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「よぉ、イースラの新勇者さん。あの神さんに能力貰ったんだろ?ちょっくら戦り合おうぜぇ?」


「...エルシアさん、転移を。」


「だめです!ミリィが向こうに...」


「そーゆーこった。おいメパカ。」


『お呼びかなグランっち!』


「っ!誰ですか!?」


「...転生神か。神ともあろうものが、個人に肩入れするのってどーなのさ。」


メパカって名前だったのか。あの神様。


『まぁまぁそーお堅いこと言わずにさぁ。能力だって結局ただであげたじゃーん。』


「ぐだぐだお喋りしてんじゃねぇよ。こいつ預かっとけ。逃げらんねぇようにな。」


そう言って何もない空間にミリィを掴んだ腕を突き出すグラン。するとーー


「...うぁっ。」


『ほいほーい。ミリィちゃん別次元に隔離完了いたしましたぁ!解放条件は、グランの降参ねー。』


...こうなったらあの勇者を倒すしかない。現状無敵のあの勇者を。


「向こうに闘技場がある。かなり金がいるが、貸し切れるぞ。昼休みの間限定で。」


「...闘技場?観客がいるなら僕は闘えない。巻き添えが出ないように闘うのは無理だ。」


レイのメインスキル【鎌鼬】。その射程はおよそ50メートルはあるだろう。それを外してしまった場合は観客が裂ける。流石に無関係な市民を巻き込むわけにもいかない。だがグロアは気にした様子もなく、こう続けた。


「あん?だいじょーぶだいじょーぶ。使用中は術師が12人体制で防御壁を張ってる。その代わり借りるのにかなり金がかかるけどな。ま、今回は俺が出してやら。幸い金にゃ困んねー生活してるからよぉ。」


12人がかりの魔法の壁か。それならば安心しても良いだろう。


「わかった。その勝負、受けるよ。と言うか受けざるを得ないわけだけど。」


「おっし、さっさと行くぞ。っと、そーだそーだ。えるしあ?だったな。転移頼むわ。ほら、あのでっかい壁の中な。」


「......」


「おい、早くしろって。こっちにゃ人質がいるんだぜ?」


「エルシアさん、大丈夫。怪我なんてしないから。」


「でも、相手はあの勇者ですよ!?どうやったって勝てません!」


「おいおい、闘る前から泣き言かよ。勘弁して欲しいわぁ。」


「だから、大丈夫。策ならあるよ。それにミリィちゃんを助けないと。」


「策があるなんて一言も言ってなかったじゃないですか!」


「いや...まぁ、僕も【イレギュラー】について理解しきれてないからさ。そのうち言おうと思ってた。」


「レイさんが言ってくれないってことは、どうせ危ないことなんです!」


「いや、まぁ確かに危ないけどさ...」


なんとか説得しようとするも、中々頷いてはくれない。実際勝算はあるものの、賭けになる。さて、どうしたものか。すると、グロアが痺れを切らしてこう言った。


「あ〜 、もーいいわ。歩いて行くか。つかその転移で闘いに水差されちゃかなわんわな。おいメパカ。」


『はいはーい!ミリィちゃんと同じ所に隔離しまっす!』


「きゃっ!」


メパカがそう言うと、先ほどのように今度はエルシアが虚空へと呑まれていった。


「さぁ、これで気兼ねなく闘れるなぁ。」


「...ここで君を倒して、僕は望みを叶える。それができないようなら、僕にとってこの世界は『面白くない』からね。」


「はっ、やる気満々だねぇおい。そりゃ良いが、俺の【コンティニュー】は我ながら無敵だと思うぜ?しかも一撃で倒せなけりゃ【リバースペイン】で瀕死だ。その後俺は自殺でもすりゃぴっかぴかの新品そのもの。無理ゲーだわな、普通に考えて。」


「でもさ、痛いんでしょ?僕なら今頃気が狂ってるよきっと。コンティニューでごり押しクリアさせられる主人公さながらだね。」


「ん?何言ってんのかわかんねぇよ。つーか勝算とかあんの?」


勝算。それはつまり【コンティニュー】の突破方法は見いだせたのかということだ。そう問われて僕は、


「あるから闘うんだ。無かったら闘わない。」


自らが立てた『仮説』に賭けることに決めた。


「へぇ?おいメパカ、おまえがこいつにやった能力、そんな優秀なもんだったん?」


『んーとね...んー?僕が管理してた能力のうち、グランっち殺せるのは『あれ』だけだったはず...でも【イレギュラー】だしなぁ...案外何とでもなっちゃったりして?』


