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早とちり 黒歴史

〜〜〜


「いやぁ、二人して同じ日に死にかけるだなんて前の世界では考えらんないよねぇ。」


「日本は平和だったからね。こんなファンタジックな世界じゃなくてもこれくらい危険な国とかはあったかも分からないよ。」


「戦争やら紛争してたら、そりゃ危険だろなぁ。...あ、そういえば雪音はこっちの世界についてどこまで知ってるの?国同士の友好関係とか、その辺。」


この国には国が7つある。イースラは立地的にも中心に位置しており、レイ達からしてみれば都合がいい。周り皆敵にならなければ、ではあるが。


「えーと、イースラはね、貿易の中継役として交流はあるけど特に特別友好を結んだ国はないね。って言うのは、昔グロキアに喧嘩売ったとかで敬遠されてる感じらしいよ。」


「わぁ、グロキアって昔から武力大国として幅を利かせてたんだよね。よく今までイースラ国が侵略されなかったもんだよ。」


「それが謎なんだよねぇ。さっさと乗っ取っちゃえば貿易の利益でぼろ儲けなのに。」


「まぁまた今度王様に会うことがあれば聞いてみるかな。あ、雪音もーー魔王も味方だって言っておかないと。」


「あ...」


突如雪音の表情に影が差す。


「...それなんだけどね、私は『魔王』で零は『勇者』。その事実は私の意思に関係なく零を...殺しちゃいそう。」


突如、雪音の元に大剣が2振り顕現する。


「ほんとは零が私を庇ってくれた時だってそのまま背中に剣を突き立てそうになるのを必死で堪えてた。それが本当に自分の望むことだったみたいに、ごく自然に体が動いちゃう。」


メパカだって、わざわざ『勇者』『魔王』と分けたのだ。それが機能しないのは本人の望むところではなく、そうならないためにそれなりの対策を施すのが当たり前だ。そしてそれが精神系の魔法かなにか知らないが、雪音がレイを殺しかねない程度には強制力のある『なにか』なのだろう。









本当に、腹立たしい。









「せっかく会えた。二度と会えないと思っていたのに実際こうして出会えたのは奇跡で、このチャンスは二度と離さない。『そんなくだらない事情』で僕から離れようとするのは絶対に許さないから。」


「くだらなく、ないよ。私にとってそれは死活問題。だからーー」






「君は馬鹿だ。ほんとに愚かだよ。僕を殺しちゃいそうだから僕から離れるーーーいや、雪音なら自殺するくらいは言いそうだね。当人である僕が大丈夫だって言ってるんだから大丈夫なんだよ。そもそも雪音の手で生涯を終えるならそれはそれでーーー」


「ちょ!待って待って!誰もそんなこと言ってないし!」








「...うん?」







「...つまり、この首輪さえあれば万事解決だと。」


「......うん。」



『吸魔と守護の首輪』

この首輪を対象の首輪へ装着している時、対象及び使用者に以下の効果を与える

・対象の魔力のほぼ全てを吸収、使用者へと供給し続ける

・使用者にスペル【隔絶障壁】を付与する


続いてステータス画面を開き、スペルとやらの内容を確認する。


スペル【隔絶障壁】

魔力を流し続ける事によって維持可能な障壁を張る。耐久度は魔力量に依存する


「えーと...私の魔力、多くないとは言っても一般人と比べると破格な訳で。24時間365日休みなしに【隔絶障壁】張り続けててもそれなりのものが張れる上にかなりの耐久度が期待できちゃう。まぁ一度割られたら暫くは張れないけど...零?」


「馬鹿で愚かなのは僕だったかー...うわ恥ずかしい。黒歴史確定だなぁ。えーと、さっきまでの僕は何を口走っていたんだろうね。雪音の手で殺されるならーーとか、重たすぎるでしょうよ。そんなつもり微塵もなかった雪音からすればお笑いものーーいやドン引きされてもおかしくないや。」


レイの瞳から光が消えた。照明はついているはずなのにその双眼には何も映っていない。


「まぁ...確かに恥ずかしいかなぁさっきのは...早とちりしちゃったね、零。で、でも!私はそんな零も大好きだよ!」


雪音も必死の慰めを試みるがーー


「うんうん。ありがと。」


「だめだ、黒歴史力が強すぎる...」


ーーレイの心には何も届かない。





〜〜〜



「ほう、そんな事情があろうとはな。ところでそのスペルとは不可視なのか?」


「まぁね、今も雪音の魔力で張ってるけど見えないし、ついでに物に当たったりもしない。多分このスペルが危険だと認識した攻撃やら魔法だけ防ぐんだろうね。」


「まぁそんな感じ。ていうか魔力吸われすぎてふらふらする...」


「今の貴方なら容易く屠ることができますね。まぁレイさんに免じて見逃してやりますが。」


「...エルシア、めっ。」


「とっ、ところでその首輪はどこで手に入れた物なんでしょうか...はっ!要らぬ問いかけをしてしまい、もっ、申し訳ございません!」


...レイラはこれでもだいぶ慣れたほうだろう。いきなり気絶しなかった時点で大きな成長と言える。


「これ?勿論自作だよ。魔力を電子に見立てて組んでみたら案外上手くいっちゃって。」


「...魔王の思考は凡人とはまた違うものなのだろう。」


「雪音、昔から頭良かったしなぁ。」


「あ、でもそれレイと私の間でしか使えないよ。人によって魔力回路が違う...っていうか私は魔王だからともかく零は地球人だからそもそも魔力なんてないし。」


「勇者は物理で殴っとけってかぁ。まぁ勇者の人数考えたら魔王優遇するのは間違ってないけど。」


「とにかく、これで私がレイの寝首をかくことは不可能かな。【隔絶障壁】を突破するのは今の私には厳しいよ。」


「じゃあーー今度こそ僕は君を離さない。...異論は認めない。問題、ないよね?」


「もちろん!そしていつか絶対に2人で帰る!」


「そのためにも、メパカを倒せるくらい強くならないと。あいつは是が非でもグロアを最強に仕立て上げようとしているけど、阻止してやる。悪魔の思い通りには絶対にさせない。」


「......」


「...エルシア、どうかした?」


「い、いえ。別に何もありませんよ。」


「えーと、とりあえずイースラに戻らない?グロキア以外の五国を併合して戦力増長を図りたいなぁって。」


「とは言ってもイースラとグロキアは近いからな...このまま戻っては厄介なことになりかねん。」


「なら、南の方にある3つの国を征服しちゃおう。」


「うーん...遠いからなぁ。船旅は飽きたし...」


「問題ないよ、ほら。」


雪音が示した先には一つの扉。


「魔力がほとんどないからここにしか繋げなかったけど、ちゃんと《トピア》に繋がってるよ。」


「トピア...平和の国とも言われる、あのリゾート国か。どうする?レイ。」


「いいんじゃないかな。南ならグロキアの真反対にあるし、邪魔されにくいでしょ。」


「なら決まり。あ、この扉くぐる時ちょっとくらくらするから気をつけてねー。」


かくして一行はトピアへと歩を進めた。



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