嘘つきの苦戦
今回は優人視点です
「あらあら、この子ったら寝ちゃったの?」
「あ、はい。やっぱりまだ本調子じゃないみたいです」
こなっちゃんのお母さんが俺と彼女のためにお菓子をもってきてくれたらしい。カチャンとテーブルにそれらを置くとすやすやと彼女が寝ているベットへ近づく
「…なんだかね、小那都ったら最近、前にも増して感情表現が豊かになったの」
あのサラサラの髪を優しく撫でながらこなっちゃんのお母さんはふふっと笑った
「もともと素直な子だから、色々と空回りすることもあると思うけど……気長に待ってあげてちょうだいね?」
「えっ」
そう言って茶目っ気たっぷりに笑ったこの人には…なんだか色々と見透かされてそうだ。
「はい、いつまでだって待ちますよ。」
そう答えるととても嬉しそうに微笑んでくれた。
パタン…
彼女の母親が去ると再びこの部屋は静けさを
取り戻した。
「…。」
視線の先にはすぅすぅと落ち着いた寝息を立てる少女が一人。小柄な彼女は、もともと幼くみえるがこんな風に寝ているとさらに幼く見えるような気がした。
スルッ、とサラサラな彼女の髪に手を滑らせても一向に起きる気配がない。
…よく眠ってるなぁ
先ほどまで俺に抱きつかれてあんなに慌てていたのに、よっぽど眠くなったのか…それとも
「単に意識されてない…とかね」
まぁどうであれ風邪である彼女に無理をさせてしまった事には変わりない。悪かったなぁと少し反省をしながらも、頭を撫でる手は止まらない。さっきからずっと我慢してたし、やっぱりサラサラで気持ち良いし、それになんとなくだけれどこの子も気持ちよさそうにしてくれているし
普段は怒られたり逃げられてばっかりだからこんなに無防備なのも変な感じ
そんなことを思う。…しかし今日は、結局ちゃんと話ができないままこの家を後にすることになってしまいそうだ。…彼女はまた逃げるだろうか?
…だとしても、絶対に逃す気はないけどね
そう決心してそっと無防備な彼女の頬に唇を寄せる…頬ならセーフだよね、うん
「…本当に、好き、なんだけどなぁ」
自業自得ではあるが一向に信じてくれない彼女に苦笑する。冗談じゃないのに
そして、それじゃあ、と寝ている彼女に静かに挨拶をして俺はこの部屋を後にした。




