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若宮さんの憂鬱日記  作者: 咲野 音葉
34/46

大きな子ども

「…25点。」


「ええぇ?!低っ!」


「当たり前だろ、台詞は覚えてるけど感情の込め方が甘い、それから動作ももっと周りに伝えるつもりでやれ。」


「おー、二人とももうすっかり仲良しだなぁ。なぁ、田中?」


「えぇ、一体なにがあったのやら。」


あのまま戻ってすぐ、楓くんと一緒に皆さんに謝罪してとりあえずは練習が再開出来る様になりました。で、肝心の私の演技をみてもらう、という所ですが。


「もう一度、同じ所から。…そんなんじゃいつまでたっても俺が入れない。」


「…はーい。」


まぁこの通り辛口の点数をいただきまして。楓くんとの絡み(ちなみに彼の役は私演じる姫の幼馴染で、その役も姫と色々とあるので中々二人で演じることも多いみたいです)が、上手くいかないのでこうして皆さんとは別に演技指導をしてもらっている所なのですが


…とりあえず厳しい!私がさっき大口を叩いたせいかもしれないけどとにかくスパルタだ。咲良部長が恋しい…。


「…あの、楓くん。」


「なんだよ?」


ずっと気になって演技に集中出来なそうなので聞いてみる


「私は合格ですかね?」


そう、彼との話、私が本気かどうかみてもらうというあれですよ。認めてもらえなかったら…えー…ほんとどうしよう


「…上手くはないな。いろんな意味でぎゃふんだ。」


「ゔ、」


楓くんがぎゃふんて言うとなんだか面白い…じゃなかった。えーと、これはつまり


「ふ、不合格?」


「別にやる気と姿勢は良いと思う、下手だけどな。」


「え、じゃあ、ご、合格?!」


「…。」


ひ、否定しないって事は良いのか!とりあえず合格か!!良かった…適当にやってるって思われなかったって事だね。


「おーい、月森つきもり!若宮くん!そろそろ遅いから帰るそうだ!」


「おー」


委員長の呼びかけに返事をする、楓くん…ん?月森


「月森…楓くん?」


「…なに?」


あぁ、ここにきてようやく知ったぞ?彼は月森くんていうのか、


「えーと…今まで苗字知らなくて…ごめん、月森くん、馴れ馴れしかったでしょ。」


「…別に、楓でいい。」


「え、いいの?」


まさか許可がおりるとは。嬉しいかもしれない、呼び慣れてきたしね


「えっと…私のことは」


「はーいこなっちゃん。暗くなったから良い子は帰るよー」


後ろから突然ガッと首に腕を回される(この人最近後ろから仕掛けてくるの多くないかね、ていうか扱いかなり雑じゃないですかね)そのまま引きずる様に連行。良い子って…私は小学生か。


「ちょ、先輩!首!首もげますって!」


「じゃあ俺暗いんでこなっちゃん送ります、お先失礼ー」


「おー、明日もよろしくなー」


「え、あ、お疲れ様でした!」


ちゃんとした挨拶も出来ないまま部屋から退出。ちょっと、コミュニケーションも大事なんですよ?わかってるんですかね??



小那都、優人退出後の部室。


「ねぇーあの二人本当に付き合ってないのー?」


「…涼はずっとそれだな。まぁ、上条も若宮さんも違うって言ってるしな。」


「部長、若宮くんが恥ずかしがっているだけでは?」


「田中まで…まぁ確かに上条はなぁ…うーん、」


「絶対若宮ちゃんの事大好きだよねぇ」


「…俺、あいつと会話してる時あの人に殺されるかと思いましたよ。」


こんな会話が繰り広げられていましたとさ。



と、その頃。先輩に怒涛の勢いで退出させられた私はと言うと


「……。」


「……。」


き、気まずいーーー!


何故に無言?!え、なんで、何かした?!


あの後靴に履き替える時には腕を離してもらえて、何故か先輩に無言で手を引かれて今にいたるわけですが。…正直、先輩を怒らせるような事はした覚えがありません、いやしてないはず


「えーと…先輩?」


「…なーに?」


いやああぁ!!なんか声のトーンが暗い!暗いよ?!


「なんか、今日色々濃い1日だったんで先輩と話すのが久しぶりに感じますね。」


え、なにいってんの私。いやあテンパってはいたよ?ていうか確かにね、先輩の存在は途中から空気になってたと思うけど今それ言う??


先輩のことだから


「なにーこなっちゃん、俺と話したかったの?」


とかいうに決まって


「ねぇ、こなっちゃん」


「はい?!」


あれ、声のトーン変わらないよ?そのまま?え?あれ?


「部長さんの事なんて呼んでる?」


「え…?咲良部長…です。」


「松田涼介は?」


「涼先輩。」


「田中くんは?」


「委員長。」


「あの生意気な月森 楓くんは?」


「…楓くん、です」


なにいってるんだこの人は?ていうか楓くんの印象悪いな!


「じゃあ…俺は?」


「…先輩、です。」


なんだなんだ?本当にどうしたんだ今日の先輩は。


「……せ、」


立ち止まってこちらを見た先輩は、なんだか少し寂しそうに笑って


そのまま顔を私の肩に乗っけてきた。


「えーと…?先輩ー?どうしたんですか?おーい…」


「小那都」


「…っ!」


耳元で突然先輩が名前を呼ぶので驚いた、ていうか今小那都って言った?


「俺は、優人だよ?」


「え」


耳元で聞こえる声がくすぐったくて身をよじってみるけど、まぁいつの間に掴んだのか腰に先輩の手があったので動けなかった…て、なにこの状況は!!


「…し、知ってますよ。」


「こなっちゃん全然呼んでくれない」


「え?…それは、えーと」


「全然話してないと思うなら話しかけにおいで、名前も約束したんだから呼んでくれないと…」


「え、先…輩?」


え、ちょっ、まっ、まった?!


「こうしちゃうからな☆」


「ひ、ひゃああぁぁあ?!は?!ちょっ、はなっ!!あは!あはははっ、くすぐったいですってば!」


突然先輩は腰にまわしてる方の手と反対の手でくすぐってきた。私くすぐりダメなんですって!!


「ちょっ!まっ!!こう、降参!降参です!!」


「ちゃんと呼ぶ??」


「呼びます!呼びますから!!!」


と、叫んだところでやっと解放された。…あぁ、喉が痛いぞ、体力全部もってかれた。


「…優人、先輩?」


「ん?なーに?」


本気で睨んでるのに相変わらずの笑顔で返される、くっそうもうなんなんだよ!本気で焦ったのに!!


「優人先輩は!人で遊びすぎですよ!いい加減怒りますからね!!」


「やだーこなっちゃんこーわーい」


あぁイラっとする、この人はまったくもう


「もういいです、帰りますよ」


「はいはい、じゃあ暗いから手を繋ごうか!」


と、離れたはずの手を半ば強引に掴んで先を歩く先輩。後ろから見ていてもなんだかご機嫌で、やっぱりさっきのは先輩のいつものからかいだったのだと疲労がさらに溜まる。


さっきは一瞬ドキドキしたけど…気のせいだなこれは



とりあえず帰ったらの栄養ドリンクを飲もうと思います。えぇ


一気にここまで浮かんだので書いてしまいました!上条めんどくせぇ!!ってなりますが、まぁあれです、タイトル通り大きな子どもなので楓くん同様生暖かな目をお願いします

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