試験の結果とステータス
ガキィィィン!
「っっ!」
(嘘だろ...【鎌鼬】が素手で弾かれた...?)
アルヴァンは、不可視の斬撃に合わせて腕を振るいそれを防いだ。
「おぉっ!?あっぶねー。風の斬撃ってとこか?さっきので土埃が舞ってなけりゃ、もろに喰らってたなぁ。」
そう言い、彼は自らの腕を掲げて見せる。
(なるほど。土埃のせいで見えてしまったのか...)
「俺は全身硬化してある。勿論土魔法で、だ。魔術師がタイマン張る時には近接対策することぐらい常識だぜ?」
(まずい。あれが防がれた以上彼にダメージを与えることは...)
いや、一つだけある。土魔法でコーティングしているのなら、突破口はーーー
「うぉぉぉ!」
レイは抜き身の剣でアルヴァンに斬りかかる。彼はそれを先ほどのように腕を振るい、岩石ばりの腕によって剣は半ばから真っ二つに折れた。
「残念だったな。悪いが試験はこれで...っ!」
レイは剣を捨て【縮地】でアルヴァンの背後へ回り、がら空きの後頭部へと【音速を超えた掌底】を叩き込む。
「ぐぅぁっ!」
岩に斬撃が効かずとも、内へと衝撃を流す掌底ならば。ましてやそれを無防備な後頭部へと叩き込まれたならば。
音速の衝撃に耐えることなど人の身には不可能だろう。アルヴァンは激しく脳を揺さぶられ、意識を失う。急いで治癒魔法師数名が駆けつけてきた。
「ふぅ...これは極力使わない方がいいよなぁ。」
レイは〈骨が砕けた右腕〉を抑えつつ、そう独り言ちた。
「いやぁ、治癒魔法ってすごいんだなぁ。」
レイはエルシアの治癒魔法によって完治した右腕をさすりながら、ほへー、と感心する。
「...エルシアの治癒魔法は一級品。それに私の【治癒の調べ】を重複させたら完治に1時間もかからない。」
(元いた世界では考えられないな。多分骨ぐっちゃぐちゃになってただろうに、今では違和感なく動くや。)
「もう、心配したんですよ!...それにしてもほんとに勝っちゃうとは...」
だから言ったでしょ、とでもいいたげな目でエルシアを見るミリィ。
「うっ...そーですよ。レイさんの実力を取り違えていましたよ。でもふつー、魔法で防御を高めた相手に素手で殴りかかりますか!?」
「はは、ごめんごめん。【鎌鼬】が通用しない時点であぁするしかなくてさ。...ってあれは...」
レイの視界には、エルシア達の後ろからこちらへ歩いてくるアルヴァンの姿が映っていた。
(えぇ...?どんだけ頑丈にできてるのさ...)
まさか1時間で目を覚ますとは。確実に脳震盪は起こっていたはずなのだが。
「おう、さっきはやってくれたな、レイ!まさか負けちまうとは思ってもみなかったぜ。それでだ、おまえをAランクにするとのギルドからのお達し、伝えに来てやったぜ。」
んん?Aランク?
「あれ、確か試験に合格したらBランクって話じゃ?」
「あぁ、前例がないので失念してましたがBランクからAランクへの昇級試験は前衛職ならあなたを倒すことでしたね。Aランク昇級の条件も満たしています。」
「そーゆーこった。流石、あんたらの推薦ってだけあって半端ねぇな。戦闘に関してはぎこちない部分が目立ったが、なんだあの速さ。目で追うのにも一苦労なレベルだ。」
「私はもはや見えないんですが...」
「...あたしは見えるし反応もできるよ。止める術がないけど。」
「でも【鎌鼬】が効かない相手全員を殴って回るわけにもいかないんだよなぁ...ほかの攻撃手段が欲しい所だけど...」
「実際に戦ってみて思ったんだがよ、剣の切れ味抜群ならおまえ無敵じゃねぇか?スパッと切れれば腕に負担もかかんねぇしよ。」
「となるとダンジョンですか...近場だと〈クラディス地下遺跡〉ですね。あそこは確か10層目のガーディアンが手強くて探索が一時中断されているそうですが。」
「...あたし達ならよゆう。良い武器ドロップするといいね。」
なんだか話の内容が察せれる。ほんとにゲーム仕様だなぁ...
