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レイラ王女様

「帰ると言っても、転移はまたしばらく使えませんよ。」


「そうだよ。だから、はい。」


そう言ってレイは自らの体を指し示す。


「またですか...すごく恥ずかしいんですけどこれ...」


「...割と快適。よいしょっ。」


「っとと。勢いよく来るなぁミリィちゃん。さ、エルシアさんも。」


「うぅ...お願いします...」



〜〜〜セルディス国〜〜〜


「......水を...水分をぐだざい...」


「はい、どうぞ。...疲労はミリィの【調べ】で何とかできても喉の渇きには抗えませんね。考えてみれば当然のことですが。」


「...能力でなんとかならなかった?」


エルシアから受け取った水を一息に飲み干すと、ようやくレイの顔に生気が戻る。


「っけほっけほっ。...いやぁ、長時間あの速度で走るとなると、眼球保護してあげないと。ドライアイなんてレベルの問題じゃないよ。」


つまり、能力を眼球保護に割いていたせいでその他の問題は我慢しなければいけなかったと。


「でしたら、ゴーグルのようなものが必要ですね。この国で良さそうなものを見繕いましょう。」


「...それなら、魔道具でいい。」


「魔道具ですか...あれは値が張りますから、また稼がないと。」


「まぁまずは勇者と合流しないと。どこにいるの?」


「...あれ。」


「ん?...わぉ。」


ミリィが指さした方向へと視線を向けると、優雅に空中を歩くようにしてこちらへと向かってくる人影が2つ。【マテリアライズ】で作った空気の道だろうか。となると、歩くように、ではなくて実際に歩いているのか。




「レイ、よくやってくれた。どんな手を使ったのか知らんが、まさかグロキアの勇者を利用してしまうとはな。」


グロアが勝手にやったことなので、そんなつもりはなかったのだが。


「やぁ、エイラさん。無事でなにより。それで、そっちの娘がレイラさん?」


エイラの影に隠れるようにしてこちらを伺っている、エイラそっくりの女性。違いを上げるならば、エイラが赤い短髪なのに対してレイラはやや長めの桃髪であること。あとは、エイラとまるで反対の気弱そうなオーラ。


「あぁ。我が愛しの妹だよ。ほら、大丈夫。この人達は悪い人じゃないよ。」


おずおずと、視線もあちらこちらへと彷徨わせながらエイラの横に出てくると、手を組んだり口元まで持っていったり、こちらへ向けようとして止めたり。唇を開いたかと思えば慌てて閉じる。そんなことを繰り返すこと数十秒。


「えーと...大丈夫?」


思わず心配して声をかけると、驚いたようにこちらへ視線を向けてくる。そして、レイの視線とかちあうーーーと。


ぼっ。と音が聞こえてくるようなぐらい、一瞬で顔を真っ赤に染める。先程までの挙動不審さはますます加速していき、終には足元すら覚束無くなってきている。そしてーー


「きゅう...」


「え?」


悲鳴ともとれるような声を発し、そのまま仰向けに倒れ込みそうになるのをエイラが抱き留める。


「えー....っと?」


「...すまんな。宿屋をとって、落ち着いて話をしよう。」




〜〜〜



「レイラは所謂箱入り娘と言う奴でな。あちらの世界では親族以外、顔を見ることさえ許されていなかった。」


「そんなのまるで、囚われのお姫様だね。」


なんだっけか。ラプンツェル?違うか。


「実際、“あちらの世界”では時期王女だ。我らクルォースト家長女として、な。」


次期王女。あちらの世界ではさぞ騒ぎになっていることだろう。それよりもーー


「ちょっと踏み入った話になるけど...聞いていい?」


「私に答えられる類のことなら、なんでも答えるぞ。」


許可も取れたところで、ずっと疑問に思っていた案件を尋ねる。




「次期王女っていうのなら、普通は長女がなるものなんじゃないの?」


「まぁ、そうだな。」


「なら、君じゃないの?次期王女。」


「確かに、私とレイラは双子の姉妹だ。だが、その、な。」


やけに言葉を濁すエイラ。踏み込みすぎたか。


「あー...ごめん。流石に深入りしすぎたかな。」


「いや、な。そういうわけではなくて、えーと...私は、向いていないんだよ、王女なんかに。」


「あぁ、確かにイメージ出来ないねぇ。君が事務雑事をこなせるとは到底思えない。」


「随分と辛辣だな。まぁその通りだが。そんな訳で、父様は私を早々に見限りレイラの教育に力を注いだ。あ、別に私が蔑ろにされたということはないぞ。父様は分け隔てなく接してくれたよ。だから、自分が情けなく感じたりはしたものだけど。」



「でもさ、レイラちゃんのあの感じ、王女が務まるとは...」


超人見知りなあの性格、あれで民の前に立つとか無理だろう。だが。


「ふふ、我が愛しの妹を見くびってくれるなよ?あれはな、正真正銘王女の器だ。」


エイラ以外の三人が首を傾げていると、むくり。とベッドに伏していたレイラが起き上がる。


「あ、おはよ。」


「えーと、また気を失ったりしないですよね?」


「...大丈夫?」


「ふふふ、まぁ見ていろ。」


そう言ってレイ達を手で制し、レイラの元へ跪いた。そして、


「おはよう、『レイラ王女』。」


エイラが不可解なキーワードをレイラへ投げかける。するとーー


「ふむ、おはようございます。...そちらの方たちは?」


「やぁ、はじめまして...でいいか。僕は勇者をやっている、レイ。彼女は僕をこの世界へと誘ったエルシアさんに、そっちの娘がSランクのミリィちゃん。」


「御紹介ありがとうございます。そうですか、私とお姉様を解放してくださった殿方と言うのは貴方とことだったんですね。なんとお礼を申し上げればよろしいのやら...」


えらい急変したな。


「ふふん。これがレイラの『王女様モード』さ。」


まぁ暫くすると戻るんだけど、と彼女は続けた。



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