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試験官との1対1

〜〜〜イースラ国中央ギルド〜〜〜



「おぉ、でっかいな。」


「ここは、この国の中でも最大規模を誇るギルドですから。Sランクの琴使いもこのギルドに在籍しているんですよ。」


ちなみにこの国はイースラと言うらしい。

にしても琴使い...味方のサポート職かな?


「ランクってSが最高?」


「ええ。ですが条件が厳しすぎて、世界でも20人、この国には琴使いの彼女しかいないんですよ。」


へー。なんか興味あるなぁ。







「頼むって!あんたを当てにしてヴォルカノ討伐なんて依頼受けたのに、そのあんたに断られたら破棄するしかなくなるんだよ!」


「...君達が勝手に当てにしてただけでしょ。あたしには関係ないし。」


「そんな冷たいこと言うなよ!ここで破棄することになれば違約金払えなくてランク格下げ喰らっちまう!」


「...自業自得。」


「あぁぁぁ!てめぇだってソロでは何も出来ない “琴使い” じゃねぇか!おとなしく着いてくりゃいいんだよ!Sだからってお高く止まりやがって!」


〜ガンディ達、またやってるよ。〜

〜Sランクのミリィちゃんの恩恵に大の大人が毎度毎度群がって、恥ずかしいと思わないのかよ...〜


(へぇ。あれが例のSランクか。見た感じ女子中学生くらい?すごいな。)


ミリィは、雪のような白髪を肩まで伸ばし、瞳は赤というウサギを彷彿とさせる愛らしい風貌をしていた。まぁ背が小さいのもその要因だろうが、(かなり大柄のガンディとやらの胸辺りにも届いていない。140ないかな?)なんと言うかその身に纏う雰囲気が、庇護欲を駆り立てる愛玩動物のそれである。よって、


「ちょぉぉっと待ったぁぁ!」


レイが乱入するのも仕方ない。



「さぁさぁミリィちゃん?こんな暑っ苦しい奴のことなんて放っといて僕達と行こう?」


(レイさん、なんでナンパみたいな物言いなんですか...)


「誰だてめぇ!俺らの話に首突っ込んでくんじゃねぇよ!」


「...あ、エルシアだ。君はエルシアのお友達?」


「あ、エルシアとお知り合い?なら話は早いね。僕はエルシアに召喚された者なんだけど、その話は聞いてる?」


「...うん、この間お話した時に言ってた。良かった、成功したんだね。」


「てめぇだよガキンチョ!シカトしてんじゃねーぞおらぁ!」


「久しぶりですね、ミリィ。早速ですが、彼は信頼のおける人物ですし、私としてもあなたが来てくれれば心強いです。」


「...エルシアが言ってた計画を始めるんでしょ。あたしもお手伝いしたいな。えっと、君は...そう、レイさんね。レイさん、あたしも連いて行っていい?」


「もちろん!じゃあ、早速だけど依頼を「てめぇふざけんじゃねぇよ!新入りの分際で俺様を無視するとは良い度胸だ!表出ろ、ここのルールを身体に叩き込んでやる!」


僕は君達には興味がないんだけどなぁ。


「...はぁ、しつこい奴だね。いいよ、君のお仲間もまとめて相手してあげるよ。その代わり負けたら2度と僕達に関わるな。」








〜〜〜ギルド前広場〜〜〜



「...てめぇなんぞタイマンでよゆーだっての。その澄ました顔、叩き潰してやる。」


ガンディはそう言うと肩に担いでいた無骨な大剣を斜め下へ向けて構える。それは随分と様になっていて、彼がこのギルドであの様な振る舞いをしていられるのはしっかりとした実力に裏付けられた物なのだろう。とはいえ、



(強ければ自分勝手にしていいとか、どっちがガキンチョだよまったく。さて、この世界で僕はどの程度やれるのか試金石になってもらおうか。)


「じゃあ、僕からいくよ。」


そう言うとレイは剣を腰だめに構え、居合の体制をとる。そして、


「はっ!」


一筋の風の刃が、音速を超えて振るわれたレイの剣筋をなぞるように放たれる。それにガンディが反応出来るはずもなく。



彼の大剣は柄から先が地に落ちていた。


「なんだと!?ガキ、なんて剣持ってやがる!」


ガンディはレイの思惑通り、自分の武器を切断したのがレイの魔法剣の性能であると勘違いしている。これならば行く先で鎌鼬を使おうが容易くタネは暴かれないだろう、と一安心する。


「どうする?武器はダメになっちゃったけど、まだやる?」


「武器の性能に頼ってるくせして偉そーにしてんじゃねぇよ!それにこの距離ならてめぇが再度抜刀するより先に俺様の拳がてめぇの顔面ぶち抜くぜ?」


ほう、流石に戦況をちゃんと理解できているようだ。確かにこの距離なら鞘に収める隙にガンディの手が僕に届いて終わりだろう。


まぁ、僕が剣の性能に頼っているだけの“ただのガキ”であれば、だが。


「うん。残念でしたー。【縮地】」


「がっ!?...テレポート...?」


後頭部を柄で強打されたガンディはその場に崩れ落ちる。意識こそあるものの、力が入らないようだ。


「ふぅ、悪いね。勢いのまま殴ったから加減が出来なかったよ。」


縮地により目視できぬ速さでガンディの背後へと回り込んだレイは、勢いそのまま反転し、柄で思い切り後頭部を殴りつけた。それでもガンディの意識があるのは、レイのSTRの低さによるものか、はたまたガンディが想像以上に丈夫だったのか。


