捕まえましょう
部室を出ること、早5分
「はぁっ、はぁっ…あああもう!」
今だ楓くんに追いつけていません☆
…て、てへっ☆え、いやあのすいませんって!私足遅いんですよ!文化部なめないでください?!
「ま、参ったなぁ…。」
すぐ戻ろうと思ってたし、ていうか練習の途中だから早めに楓くんをみつけて…話を…うん、なに話そう。
特に何かあるわけじゃない、そもそも何か起こるほど彼とは話していない。
「なんで私がそんなに嫌いなのか聞けばいいのか…な?」
なんか物凄い勢いで嫌がられそうだけど…よ、よーし、とりあえず目的が見つかった!ていうかなんの理由もなくね、あんなけなされたんだとしたら私だって泣きますよ!ええ!!
まぁ目的が見つかったのは良いんだけど肝心のね、楓くんに追いつけないってね!ていうかどこまで行くんだよもおおおおおお!!
「楓くん!!あの…っ、かえ…っっ楓くん!!!ま…待って…くださっっ」
「………。」
止まってくれないいぃぃいい!ていうか話を聞こうともしていないいぃい?!
な、なんなんだこの人!ちょ、そろそろ息が…っっ!!
「…かえ…っう、っうわああ?!」
「っ?!」
息が切れてよろよろと走っていた足がもつれそのまま前へ倒れこむ。あ、摩擦が、痛い。
ビタンッと派手に転んだ音に驚いたのか目を丸くした楓くんが振り返る…あ、これはもしやチャンス
「…っ、もらったああ!」
「は?!」
急いで体勢を立て直して少し前にいる楓くんへ飛びかかる。当然予想していなかった楓くんはそのまま動けずに固まっていたので簡単に掴むことが出来た。
「や…やっと、捕まえた!なんで逃げるんですか!そんなに私が嫌いなんですか、私何かしました?!」
逃がさないように両手でしっかり掴んで今まで頭の中で考えていたことを一気に吐き出した。荒い?知りませんよそんなこと、こちとら疲れたんです
「別に…なんでもない」
ぷいっとそっぽを向きながら楓くんは言う
「じゃあなんでそんなに私を嫌がるんですか?!」
「…お前の」
「え」
そっぽを向いていたかと思ったらうつ向きながらもこちらを向いてきた…お前の、何??
「お前の役はっ、すごく大事なんだよ!素人が適当にやって良いものじゃない!!今まで…あの人がっ、どれだけ苦労してきたかも知らないくせに…っ」
「ぇ…と。」
突然溢れた楓くんの言葉に、最初は押していた私だけども逆に押されてしまった。…待って、うん、大事な役だよね、あの人?あの人って?
「…私の前に、誰かが演じてたんですか?」
「あぁ。」
あー、なるほど。役の取り合い…とはまた違うけど、つまり楓くんは前に演じてた人の苦労を知っているから突然現れて役をかっさらっていった私が気に食わないんだな。うん、わかった、よーくわかった、けどね
「…私は」
再び押され気味だったのを立て直して楓くんを真正面からみる。もう目は逸らされなかったので思いっきり覗き込んだ。
「私は適当になんてやっていないし、やるつもりもないですよ。」
綺麗な茶色の目が歪む、私がそうとう気に食わないんだろう、でもここでやめたらダメな気がしたので話し続ける。
「そりゃあ素人で、まだまだ部長さんにも、先輩にだって指摘もされるし、前に演じていた人の方が適役だと思います。そもそも私は先輩のついで、成り行きで演じることになっただけですし。」
でも、本当に短い時間だけど、私だって咲良部長がどれだけ演技が好きなのか、真剣なのか、ちゃんと見たんだ。
「…楓くんには負けるけど、演劇部の皆さんが演技にどれだけ本気か見て、私だって本気で頑張っている人達に本気で返すくらいの気持ちはあるの」
何故か視界がぼやけてきた、うまく顔がみえない、けど
「私が適当かどうかは、ちゃんと見てから判断してください…。」
最後の方の迫力は皆無だ。でも、うん、言えたからいいや、完全に子供のすることだけどね。
あぁ恥ずかしい、暑くなり過ぎたかなぁ、涙が出てきたのがばれないと良いけど。
すると、それまで一言も発さなかった楓くんがゆっくりと口を開いた
「お前を…ちゃんと見て、俺がそれでも認めなかったらどうするんだ?」
「その時はまた考える、でも、絶対ぎゃふんと言わせる。」
あぁもうまだ信じないのか、ここまで言ってしまった以上、私も引き下がれない。絶対に言わせる、え?古い??
「…、わかった。」
「ぇ」
あれ、今ちょっと笑っ…?
「じゃあ戻るぞ。」
「え?は?ちょっ、ちょっと待って!!」
なんか本当にわけがわからなかったけど、少しは解決したのか…な?
「おい」
「うぇ?!はい!!」
突然くるっとこちらを向くものだから驚いて変な声が出てしまった。こっちは足が短いぶん必死に小走りしてるんですから突然やめてくれませんかね
「…悪かったな」
「へぶっ?!」
な、顔っ!顔に何か投げつけられたっ!!前がみえない…ていうか
「…タオル、ですか?」
「いちいち聞くなボケ、俺はまだ死にたくないんだよ。」
それだけ言うと楓くんはまたスタスタと歩いて言ってしまった。…言ってる意味はよくわからないけど彼なりの優しさなのだろうと思うのでありがたく使わせていただくことにした。
…ていうか本当に足速いですって、追いつけないんだけど!!
なんかごちゃごちゃしてすいません、、
色々ありましたがようやく本格練習開始です。楓くんもね、悪い子じゃないんですよ?小学生くらいの弟とかを見守る目で見ていただけたらと思います(◜◡‾)




