プロローグ
始めてしまいました…(オロオロ
はじめは暗い話ばっかりなので、つきあっていただけると幸いです…
「何故裏切った、弟よ。」
燃えさかる業火。炎々とした中、背の高い男が言う。
きらびやかな格好に整った顔立ち。一目で身分のあるものだとわかるだろう。何よりも頭に乗った冠が証である。しかし衣類は所々刀で切りつけた様に破れ、美しいであろう肌も血で汚れ、灰で煤けている。
「裏切る?何を言っているのだ兄王様よ。私が一度でも貴殿に傅いたことがあっただろうか、答えは否だ。」
方も男が答える。
こちらの男もまた兄王と似た美しい顔立ちをしているが、憎悪に染まったその瞳はいかなる人も寄せ付けないと物語っているようだ。右の手に握っている剣から血が滴り落ちている。
「俺は、前王…父上からお前のことを頼まれていた。どんな仕打ちを受けようとも見捨てるつもりはない。剣を下げなさい。こんなこと、するべきではない。」
「……そんな言葉で私が引き下がると思うか!!これは決して発作的なものではない。綿密な計画の元行われている。以前からくすぶっていた反王政派の者たちを煽ってやったのさ。」
炎が二人を取り囲んで、逃がさないとでもいうように轟々とと燃える。
この建物が崩れ落ちるのも時間の問題の様だ。
王が水面のように凪いだ瞳を、つうっと細め弟を睨んだ。
「何が目的だ、ディル。そんなことをすればお前のただじゃ済まないだろう。」
「目的?王座とでも言うと思ったか?純粋に貴殿が憎いだけだ。俺はお前が不幸になるならどんなことでもするだろう。」
「そんなことだけのために、国も巻き込んだというのか…!」
堪忍袋の緒が切れたとでも言うように、王は目を見開いて静かに怒った。
「貴様の血は根絶やしにする。あの女も逃がせたと思っているのだろう?裏で俺の手の者が捕まえているだろうよ。」
「……なんだと!!シアに手を出してみろ、ただじゃ済ませないぞ!!」
「やってみろよ。今のあんたには所詮何もできやしない。後世、狂王として語り継がれるのがあんたの定めさ。」
炎に犯された柱が轟音をたてて二人の間に崩れ落ちる。
熱風がぶわりと巻き起こり、髪や服を巻き上げるが二人にとってそんなことはどうでもいい様に、飽きずに互いをにらみつけている。熱さで額に脂汗が滲もうとも、一歩たりともそこから動かない。
「謀反の罪は、そうだな…お前のかわいがっている従者にでも被せよう。可哀想になぁ。主人のせいで家族全員罪人だ!妻は奴隷に、親はむち打ち、当の本人は打ち首ときた!!なんと滑稽なことよ!」
「貴様…!!」
「この状況じゃ、自慢の力も使えまい。無残に死んでゆくがいい!!」
「ふざけるな!!!!この国はどうなる!!革命が起きれば多くの民が路頭に迷う、他国にも狙われる!お前は何をやっているかわかっているのか!!」
楽しそうに笑っていた男、ディルの顔が一瞬にしてゆがんだ。
「この期に及んでまだ他人のことを気にするのか。そんなにも自分の命がどうでもいいと?」
「何を言っている、国を、民を守るのが王の責務だろう!」
「…その王の責務はこれから私が背負う。お前はもうお役ご免なんだよ。」
ディルは剣を握り直し、王に近づいた。腕を振り上げ、そうして―――。
血が迸る。煤けた肌に赤黒い滝が流れ、大理石の床に広がってゆく。
こつ、と膝をつき、痛みを感じる前に床に倒れ着く。
その一瞬が、事実三秒にも満たないにしても、一分一秒、長くゆっくりに思えた。
「これで二度と、その顔を見ることもないだろう。
狂王クーヴァニオン=ローヴェンラルグよ」
ディルは静かに立ち去った。
背には血だまりの中に兄王が横たわっている。目は開いたまま虚空を見つめ、静かに迫る死を感じていた。ついには炎が倒れ込む体にまで及ぶが、熱いはずの体はだんだんと冷たくなっていく。
「……けっして、やつのすきにはさせぬ……」
ゆっくりと瞼を下ろし、守ってやれなかったと、愛しい女を思って静かに息を引き取った。
新月の夜、革命の時。王宮での出来事である。
男二人とかむさくるしいなオイ。