「まぁ、これで分かったでしょ?君らがまとめてかかってこようが僕を捉える事はできないよ。さっさとそいつ連れて失せて?」


「く、くそっ!」「バケモンめ!」


ふぅ、どうやら僕の力はこの世界で十分に通用するようだ。面倒ごとを片付け、エルシア達の元へと戻ろうと身体を反転させたその瞬間、頭の中に《ぽーん》と電子音のような音が3回、連続で鳴り響いた。そしてレイの体が淡い光に包まれ、数秒でそれは収まった。


「これはもしかして...レベルアップ的なやつかな?」


「その通りです。ステータス画面をお確かめになってください。」


エルシアが僕の考えが正しかったことを教えてくれる。ふむ、【ステータス】。



【ステータス】 LV.4


 NAME:レイ=スーリャ


 VIT:200 STR:18 INT:0 DFE:12

 MDF:10 MDF:0 AGI:340

 残り9


習得済みスキル

縮地・鎌鼬



レベルが3上がり4になっている。3レベル上がって残りポイントが9ということは、1上がるごとに3ポイント獲得と考えていいだろう。それにしても、


(鎌鼬がスキルになってる...)


どうやらこの世界に僕のあれは【スキル】として認識されたようだ。


よし、ポイントを振り分けてっと。


「さて、クエスト受けたいんだけどギルドに登録とかしないとかな?」


「そうですね。初めて登録した場合は普通、Eランクスタートですが、試験を合格することによって一気にBランクまで上げることができます。まぁその試験を受けるにはAランク以上の方の紹介が必要になりますが、私もAランクですしSランクのミリィだっていますから、そこは心配入りませんね。」


「へぇ、それは楽でいいね。その試験ってのは僕でも大丈夫?」


この大丈夫?というのは、この世界についての知識がないレイでも合格の目があるのか?という意味での大丈夫?である。


「...それなら、試験形式は決まって試験官との1vs1。試験官は全員Aランクだけど、勝つ必要はなくて実力を認めてもらえば晴れてBランク。でも、判定はかなり厳しいって聞いた。」


異世界召喚を成功させたエルシアもAランクなのを考えると、かなりの実力であろうことは間違いない。だが、




「Aランクに勝てなきゃ、勇者達を従えることなんて出来やしないだろ?」






勝って試験官に認めさせればいい。






〜〜試験会場〜〜


会場は鉄棒や砂場のない運動場のような平面地形で、視界を遮るようなものは何一つない。そしてそこに1人の男が待ち構えていた。


「あなたが試験官?」


見た感じ、歳は20ほどか。がっちりとした体つきをしており、背もかなり高い。レイが元いた世界でも珍しくはない茶色。



「おぉ、遅かったじゃねぇか。おまえがA.Sランク両名から推薦受けてきたってやつだろ?久々に楽しめそうだ。」


そして彼は自らを親指で指し示し、


「俺はアルヴァン。察しの通り、ここでおまえの力を試させてもらうぞ。ルールは1対1であること、それとアイテムの使用厳禁だ。俺がいいと言うまで続ける。まぁその前にくたばっちまう輩がほとんどだが、おまえはそこいらの有象無象とは違うってところを見せてくれや。」


そう言ってアルヴァンは左足を半歩下げて半身の構えを取り、右腕を真っ直ぐレイへと向ける。これはもしや、


「いくぜ!ロックバレット!」


かなりのスピードで鋭利な岩の破片がレイに向かって飛来する。


「魔法か!」


レイは人外級のAGEによる驚異的な動体視力、反射神経によってそれを回避する。そしてアルヴァンの姿を確認すべく視線を前へ向けると、彼は右腕をレイの頭上へとかざしており、


「ロックプレス。死んでくれるなよ?」


その腕が示す先に、大きな像ほどの巨岩が。


(魔法って詠唱とか要らないのかよ!)


実際は詠唱に数秒から数十秒かけるのだが、アルヴァンは土属性への親和性がずば抜けて高く、ある程度の魔法なら詠唱を破棄することが可能なのだ。


頭上から迫る巨岩をなんとか躱して、レイは未だに自分を値踏みするような目で眺めているアルヴァンを視界の中央に捉え、居合の構えを取る。


「おぉ?」


狙うはアルヴァンの脇腹。あそこならすぐに止血すれば命の危険はないだろう。


全神経を集中、呼吸すら忘れ、必殺の透明刃を繰り出す。


「【鎌鼬】!」







〜〜〜試験会場前〜〜〜



「...彼、合格できると思う?」


「正直、予想できませんね...レイさんのステータスが独特すぎて、あまりに未知数ですし。攻撃力が無いのでは、と思っていたら【鎌鼬】とか言うとんでもない技を編み出したり...」


あれを防ぐことなど可能なのか。エルシアはそんなことまで思い始めた。が、隣にいるミリィなら凌いでしまいそうだ、とも思える。支援型とはいえSランクというのはとんでもない力を有しているのだ。しかし件の彼女は、


「...彼なら合格すると思う。彼が負ける所なんて想像できない。なんでか分からないけど、そう思える何かが彼にはある。」


...いつの間にレイはこんなにミリィの信頼を得ていたのだろうか。


















【ステータス】LV.4


NAME:レイ=スーリャ


 VIT:200 STR:18 INT:0 DFE:12

 MDF:10 MDF:0 AGI:349

 残り0


習得済みスキル

縮地・鎌鼬


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