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若宮さんの憂鬱日記  作者: 咲野 音葉
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冗談?

なぜ…


「すみません。突然お邪魔してしまって」

「やだ、気にしなくていいのよぉ。それに、わざわざプリントを届けてくれたのにそのまま帰ってもらうなんて寂しいじゃない、お茶ぐらい飲んでいってちょうだい」


な…ぜ


「いえいえ、お構いなく。小那都さんにはいつも委員会で特に力になってもらってますし…様子を見るのは委員長として当たり前の事ですから」

「本当に優人くんはしっかりしてるわぁ…!うちの娘の為にわざわざ、ありがとうね」

「いえ、僕はなにも」


なんでっ


「じゃあ、今お茶もってくるので良かったらくつろいでいてくださいね」

「え、とお母さん。私一応病人…」

「はい、ありがとうございます。」

「え、えぇー…」


どうして!!この人が家に!!


パタン


「「……。」」


お母さん…なぜ娘の声に耳を傾けてくれなかったのですか


ていうか猫かぶりすぎじゃないっすかね!?!?


「具合はどう?」

「え?」


少しの沈黙のあと、構えていた私に浴びせられたのは案外普通の言葉だった


「あ、はい。もう多分熱もさがっていると思います…」

「多分て…ちゃんと計った?……ちょっとごめんね」

「え、わっ!」


ひやっと冷たい感触がおでこに当たる。…思わず目を閉じてしまった


「んー、確かに。なさそう…かな」

「いや、だからないですって」


耳に届く先輩の声が近い。…目を開けていなくて正解かもしれない


まだかまだかと手が離れるタイミングを待っているとそれに気づいたのか(みえないが)先輩がくすっと笑った


「こなっちゃん…チューするよ?」

「なんでっっ!!」

「あ、やっと目があった」


な…ばれてたのか、気まずくて目そらしてたこと。

私と目を合わせる事に成功した先輩はしてやったりという顔だ


「…なんですか」

「んーん?なにも?こうやって目閉じられてるとさ、キス待ってるように見えていい眺めだなーって」

「は!?」


な、なんだ本当にこの人!!この間からおかしい!確実に変だ!


「ぶはっ、冗談だよ冗談。そんなに口をパクパクさせなくても…っ、あー面白い」

「…。」


前言撤回、この人にまともな時なんか無かった。


はー、と一通り笑った先輩がもう一度私と目をあわせてくる。…私はじとっとした目で睨み返した。


「ねぇこなっちゃん、君はさ…俺から逃げようとしてたでしょ?」

「っ!」


突然の真面目な顔にドキッとする。…図星であったので余計にドキドキした


「そんな…こと、は」

「君は正直でいいねぇ。まぁさすがにこれで何もなかったように接しられても俺としてはさすがに心が折れるからこれでいいんだけどね」

「え…と」


まだ熱があるのだろうか。頭がぼやっとしてうまく考えられない…つまり、えーと


「この間のことは、夢ではなかったと」

「あはは!面白いこと言うんだねぇ」


デスヨネー!!!夢であったらどんなに良かったか…っ


「…あ、あの」

「まぁあれは冗談だって!冗談冗談」


…は?


またこの人は…と、見上げると驚くほどに、先輩の目は笑ってはいなかった。

スッと細められた目は、私を逃すまいとしているようで


「…冗談だったらさ、君は逃げないでいてくれるでしょう?」

「……せんぱ…」


一瞬。ぼやけた頭がその言葉を理解するまでのその一瞬、先輩によって私と先輩の距離は互いの体温が伝わるまでにつめられた。


「っっ!」

「あ、やっぱり少し熱っぽいかな、身体熱いよこなっちゃん」


ぎゅっと私の後頭部にまわっている手が締め付けてくる。

…あついって、それは貴方が突然私の上に覆いかぶさってきたせいですか!?

脳内でいくら文句を言おうとも、この人には全く伝わらない。されるがままに先輩の重みを受け止めていた。

…く、苦しい

上に乗られると(力加減はしているのだろうが)さすがに私も苦しいというか、それ以前にはやくこの格好自体をどうにかしたいといいますかっっ!!


「…っ、お、もいです先輩!どいてください」

「…うん」


うん、じゃない!!!!!!

駄目だ、全っ然人の話聞いてないこの人。ていうかこの間のあれは結局冗談だったの、そうじゃないの!?


「っ!」


突然視界が真っ暗になる。それは停電や、天気のせいなんかじゃなくて


「…先輩?」

「んー?」


先輩の手が、私の視界を塞いでいる。後頭部を抑える手とは反対の手で、私の視界を奪ったのだ。


「んー?じゃなくて、本当に何なんですか…この前の事といい、今日といい…」

「何って、いつも通りの事だよ。俺がしたい事をしているだけ」


…私の意見は完全に無視か


「…最近の先輩は、冗談が過ぎます。冗談なのかそうじゃないのか…わかってるのに迷う事があるんですよ。」

「…どっちだと思うの?」

「…え?」


ごめんごめん、といつものように返ってくるふざけた返事が、今日は聞こえない。


「君は、冗談だと思う?」

「…冗談、なんでしょう?」


じゃないと色々と可笑しいですよ。そうですよね優人先輩?


「…そうなんですよね?」

「…。」


視界が塞がれているため、先輩の表情を確認することもできない。抱きしめられているからその手をどかすこともできない。

ただ真っ暗な視界の中先輩の返事を待ったみたけれど、その答えはいつまでたっても返ってこなかった。


そしていつの間にか、私の意識は視界いっぱいに広がる深い闇へと吸い込まれていくように遠のいていきました。あぁやっぱり熱があるから眠いんだな、なんて考えながら




な、なんか重くなったような…

そういうの苦手な人ごめんなさい、この小説は基本シリアス?はありませんが今回はシリアスもどきでしたね。もうしばらくお付き合いください

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