「えっと、強い敵倒して良い武器貰っちゃおー。って話?」
「流石レイさん。理解が早いです。」
(いや、理解が早いとかじゃなくてこれは知ってる展開なんだよな...)
「とりあえずレイさんは私の短剣を持っててください。多少リーチは短くなりますけど。
」
まぁ積極的に接近戦をするわけでもないし、基本【鎌鼬】でやっていくつもりだから特に問題はない。
「それじゃ、そのダンジョンに行こうか。アルヴァンさんも来てくれる?」
「いや、悪いんだが俺はパスだ。まだ若干ふらつくんでな。」
「そりゃそうか。なら3人で行くかな。二人ともそれでいい?」
「勿論です。レイさんは今現在パーティで唯一のアタッカーですから。」
(治癒魔法師のエルシアに琴使いのミリィ。それに僕かぁ。バランス悪いけど個々のスペックが高すぎてなんとかなっちゃうなこれ。)
なんせAランク2人にSランクが1人である。早くもこの国最高峰のパーティとなってしまったのではなかろうか。
「それじゃ、クラディス地下遺跡へと案内しますね。」
「あ、ちょっと待って。レベルアップしてるから振り分けちゃう。」
先ほどのアルヴァンとの戦闘後、レイは例の電子音を耳にしていた。
「【ステータス】」
【ステータス】LV.11
NAME:レイ=スーリャ
VIT:200 STR:18 INT:0 DFE:12
MDF:10 MDF:0 AGI:349
残り21
習得済みスキル
縮地・鎌鼬
よぅし、全部AGEにっと......あれ?
「おかしいな....AGEに1しか振れない...」
「...もしかして、350が上限?」
「そもそもそんなにポイントある人なんてこれまでいませんでしたし、分かりませんが...もしかしたら上限なんですかね...」
(なぬ。まぁよく考えたらこれ以上速くなってもね...)
「あっ。STRに振ればあの剣使えるんじゃない?」
あの剣とは、エルシアがレイのために準備していた黒い大剣である。
「レイさんのステータスだと、扱うのにあと30ほど、【鎌鼬】をだそうとするならば...そうですね、100は欲しいかと思います。」
(あんなに重い剣でも【鎌鼬】を出せるくらい速く振れるのか...ステータスってすごいな。)
あと100ならいずれはなんとかなる値だ。これからはSTRへ振ることにした。
「ん?」
AGEに振りきって、さぁSTRに振ろう、と思ったらステータス画面に変化が。
【ステータス】LV.11
NAME:レイ=スーリャ
VIT:200 STR:18 INT:0 DFE:12
MDF:10 MDF:0 AGI:350
残り20
習得済みスキル
縮地・鎌鼬・宙蹴り
獲得称号
縦横無尽速
(スキル【宙蹴り】を習得)
ふむ、カンストボーナスみたいなものかな?
試してみると、おぉ、一度の跳躍で2回まで空間を蹴って移動できる。これは便利だ。
「な、なんですかそれ!」
「...宙蹴り...神話の英雄が使ってたよーな、そんなスキル。多分実際に習得したのはあなただけだと思う。」
ミリィが意外と博識だ。にしてもこれはいい。立体的な戦闘が可能となった。
【ステータス】LV.11
NAME:レイ=スーリャ
VIT:200 STR:38 INT:0 DFE:12
MDF:10 MDF:0 AGI:350
残り0
習得済みスキル
縮地・鎌鼬・宙蹴り
獲得称号
縦横無尽速