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勇者の力

この世界の通貨は円ではありませんが、翻訳魔法により円でも支障がないようにレイの脳内で自動調整されています。

「勇者ってのはなぁ、全員が何かしら固有の能力を授かってるんだよ。例えばさっき殺したこいつは【バーサーク】つって筋力増加系だったな。指先が掠めただけでそこの肉持ってかれたからな。他のはぐれ勇者、全部で5人だったか?まぁそいつらもぶっ壊れチート持ちだったよ。」


だかな、とグロアは己を指差し、


「残念ながら俺の力、【コンティニュー】の前には為す術も無く死んでいったよ。俺の生命が途絶えてから10秒以内に魔法陣が自動構築されて元通りってな。てめえがいくら俺を裂こうがその度に俺は復活する。誰にも俺を止めることは出来ねぇよ。」


...まずい。勇者の力がここまでだったとは。しかも目の前の男の能力はその中でも群を抜いている。


「レイさん!ここは一旦引きましょう!ここ

にいても目的は果たせません!」


悔しいけどそうするべきなのだろう。エルシアの元まで戻り、転移魔法に身を委ねる。


「おぉ、詠唱無しの転移魔法か。おまえもなかなかぶっ壊れてんなぁ。」


呑気にもそう呟く彼を睨みつけながら、僕達は逃げた。



〜〜〜エルシアの家〜〜〜


「...どーすればいいのさあんな能力。文字通り不死身じゃん...」


「対策としては、何処かへ閉じ込めてしまうのが良いかもしれません。攻撃を単純な剣撃と【リバースペイン】に頼っている様なら私の転移で牢屋にでも入れてしまえば抜け出せないはずです。」


「...そーすると、グロキアが黙ってないと思う。勇者の存在を抜きにしてもあの国がダントツで軍事力トップだし。」


「あの勇者殺すよりは、国をぶっ潰した方が楽な気がする...」


なんせ殺せないのだ。【コンティニュー】に何かしらの条件でもあればいいのだが...


「あの能力について調べられないかな?ある条件下では発動しないだとか、そーゆーのがあればなんとかなりそうなんだけど。」


「...他の勇者に聞いてみるとか。」


「はぐれ勇者が皆彼に屠られたのなら、生き残っている勇者は彼を含めて3人。その全員が国の元で行動しているはずです。その勇者達と話をするのは色々と厳しいものがあるかと...」


勇者とはその国の力の象徴。いわば国王より支持される存在だ。うぅむ、参ったな。


「ちなみに勇者達の情報とかってある?」


「...彼の情報は殆ど無い。勇者としての能力すら知らなかった。他の2人のはそこそこ聞いたことがある。」


ミリィが勇者達について知っていることを教えてくれる。


「...まず、西側の国セルディスの勇者から。名前はエイラ・クルォースト。能力は【マテリアライズ】。あらゆる物を大気を圧縮して一瞬で作るとかなんとか。作った物は不可視で、巨大な大砲をたくさん並べて撃ったりしてた。難点は、脆いこと。脆いと言っても岩なんかよりは硬いけど。」


見えないのは厄介だな。壁とか作られたら勝手に音速でぶつかって死にそうだ。僕が。


「...もう1人、東側の国イスタルの勇者。名前はレイラ・クルォースト。能力は【クローズドタイム】。対象とした非生物の時間を止めるらしい。」


でたよ時間停止。生物は対象外らしいからそこまで警戒しなくてもいいか。それより、


「...名前、めっちゃ似てない?」


まさかの1文字違いである。これではまるで...


「あぁ、彼女達は双子の姉妹だそうですよ。同じ世界から、しかも姉妹で召喚されるなんて奇跡的ですね。」


「それにしても、彼女達はどうして国に従っているの?身内が同じ世界に来ているなら一緒に居たいとか思わない?」


国に従うということは行動の自由を奪われることになる。ましてや勇者どうしが出会うことなど国が許さないだろう。それなのになぜ彼女達ははぐれ勇者とならずに国に従うのか。


「...確かに、不自然。」


「言われてみると気になりますね。それも含めて聞いてみたいところですが...」


勇者に会うにはどうすればいいのだろうか...


