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三柱が一柱さんと和食

〜〜〜イースラ国ギルド〜〜〜


「あ、ミリィちゃんいたいた。んん?取り込み中かな?」


「あれは...貴族ですか。何やらもめているようですが...」




「この国の勇者が殺害された今、Sランクのあなたに勇者となってもらいたい。」


「...だから、嫌。」


「おまえならば誰も文句は言わない!この国の旗印となれ!」


「...しつこい。」


状況は把握した。とりあえず貴族さんには帰ってもらおうか。


「悪いけど、ミリィちゃんは僕達が先に約束してるんだよね。今日のところは帰ってくれる?」


「何だ貴様は!今大事な話をしてるんだ、すっこんでろ!」


...えぇ?口悪すぎでしょ。


「俺はこの国の3柱が1柱、ルーヴル家次期当主、クレシアン=ミーツ=ルーヴルだ!平民風情が気安く視界に入るな!」


おぉ貴族。初めて見たよ。やたら豪奢な服を着て私兵らしき奴らを10余人引き連れている。さっきの態度を鑑みると親の威を借りているダメ息子、という印象を受けるが。


「へぇ、自分とこに勇者候補のミリィちゃんを引き込んでおきたいって?てか勇者って召喚された人じゃなくてもいいんだ。」


「召喚された勇者の能力が強大というだけで、そこに意味は特に無いんですよ。」


エルシアが横から教えてくれる。まぁ確かにミリィちゃんは万能だからなぁ。勇者にも引けを取らないかも。


「でもさぁ、ミリィちゃん本人が嫌だって言ってるんだし、帰れよ。」


「...レイ、口調怖くなってる。」


「こんな奴らに敬意を払う必要も無いしね。帰らないなら無理やりにでも帰らせるよ?」


「貴様、誰に向かって!この方はイースラ国3柱が「もう聞いたし。取り巻きその1は黙ってろよ。」


「な、なっ!?平民が何を!」


「平民平民うるっさいなぁ。文句があるならかかって来なよ。全員まとめておいで。なんなら次期当主さんもどうぞどうぞ。返り討ちにしてあげる。」


「レイさん...ストレス溜まってました?」


「まぁねぇ。せっかくの予定をこんな奴らに邪魔されたんじゃ腹も立つさ。さっさと帰ってもらおう。」


「黙って聞いてやっていたらでかい口たたきやがって!お望み通りやってやるよ。お前達、死なない程度に嬲ってやれ!」


「はははっ!悪く思うなよ小僧!」


「ふはは!全員這いつくばらせてやる!」


「...レイ、怒ってる。」


「邪魔されたのが相当腹立たしかったんですね...」


〜〜〜ギルド前広場〜〜〜

敵は12人と1人。12人はサーベルを抜いており、1人、つまりルーヴルは魔法具らしき杖を持っているが手出しするつもりはなさそうだ。おおかた取り巻き12人だけで片が付くとでも思っているのだろう。


「甘いなぁ、温いなぁ。大事なのは量より質だよ。【縮地】」


「なっ!?消えた!」


「どこへ行ったあの小僧!」


「【縮地】【宙蹴り】んでもって隙ありっと。」


「ぐぅっ!」

「がっ!」

「いぎっ!?」


まぁそんな感じで12人全員の後頭部や顎を鞘で殴ってまわる。腕痛めたくないから手加減はしているが、それでもかなりの速度で急所を殴られているのだ。全員が地に伏した。


「なんだと!...貴様、なかなか腕が立つな。どうだ?ミリィとそこの女性と一緒に我が元へこないか?何不自由ない暮らしを約束しよう。もっともそこの女性とミリィとは会うことは叶わないこととなるが、他の女をあてがってやる。」


