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僕のすべきこと

「...えっと、天国?」


レイが目を覚まし、最初にその視界に飛び込んで来たのは辺り一面の花畑である。橙色を中心に明るい色が散りばめられており、その面積はサッカーコート大くらいはありそうだ。


「ここはヴェルヒァルーテでも有数の魔力溜まりです。異世界より召喚するとなれば場所にもこだわらないといけなくて。」


ふと、後ろから聞き覚えのある声が。振り向くと、


「おぉぉ、可愛い!」


「ふわっ!可愛いだなんてそんな...た 確かにちゃんとおめかしとかはしてますけどっ...」


目の前で謙遜する女性、声から判断するに彼女がエルシアなのだろう。見た感じはレイと同い年くらいで、身長はやや低く140〜150ほど、髪は紺色、瞳は黒、顔は庇護欲を沸き立たせるような可愛らしさと凛とした美しさが見事に同居している。


「ところで、君が僕をここへ呼んだエルシアさん?」


あまり褒められ慣れていないのか、今だに真っ赤にした顔を伏せたままの彼女に尋ねる。


「そ、そうですよ。私がエルシアです。私の無茶な願いに応じてくださったあなたにはいくら感謝してもし足りないくらいです。本当にありがとうございます。」


そう言って深々と頭を下げるエルシア。レイとしても自分を召喚したのがこんな美少女だったのか、と逆に感謝したいくらいである。ところで、


「えーと、それでエルシアさん。僕をこの、ゔぇる...この世界に召喚したのはどうして?

何か理由があるんでしょ?」


「ヴェルヒァルーテです。今のあなたには再構築の際に【自動翻訳】が組み込まれていますが、それでも言い慣れない発音となっているかもしれません。」


(自動翻訳かぁ。まぁ言葉が通じないとやっぱ辛いよね。今思えば異世界人のエルシアさんとも普通に会話してたし。)


それで、本題ですが...とエルシアは続ける。


「この世界では、私たち人間とその敵である魔族との対立が起きています。」


(ふぅん、なんだかありがちだなぁ。)


「それで?僕は人間達のために魔族と戦えばいいのかな?」


「いえ、問題はそこではなく、魔族に対抗するために召喚された勇者にあります。」


(勇者!やっぱり異世界の定番だよね!...あれ、召喚って確か...)


「んん?召喚されたのって僕意外にもいるんだ。もしかして僕と同じ世界から?」


「うーん。もしかしたら可能性はあるかもしれませんが、世界というのは無数にありますから。」


ふぅむ。同郷にはあまり期待しないほうが良さそうだ。


「まぁいいや。それでその勇者の何が問題なの?まさか魔族側についちゃったとか?」


僕のように強制的に召喚されたのなら従わなくても無理はないのかもしれない。勇者には勇者の生活があったわけだし。


「えっとですね、まずこの世界には大きく分けて8つの国があります。その国々がそれぞれ1人ずつ勇者召喚に成功しております。召喚された勇者達は基本的に一芸に秀でており、それらは全て戦闘に有用な物となっております。」


僕にそういうのがないのは国単位で召喚したのとエルシア個人で召喚したのとの差かな。ステータスがぶっ飛んでるのは僕個人の素質らしいし。


「勇者の力は強大で、魔族を制圧することも容易とされ、人々は勇者に期待を寄せていました。しかし身に余る力を得た勇者達の中には国の思惑を無視する者も多く、次第に国を離れて傍若無人な振る舞いを見せる勇者が...」


なるほど。つまりレイがここに呼ばれた理由は勇者となり魔族を討つのではなく。


「勇者を討つ...なかなか新鮮な立場だね!」


「いやその、実力行使になるとは思いますが討たれては私も困るんです...」


「ん?勇者が好き勝手してるから止めろって話じゃないの?」



「私が望むのは...レイさんにはぐれ勇者達を統率して貰い、国の意思をまとめ、魔族を押さえ込んで欲しいんです。」


ふむ。ようやく話が見えてきた。そもそも国々は対魔族として勇者を召喚したのではなく、自国の戦力強化のために召喚した。しかし勇者の一部は言うことを聞かずに独立。その勇者達を率いて1勢力を築き上げ、8つの国々も支配下に置く。そうして全勢力を一つにして国家間の不和及び魔族問題を解決してしまおう、と。


「おっけー。だいたい理解したよ。じゃあまず始めにどの勇者のとこに行く?」


「ほんとに話が早くて助かります。手始めに私達が今いるこの国、イースラの勇者を迎え入れたいと思います。ですがその前にレイさんの実力が未知数なので、ギルドへ行っていくつかクエストをこなして頂こうかと...」


(ギルド!クエスト!やっぱり異世界だったらそーゆーのがないとね!)


レイとて男の子。ギルドやクエストに対する憧れはそれなりにあるのだ。


「よっし!それじゃあギルドに向かおうか!...っと、その前に悪いんだけど武器を...。」


今のレイはいつも通りの学ランを着ているだけの丸腰である。ちなみに鞄が見当たらないが、持っていても役には立たないだろう、とあっさり切り捨てる。


「それでは、まずは私の家へ行きましょう。武器はありませんがスキルブックならそれなりに備えてありますので。」


(スキルブックか。まぁどんな物かは大体想像できるな。)


「よし。それじゃあまずはエルシアさんの家だね!」


「歩くと時間がかかるので、家に敷いてある陣まで転移します。私、これでもそれなりの魔術師なんですよっ。」


本来国単位で行う異世界召喚を個人で行ったことからしても、それは確かなのだろう。


「ようし、それじゃお願いねエルシアさん!


「それでは行きますね。お手を少々。」


エルシアがレイの手を取る。あぁ、柔らかいなぁ。とか考えていると視界が白んできた。そろそろ慣れてきたこの感覚。意識に影響はないようだ。次の瞬間、レイは浮遊感に包まれた。




レイの理解力半端ないです。

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