後日談その1
「「お疲れ様でしたー!」」
かんぱーい!と各々手に持っているコップを高々とあげる
「よし、皆たくさん食えよー。ここは涼と俺のおごりだからな」
「えぇーそこは部長が全員分奢るんじゃないのー??」
「うるさい、俺の財布がそこまで潤ってないんだよ、2人しかいないんだからお前も道連れだ」
「えー、それなら上条くんも同い年じゃん」
「俺は君たちに頼まれた身だから良いんだよ」
得意げな優人先輩の顔をみて涼先輩はぶーっと口を尖らせる
「…え、ほ、本当に良いのかな、奢りって……ここ、焼肉だよ?」
「…いーんじゃない?奢ってくれるって言ってるんだし」
先輩に奢ってもらう、という未知の体験に落ち着かない私の横で楓くんは落ち着いた様子で飲み物を一口
そ、そういうものなのか…
少し緊張しながらも私も自分の分のオレンジジュースを一口。そんなぎこちない私をみて楓くんが一言
「そんなに慣れてないのか?」
「え!?」
「打ち上げ」
「…う、うん実ははじめてで」
と、ここで部長さんが、皆!!と声を出した
「今日の劇だが、お客さんにとても好評だった。なんと感想の手紙までもらった」
その声に、おぉー、と皆それぞれ感嘆の声をあげる。それを聞いた咲良部長がそれだけじゃないぞ、とにやっとして話を続ける
「この劇のおかげで演劇部に入りたいと言ってくれた中学生も結構いて、来年には部員も増えると思う!」
「わー!じゃあ女子部員もついにくるかもねー!!やった、女役やらなくて良いんだ!」
「あぁ、涼には本当に苦労をかけた…」
先輩方が涙ぐんでガシッと肩を組んでいるところでそっと楓くんに声をかける
「…涼先輩、今までそんなに女役ばっかりだったの?」
「…あぁ、というか出来るのが俺か先輩くらいだったからほぼ毎回交代でやってた」
そっか、それは確かに先輩の苦労も知ってるよねぇ。…ていうか
「え?!楓くん女の子の役やってたの!?」
「出来る人がいなかったんだよ!……身長とか、体格的に」
嫌そうに話す楓くんをみて私は、ほへーなんて感心してしまった。
いや、だってすごいよね!同性の役でも大変なのに異性の役なんて…
「うん、まぁ確かにかーわいいもんね、かえちゃんは」
「か!?ふっざけんなっ、ていうか頭撫でんな!あとかえちゃんってやめろ!」
「あははー照れてるーかーわいい」
「照れてねぇ!!」
はじめはあんなに怖いと思ってたのに今ではもうすっかり、可愛いとまで思っちゃうもんなー
うりうりーと頭を撫で続けていると、いつの間にか復活したのか部長さんが再び話し出した
「えーっと、話が逸れてすまない。なにが言いたいかというと、つまり、協力してくれた主役2人に感謝!ということだ」
「え!?」
突然振られた話に驚いてしまう。一気にみんなの視線が私と先輩向けられた
「ありがとう、若宮さん、上条!」
「え、えぇ?!咲良部長、私達全然…」
ていうか私全然…と続けようとすると部長の横に居た優人先輩が私をみてにっこり微笑んだ
「まぁ名コンビだったから、ね、こなっちゃん」
「は?!」
突然、ね☆と話を振られて私は思わずそんな声が出た
「あはは!冷たいなーこの前はあんなに素直だったのに」
「は?!なにいって…」
「えぇー!とうとう2人そういう関係になったの?!」
「なってません!!涼先輩食いつかないでください!!」
せっかく偶然にも先輩とは席が少し離れて、静かに楽しめると思ってたのに!
ムキになって返す私が面白いのか先輩はケラケラと楽しそうに笑っていた
くっそう、人をからかって遊んで!