「ふぅん。ミリィちゃんとエルシアに何するつもりか知らないけどさ、そんな要求呑むとでも思った?」


「思うさ。来い!ヒュドラ!」


「あれは!召喚魔法陣!?」


「...まずい。あの杖はルーヴル家の家宝のやつ。ヒュドラ召喚はルーヴル家の代名詞。」


「ヒュドラって強いの?」


三首の竜だっけ、確か。


「Aランクの魔物、その中でも上位に属する厄災の竜。それがヒュドラだ!こいつに勝てるなどと思うなよ?三つの首を同時に落とさなければこいつは何度でも蘇る!」


「なんだよそれ。【コンティニュー】の足元にも及ばないな。ミリィちゃんお願い。」


「...らじゃー。余裕ないから一つだけ。【ディアスラッシュ】」


今にも召喚された竜がこちらへと口を開けて迫っている。それを視線の中央に捉え、居合の構え。ディアスラッシュにより強化された斬撃を放つ。


「三つに当てるのは難しいから根元を狙おう。【鎌鼬】」


ずぐっ。なんともグロテスクな音を立てて風の刃が首を裂く。そしてその巨体が地に倒れこむ、その前に魔法陣の中へと消え去った。


(あれぇ、ちょっと危なかったかも?綺麗に切れてなかった。)


ディアスラッシュ込みでも耐えうる敵もいずれ出てきそうだ。やはり強い武器が欲しいな。


「な...な..ぁぁ?!ヒュドラ!おい!」


「早く帰れよ。それとも他に何か手がある?」


「ひ、ひぃ!覚えてやがれ!」


そう言うと脱兎の如く走り去る。取り巻きを置いて。


「あぁ、どーしよ、こいつら。」


「その方達はギルドの方でお預かりさせて頂きます。...それよりも、ルーヴル家次期当主相手にあの立ち振る舞い...大丈夫なんですか?」


お、ギルドの受付してた女の人だ。


「あんなの小物でしょ。それに明日、この国出るしね。」


「そうですか...ギルド内での諍いでしたのに介入できず申し訳ございません。」


そう言って頭を下げる受付嬢。むしろこちらが迷惑を掛けたような気がするし、謝られるとどうしていいやら。


「こちらこそお騒がせしました。それじゃ僕達はそろそろいきます。」


「はい。お気をつけて。」


「それじゃ行こうか。エルシアさん、ミリィちゃん。まずはご飯かな?」


「...お腹空いた。」


「そろそろいい時間ですし、お昼にしましょう。」


「それじゃ、どこかお店に入ろう。」


そう言って歩き出す。と、ミリィが左の手を握ってきた。


「...せっかくだから、手、繋ごう。」


「ちょ!ミリィ!」


「...エルシアも。はい。」


そう言って僕の右手を指差すミリィちゃん。

これは、こういうことかな?空いている右手でエルシアさんの手を掴む。


「せっかくの機会なんだし、仲良く手繋いで行こう。あ、嫌ならいいんだけど...」


「い、嫌だなんてそんな!...分かりました。これでいきましょう。」


「...両手に花。」


「そうだねぇ。幸せ者だね、僕。」


道行く人々からの嫉妬の視線を浴びながら僕達はのんびりと歩く。


「お、こことかどうかな?」


レイが視線を向けたのは落ち着いた雰囲気のお食事処。いかにも和食が出てきそうな装いだが、この世界にも和食はあるのだろうか。


「いいですね。賛成です。」


「...お腹空いた。」


ミリィちゃんが途中から無言だと思ったら我慢していたようだ。聞くと、みんなで食べるのを楽しみにしていて朝ご飯を抜いてきたんだとか。


「お邪魔しまーす。」


「いらっしゃいませ。3名様ですねー。ご案内いたします。」


僕達は奥の座敷へと通される。内装もしっかり和風で、メニューは、


「さんまの塩焼き、お茶漬け、お吸い物...あぁ、和風だ、日本だ...」


「レイさんなんだかしんみりしてます...」


「いやぁ、ちょっとね...よし、僕は決まったよ。」


「私も決まりました。ミリィは?」


「...もうちょっと。」


ミリィちゃん、食い入るようにメニューを睨みつけている。メニューを見ながら何かを指折り数え、ようやく顔を上げた。


「...決まった。」


「あいよっと。すいませーん!」


「はーい。」


「サンマの塩焼きとお吸い物一つ。」


「私は、季節の野菜の天ぷら盛り合わせをお一つ。」


「...あたしは、ざるそば五つとサンマの塩焼き三つ、お吸い物三つ。」


...多いな。

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