さんは全力で首を横に振ったからな。


「絶対に許さない…と言いたいが『元』の俺が言えることじゃないか」


経験者は語るというのはこういうことかとシミジミ感じた。できることなら過去の自分に鉄拳制裁してやりたい点がいくつもある。今の自分では過去の自分に勝てるはずはないが…。これぞ昔の俺は強かった説でのウザ話。たまにいるよね。何度も自慢してくる人。身近にいるから面倒なことがよく分かる。

無駄なことを考えながら食事を済まし、ラーメンを食べ切った後は片付けをする。捨てるだけの簡単なお仕事。器を破り小さくまとめてゴミ袋に詰める。ゴミ袋の値上がりがあったことを知ったので、スペースを無駄にしないようにギッチリ詰める。これ以上ゴミ袋の購入のは家計に厳しい。だから一ヶ月のゴミを一袋で済ませる勢いで詰めるぞ!

ゴミ袋と戦闘を繰り広げていると、気が付けば先ほどのような爆音はもう聞こえなくなっており、耳栓を外した。するとドアをドンドンッと必死に叩かれていることに気付く。


「あ、閉めたままだったか」


ドアの鍵を開けるとすぐにドアは勢い良く開かれた。


「バカ兄貴! なんで鍵をかけてんだよ!?」

「それを言うなら弟よ、寄り道せずに帰って来い。これでもしっかりと二十時まで耳栓をしなかったぞ?」


入って来たのは髪を金髪に染め上げた自慢の弟だった。

学ランの第一ボタンは開けて、茶色の革の鞄にはよく分からないキャラクターのキーホルダー。学ランの中にはカッターシャツを着らず、英語の文字がズラリと並んだ黒いシャツを着ている。

チャラいと言えばチャラい。だが整った顔立ちだから少しムカつく。けど可愛い奴だから許す。


「寄り道なんかしてねぇよ! ずっとそこに倒れていたんだよ!」

「本当か? ってそうか、お前今日が初めてだったな」


玄関で倒れる弟に何が起きたのか全て推理することができた。


「どうだった? 初めての【瞬速(ダッシュ)】は?」

「最悪だ」

「だろうな。どうして今週の月曜日から木曜日まで使用禁止で、金曜日に許可されるのか分かっただろ?」

「うっ…土日で体を休ませるためか…でもこれ二日で治るのかよ!?」

「気合いだ。そんなことじゃ生き残れねぇぞ」


弟の両脇に手を入れて部屋の中へズルズルと引きづり込む。今の弟は動けない病人と同じだ。


「外はどうやった?」

「先輩がやってる。強そうだった」

「やんちゃな二年生だろうな。序列上げに勤しんでいるんだろ」

「うへぇ…これが毎日続くとかマジ最悪…兄貴、飯」

「慣れたら最高だぞ。学校から家まで一瞬だからな。うまかっちゃんでいいよな?」

「夕食にラーメンは飽きる。兄貴が奮発すれば肉ワンチャンだろ」

「そんなに金の余裕があるとでも? アンダァスタンド?」


『理解できているよな?』と挑発するように言うと弟は諦めた。大人しくなった弟を座布団まで連れた後、キッチンでインスタントカップ麺を作り始める。ただし俺のオリジナルは他の人たちと作り方が少し違う。麺を器に移す前にかき混ぜた卵を入れて具を生み出す。そして最後にネギを盛れば見た目がちょっと豪華なラーメンの出来上がり! というわけで俺特製うまかっちゃん完成。テーブルに出されるラーメンを待つ弟に出す。弟は美味しそうに食べるが、『そろそろ飽きそうだよなぁ』っと文句をこぼした。酷い。お兄ちゃん、頑張ったのに!


「肉が食いたいぜ兄貴」

「それはノーチャン」


先程から『ワンチャン』や『ノーチャン』と言っているがもちろん『One Chanse』の略だ。『チャンスあるよ!』『できる可能性あるよ!』という意味がある。その逆の意味が『ノーチャン』というわけだ。もともとは麻雀用語だったらしい。

弟は明日の朝までまともに立つことができないようだし、シャワーは明日の朝で構わないだろう。トイレは…まぁ頑張れ。

特にすることもないので、このまま就寝することにする。


「じゃあ寝るけんね」

「ん、やすみー」


敷いた布団に入り込み、明日に備えて眠りについた。


#


そう言えば自己紹介が遅れてしまった。どうも、兄の小倉(こくら) 竹志(たけし)だ。弟は世志(よし)という。兄弟揃ってあまりカッコよくない名前だが俺は結構気に入っている。世志は嫌がっているな。

さて、この世界の日常の一端を見てもらったところで説明を始めようじゃないか。

まずここは《フクオカ》。世界最大軍事力を誇る最強国なのは言うまでもない。

いつから最強なのかと聞かれれば()()()()と答えるが、どれくらい強いっと尋ねられたならば自信を持って答えられる。


———他国と雲泥の差を生み出す程、世界最強っと。


では、どうやって《フクオカ》はこれほどの力をつけたのか?それは———【軍学生強化制度】があるからだ。

学生を軍の隊員のように教育し、戦場に送り出す。《フクオカ》の全()()()だけに課せられる義務だ。この制度が成立してから《フクオカ》は軍事力を大きく向上した。

当然普通なら国民に反対される制度だ。学生に銃を持たせるなど今の時代では考えられない。しかし、当時の《フクオカ》の国民は反対する者は多くなかった。

恐怖政治が引かれていたという一つの理由もあるが、一番は『生存率1〇〇%』というありえない数字を公表されてしまったからだ。

どんな紛争地域に軍学生が送られようとも、必ず死者は出なかった。今現在でも、戦争に行った軍学生の死亡者数は0だ。戦死者は未だに出ていない。

その数字のせいで誰も異論を唱える術を無くし、抗議することができなかった。もう今となっては例え戦争に子どもが行こうが、誰も文句の言葉を言う人はいない。もっとも、反対した者はどうなってしまうのか言うまでもないが。

死亡者数なし。それは軍学生が圧倒的な力を所持している証明であり、《フクオカ》が最強の国であることを他国に知らしめていた。


———《フクオカ》が最強としていられるのはこの軍学生、高校生である少年少女たちが最強を握っているからだ。


その最強が通う学校だが、《フクオカ》には五つの高校しか学校が存在しない。小学校や中学校、大学は数多くあるが高校だけは例外だ。

高校にはそれぞれ特色があり、自分に合った高校を選ぶ。無論、高校受験に失敗した者は落ち、生き残った強者だけが入学を許される。

生き残った者はそこで三年間、軍学生として厳しい訓練や戦争の地へと赴いたり、《フクオカ》の平和を守る為に戦う。卒業後は自由になり、自分の好きな職業を選ぶ権利や大学に進学したり、勝ち組になることが約束される。


そんな弱肉強食で怖い世の中、ウチの弟の世志はピカピカの高校一年生。無事高校に合格して行くことができたのだが、危険な学校だということを知っている兄としては不安な気持ちで一杯だ。頑張って勝ち組になれることを祈るばかり。


そして現在———俺は()()()()()()となった。


小さい頃、豚骨ラーメンは全国的にあると勘違いしていた時期がありました。ショックでした。



文才には自身はありませんが、頑張りますのでよろしくお願いします。ご感想やご意見、アドバイス等をお待ちしております。

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