「...セルディスの勇者となら、話すことが出来るかも。あの国には借りがあるし。」


「ミリィちゃん...中学生くらいの見た目なのに恐ろしい子!」


「...中学生?ってなに?」


「あぁ、なんでもないよ。それにしても国に借りを作るってどういう状況でそんなことになったの?」


「...たまたまセルディスに居た時にAランクの魔物が近くにいて、それを倒すのを手伝ってくれって言われた。全体回復、強化から前線で幻惑まで色々やった。」


ミリィちゃんまじ万能。


「...そんな訳だから、無下にされることはないと思う。」


「じゃあ今度はセルディスにレッツゴー!だね。」


「流石に他国まで転移するのは無理ですので、船旅になりそうですね。1週間程かかると思われます。」


「それじゃ、港に転移かな?」


「どうせなら快適に過ごして欲しいですし、ギルドで荒稼ぎしてお金を貯めてから行きませんか?」


「...あたし達なら、1番高額なクエストから受けて行っても問題無くこなせる。」


なんせ全員がAランク以上なのだ。バランスは悪いけど。


「それじゃ、荒稼ぎしますか!」



〜〜〜イースラ国ギルド〜〜〜


「うぉっ、なんだおまえらか。いきなり目の前に転移されるとびっくりするわ。」


「アルヴァンさん、もう体は大丈夫?」


「心配要らねぇよ。寝て起きたらすっかり治った。それよりダンジョンはどうだった?なんか手に入ったか?」


あー、アルヴァンさんと別れたのはダンジョンに行く前だったか。勇者騒ぎの所為でやたら時間が経った様に感じるなぁ。


「ダンジョンの成果はまずまずです。武器こそ手に入りませんでしたが有用なスキルブックを一つ見つけました。」


「...今はセルディスへ良い船で行くためにお金を稼ぎに。」


「セルディス?あぁ、確か明後日にでっかい船が出るんだったな。それにしても何しに行くんだよ?」


「えーと、勇者に話を聞きに行こうかなって思いまして。と言うのもーー」


僕はアルヴァンさんに先程の出来事を伝える。


「...なんだよそりゃ。勇者にしてもちょっとおかしいだろうがよ。まさに化け物だな。」


グロアの能力【コンティニュー】。いずれはあれを破らなければならないだろうが、今は攻略の糸口すら掴めない。


「つーか、はぐれ勇者が皆殺しにされてたってんならエルシアの計画はどうなるんだ?」


「...それなんですよね。国に従っている勇者をどーにかして引き抜けたら...」


そう言って頭を抱えるエルシア。彼女とてそれが困難であることくらい分かっているのだろう。


「まぁここでうだうだしてても仕方ないしさ、とにかくクエスト見てみようよ。えーと...おぉ、これすごいな。達成報酬120万円か。」


「...それだけあれば、3人分の旅費も軽く賄える。どんなクエスト?...火山龍の討伐...イグニスが出たの?」


「荒稼ぎするにはちょうど良いですね。あれは堅いですが動きが遅いので、鎌鼬さえ通れば楽に終わります。」


「...ディアスラッシュもあるし。大丈夫。」


「それじゃこれで。すいませーん!このクエスト受けたいんですけどー。」


「...龍討伐ってそんなあっさりしたもんだっけか。相変わらず凄まじいな、お前らは。」


「あなたも来ますか?万が一のために戦力は多いに越したことはないですし。」


「いや、俺はこれから別の依頼だ。それに万が一も何も、お前らが危なくなることなんてそうはねぇだろ。それこそ勇者でも出てこない限りはな。」


「...あの勇者だって、いつかは倒す。」


「そのためにもまずは勇者に会いに行かないとですね。」


「クエスト受けてきたよー。エルシアさん、転移で行ける?」


「勿論です。それでは行きますよ。」


「気をつけろよー。いらん怪我すんじゃねぇぞ?」


「...心配無用。行ってきます。」



龍討伐かぁ。楽しみだなぁ。





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