「そーかい...お前の能力がなんだか知らんが、せいぜい警戒はしとこうかね。」


...などと話をしながら歩いていると、目の前に大きな壁が。


「うっし、着いた。受付してくるから待ってな。」


「うん。」


世が世なら友達になれていたかもしれない、と不意に思ってしまった。争う気さえなければ普通に良い奴じゃないか、とも。先ほどまでの会話だけでかなり絆されてしまったようだ。今から殺す相手だというのに。


「うっし借りれた。そんじゃお前あっちから入場な。俺ぁ向こうからだ。」


「おぉ、本格的だね。それじゃ、また後で。」




〜〜〜



「さぁ!久方ぶりのゲスト試合だ!僭越ながら、私コルラが前説を務めさせていただくぜぇぇ!」


「完全に見世物じゃんかこれ...てか広いな。グロアが小さく見える。」


闘技場の西門から入場したレイと東門から入場したグロア。双方の距離はざっと40〜50メートルはありそうだ。普段は1対1に使う場ではないのだろう。


「軽く選手紹介ぃ!まずは、西門より出でし新勇者レイ!イースラ国が太鼓判を押すその実力や如何に!?」


勇者ってバレてるじゃん。勇者どうしが闘うのを見過ごして良いのか。


「そして!対するは大国グロキアの勇者、グランディグロアぁぁ!最強勇者とまで謳われる彼が期待の新勇者をも跳ね除けるのかぁぁ!?」


実況がうるさい。盛り上げるのが仕事なんだろうけど、気になって仕方がないな。


「集中、集中、集中しろ。これに勝てば全て上手くいくんだ。」


頭の中で手順を思い浮かべる。上手くいけばグロアを倒せるそれを。


「ーーそれではいきましょう!れでぃぃぃ......ふぁいっっ!」


今のが合図か。向こうを見やるとグロアが油断なく剣を構えてこちらへ向かってくる。減速せずに接触するためにはあの剣はかなり危険。触れてしまえば真っ二つだ。双方の距離が30メートルほどとなったところでレイが仕掛ける。


「【鎌鼬】」


狙うは剣を持つ右手首。そしてグロアは反応すること叶わずその右手首より先が地に落ちる。無論握っていた剣も。


そして、【鎌鼬】を放った直後にグロアへ向かって駆け出す。


「ぐっうぅ、まじで見えねぇよそれ。まぁいい。【リバースペイン】」


「いっ...たいなぁ...」


グロアが能力を使ったのだろう、自らの右手首が切断されているを感じる。だがその痛みを感じながらも走る速度は緩めない。想定内の出来事なのだから、覚悟はできていた。


そのまま剣を持たないグロアの左胸を左手で抉る。指が折れたのかかなり痛い。だが構わずそこにある臓器を握り潰す。そしてーー


「こふっ...ふっ...ひゅー...な..んで...」


なんで【コンティニュー】で左胸の臓器が再生しないのか。とでも言いたかったのだろう。事実コンティニューで“レイの手によって握られている潰れた臓器”以外は再生している。が、その臓器ーー心臓ーーは再生していないようだ。


「やっぱり【コンティニュー】は魔法陣からでる光を当てて再生していたんだね。」


『ん?どうして再生しないの?その光は全てを透過して使用者の全身に届くはずなんだけど...』


間に君の手があってもお構いなしに治るはず、と言うことなのだろう。本来ならば。


「そこで【イレギュラー】。自分にしか効果の影響を及ぼせないってのがなかなかきつい条件だけど、今回はこうすればなんとかなったよ。」






「[【コンティニュー】の光は全てを透過する]。ただし僕の体は透過できない。何故なら“例外”だから。」





『おぉぉ、よく考えたね。でもさ、そのまま殺しちゃっていいの?』


「え?」


『ヒント/人質の解放条件ってなんだっけー。さぁ、どうするどうするぅ?』




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