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世界征服

魔王城を背に大剣を構える雪音。対するは転移魔法を無詠唱で行使、異世界召喚も一人で成す程の天才魔道士が一人、Sランカーが一人に人外の能力を秘めた勇者が2人。世界最高峰の戦力をかき集めたかのようなメンバーで魔王に挑む。しかしーー


「なんのために零を連れ戻しに来たのかなんて知らないけど」


身の丈程はある大剣を軽々と振るう。


「零は自分の意思でここに来た。来てくれた」


能力【大食豪傑】の恩恵により腕力が飛躍的

に上昇しているミリィが先頭に立ち、レイラの能力により破壊不能オブジェクトと化した琴で一太刀を受け止めるーーことができず、体ごと後方へと吹き飛ばされ、直線上にいたレイラを巻き込んで数十メートルほどバウンドし、止まった。


「彼は君達じゃなくて私を選んだ」


やや距離を置き、自らの能力【マテリアライズ】による大砲を発射していくエイラ。圧縮した空気を解放、固めたままの空気弾を無数に飛ばしていく。しかし見えないはずのーー見えていたとしてもその速度から回避することは容易ではないそれをーー鈍重な装備であるはずの大剣で防ぎきる。そしてそのままエイラへと迫り、勢いのまま吹き飛ばす。


「これ以上、誰にも邪魔させない」


大規模な攻撃魔法のためと思しき詠唱を行っていたエルシア。気づいた時には皆倒れ伏し、眼前に迫るは刃をこの身に突き立てんとする魔王ーー

目をつむり、来る痛みに身をすくめることしか出来ないエルシア。だが、いくら待てども痛みはやってこない。状況が理解できない脳の要望に答え、恐る恐る目を開けるとそこには傷ひとつない、既に見慣れた後ろ姿。


「っ!零、寝てないと!」

「レイさん!」


「もう大丈夫。あの薬凄いねぇ。まぁできれば二度とお世話にはなりたくないけど。」


大丈夫であるはずがない。あの薬を服用してからまだ一時間も経過しておらず、本来ならば今もまだ痛みのあまり昏睡していてもおかしくない。寝て覚めれば再び痛みにより意識を失う。それを繰り返すほどに強烈な痛みがレイの全身を蝕んでいる最中のはずなのにーー


「【コネクト】!」


詠唱を省略、後方に扉を出現させる雪音。この魔法に関しては節約しようがなく、魔力をごっそり持っていかれる。


「零の為を思うならついて来るな!決着はまたの機会に持ち越す!」


風が吹けばそのまま倒れてしまいそうなほどに弱りきったレイの体を強引にかかえあげ、魔法で出現させた扉へと背中から突っ込む雪音。

悔しげにそれを睨みつけながらも、レイの顔色から深刻な状況であることを察したしたエルシアはその場で歯噛みする。今レイの状況を把握しているのは雪音しかおらず、ここで足掻いたところで好転しないことも理解していた。








「えっと、ここは?」


似たような状況を2度体験しているレイは、驚かない。エルシアに呼び出された際によった白い部屋、メパカとの対話の際に訪れた黒い部屋。同じように部屋の色が紫の部屋にレイ達はいた。


「さっきの魔法、【コネクト】は扉を呼び出す為の物。対となる扉が置いてある所へ移動できる。扉の耐久力が低いのが玉に瑕だけどね。あのままあそこにいたら零の体が心配だったから。ほら寝てて」


雪音の視線をたどるとそこにはベッドが。見渡してみると冷蔵庫やキッチン、風呂にトイレもあるようだ。


「一応魔王城を建てるまではここで暮らしていたから、最低限の生活は保証できるよ。それより、体痛いでしょ。無理するからだよばーか」


「はは、ごめんね。でも、雪音にエルシアさん達を殺して欲しくなかったから」


そう言った直後、雪音の眼の奥の方が剣呑な光を浮かべたーーように見えた。


「...でも、彼女達は零の力を利用しようとしてる。そんなの、許せない」


「利用だなんて、そんな。皆いい人達だよ。感謝こそあれ、許す許さないの話には決してならない」


語彙を強めてそう言い放つレイ。


「今でも僕は彼女達のーーエルシアさんの目的のために動くつもりだよ。支配による世界平和。雪音の目的だった世界征服にだって合致してたし」


今となっては世界征服など雪音にとってなんの意味も持たないが。


「彼女達のために零がなにかするっていうのは...かなり気に食わないけど仕方ない。零がそうするのなら私も着いていくよ」


二度とはなさないと言わんばかりに零の手を強く強く握り締める。そして、そのままレイの手をひきベッドに寝かせる。


「ちょっとだけ出てくるね。すぐ...3時間もあれば戻って来るから」


そう言うと出したままにしてあった【コネクト】による扉から外へと出る。






「まだいたの。しつこいね」

「レイさんを返してください!」


話にならない、とばかりに雪音は肩をすくめて見せる。

先程ダウンさせた全員が再び戦闘態勢に入っている。だが雪音は彼女達に構うつもりはない。


「悪いんだけど、君達にかまってあげる時間はないんだよね。はやく『世界征服』して零の元へ戻らないと」


そう言うと同時、雪音の周囲に七つの扉が出現する。そしてポケットから取り出した水色の液体が入った瓶をあおる。


「...ふぅ。七つセットにしちゃったから呼び出す時の魔力量が凄いことになってるんだよねぇ」


「これは...」


「これはね、この世界にある七つの国にそれぞれ繋がっていて、今から順番に乗っ取りに行くんだよ。零が手をくださずとも私がやる。あ、ひとつ要らないや」


雪音は右腕を掲げ、七つのうちの一つだけ消した。


「イースラは中心国となるんだから、乗っ取らなくていいもんね。さ、まずは厄介そうな...えぇと、グロキアから潰しちゃおう」


七つのうちの一つに向かって歩き出す雪音。そこへエイラによる制止の声が掛かる。


「まて、魔王雪音。いくら貴方といえどもグロキアをくだすのは些か厳しいと思うぞ」


雪音からしてみれば有象無象の雑兵など、頭数には入っていない。なので実際グロアとの一対一となる。そしてたかが勇者の1人や2人など自分の敵ではない、と高を括っていた。現に今仕方2人の勇者をくだしていたのもその要因となったようだ。


「ぬるすぎるよこんなの。こんな世界さっさと征服しちゃって、零に褒めてもらうんだ」


全てはレイののため。レイの喜ぶ姿を見たいがため。しなければならないことを早急に終わらせて零と共に歩みたいがために。







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