雨のち晴れ
初投稿ですので、お手柔らかにお願いします。
めちゃめちゃ短いです。
風邪を引いた。だから、寝ていた。しとしと。さわさわ。そういえば今日は雨の予報だった。歯医者の予約、取り消さなきゃ。人に迷惑かけることだけはしたくない。そういう性分なのだ。のっそりと這い出す。受話器ががちゃっと本体から剥がされる。指を動かすのも億劫になってきた。さっさと済ましたいのに、指は動き方を忘れてしまったようだ。
「はい、山下歯科です」
「予約してた広崎ですが、体調崩してしまっていけません」
我ながらひどい声だ。
「分かりました。お大事になさってください。体調戻られましたらまた、ご予約くださいね」
事務的な声だ。でも、涙が出てきた。熱で涙腺もおかしくなってしまったらしい。そういえば、頭の奥で鳴り響く音も心なしか大きくなってきた気がする。体温計って次は内科に連絡しなきゃ。ああ、もう、駄目だ。あとでもいいか。とりあえず寝よう。もうちょっとましになったら診療所に行こう。そして、布団に潜り込んだ。
ひやっと何かが当たる。部屋がうすぼんやりとしてるのは涙で目が霞んでるから。
「悪い。起こしたか?」
「ん、大丈夫。じゃないかも。」
額の冷たさは彼の手のひら。どうやらたまってた洗い物を片付けてくれたみたい。いっつも温かい彼の手のひら。彼だって仕事で疲れてるのに。早く休みたいだろうに。そして、風邪うつっちゃうかもしれないのに。ああ、まただ。目から溢れる。じわっと視界がかすむ。駄目だ。彼の顔がぼやけてきた。それでも、心配そうな顔をしていることがはっきり分かる。今、泣いちゃ駄目だ。なのに……。
「どうした。どこか痛いのか!?」
ふるふる。ただ、顔を横に振ることしかできなかった。声を出すと本当に泣いてしまいそうで。
「そうか。なら、隣に居てやるから寝ろ」
私は再び意識を手放した。
次に目を開けたとき、外は晴れていた。
いかがでしたか?
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