悔しくてプイッとそっぽを向いた私に先輩はまだ楽しそうに笑って
「ごめんごめんってばこなっちゃーん機嫌直してよー」
「人をからかうのはやめてください!…っていうか抱きつくな!!!」
いつの間に移動したのやら気づけば先輩は後ろから私に乗っかっていた
…お、重い!
「せ…っ」
そろそろ本気で怒ろうとキッと後ろを向いたその時
「嫌がってますよ、放してやったらどうです?」
隣でお茶を飲んでいた楓くんが呆れた顔でそう言った
「なに?君には関係なくないかな?」
「隣で嫌がってるやつ見たら一言言いたくもなります」
「嫉妬?」
「は?!誰が」
あ、あのー…
いつの間にやら私を挟んで優人先輩と楓くんのバトルがはじまってしまった。…ていうかなに、この2人仲悪すぎない?!打ち上げだってまだはじまったばっかりだっていうのに最初からこんな雰囲気で…!
どうしよう、と咲良部長、委員長の方をバッとみると…え、なんで〝しょうがないなあ〟みたいなちょっと小さい子のケンカみるような目でみてるの!?え、なんで?
「あ、あの…」
そ、そんなに空気が悪くなってなかったのは有り難いけどはやいとここの2人を止めなきゃ…と前を向くと、にっこりと笑った涼先輩と目が合う
「…?」
大丈夫、と小さく言った涼先輩はサッと立ってこちらにくると
「えーい!」
ゴンッ
「「いっ?!」」
えええええ!?な、え、ゲンコツですか先輩!!
「こらぁ二人とも!ケンカはだめ!若宮ちゃん可愛くて大事なのはわかったから!」
「え、ちょ、先輩何言ってんですか」
私の声が聞こえたのか聞こえなかったのか、とにかく!と先輩がパンッと手を鳴らす
「間を取って若宮ちゃんはこっちが引き取らせていただきまーす!」
「は、え?ちょっっ」
えーい、とまたも可愛らしい声でひょいっと私を持ち上げた涼先輩はそのまま私を自分の席の近く…涼先輩と咲良部長の間に置いた
…ていうか涼先輩意外と怪力…?
「はいお終い!さ、食べよ食べよー!はい、咲良、田中、肉焼いて」
「…お、おう」
「は、はい」
「「…。」」
取り残された優人先輩と楓くんは無言。
そして私は思った
…涼先輩強っっ
「はい、若宮ちゃんお肉!」
「あ、ありがとう…ございます」
動揺する私に隣に居た咲良部長がこそっと耳打ち
「涼に任せておけばこういう時は大丈夫だ」
「…。」
あぁなるほどだからあんな顔して見守ってたんですね、と私は力なく笑って涼先輩にもらった肉を食べる…あ、美味しい
…ていうか席変えるだけでこんなに平和になるとは、うん、隣の隣は委員長だし、周りは頼もしい人達だし
ちらっと楓くんと優人先輩の方を見て、ふふんっと先輩にドヤ顔をしてやった
「…」
それに対して先輩は無言の笑み。い、今は安全だから怖くないもん!
「はいはーい上条くんもかえちゃんも!ケンカしないならお肉あげる!」
「…しません」
「よろしい!」
はいっと楓くんに肉を渡す涼先輩。
「はい、上条くんは?」
「はーいしませーん」
「よろしい!じゃあお肉ね!」
今度は先輩のお皿にお肉を乗っけた涼先輩。
先輩が…優人先輩が大人しく従うなんてっっ!!
…この瞬間、私の中で涼先輩最強説が立ったのでした
この後も涼先輩のおかげかこのポジションのおかげか安全に(ここ重要)楽しくはじめての打ち上げが行われました
あぁ、涼先輩に感謝
タイトルややこしくなってすいません!前回の後日談じゃないだろって思ってこっちの話にこのタイトルをつけさせていただきました!
もし混乱してしまった方がいたら本当に申し訳ありませんm(__)m




