はじめまして
…えーと。どうしよう
優人先輩に連れられて約5分経過、未だに先輩が無言です。
えー…これどうしよ、間、間が苦しい。柚花も黙ってるし…
と、屋上の扉の前で優人先輩がこちらを振り返った。
「……」
そして、何かを言おうとしたその時
「…悪いんですけど、もう関わらないでもらえますか。」
優人先輩を遮るように柚花の冷たい声が響いた。
「助けてもらったのは感謝しています。でも、元はと言えば貴方が原因の様なもので…この子にまたこういう事があったら嫌なんです。悪いんですが、もう小那都に関わらないで下さい。……小那都、行こう」
と、私のもう片方の手を掴んで行こうとした
「…えっ、ゆ…柚」
ちょ…っ、え?!
私は頭が混乱して何も言えなくて、先輩の方もみれなかった。
そして優人先輩も黙ったままだった、
繋がれていた手は簡単に解けた
きーんこーん
午後の授業はもうほとんど潰れてしまったため、私達はラストの化学だけ受けて一日が終わった。
「小那都!かーえろ!」
柚花が笑顔でこちらに来た。テンションが高い
…多分わざとかな?
勘だけど柚花はあんな風に言ってしまって悪かったと思ってるんだと思う。それに今だって、あの空気を気まずかったと思ってるからわざとテンションをあげて私に話しかけてきてるんだよね…。
やっぱり、柚花は優しいんだよなぁ。
「うん!…でも私行かなきゃ行けない所があるから、先に帰ってて?」
そう、これは今日行かなきゃダメ
「…先輩の所?」
…さすが柚花、気づくよね。
「…うん」
「何で?だってあの人のせいで小那都はあんな目にあったんだよ?!」
…まぁ、確かに、私もそう思うし実際そうだしね。…でも
「ありがとう。でも、先輩とは今話とかなくちゃいけない気がするから。…大丈夫だよ?今日の人達はもう来ないだろうし」
「…先に玄関の所にいるね」
「うん!ありがとう」
私はこんな良い友達が居て幸せ者だな、なんて少し恥ずかしい事も今日なら何故か考えられた。
かちゃ…
優人先輩は何処に居るんだろう…。会えるかな?…とか心配していたけど
「…いた」
すぐ見つかった。やっぱりここが好きなのかな…?
優人先輩は屋上で一人ぼーっとしていた。
「…優人先輩」
「……っ?!」
先輩はすごい勢いでこちらを振り返った。
「…先輩、お礼ちゃんと言ってなくてすいません。今日はありがとうございました。」
私はペコっと頭を下げる
優人先輩はただ、ぽかーんと私の事をみていた。
「確かに先輩が原因ですけど…恨みましたけど!先輩自体が悪いわけではないし、だから…えと、柚花も今日は言い過ぎたと思ってるみたいで…」
あれ…何が言いたいのかわからなくなってきた
「…その子のいう通りだよ」
さっきまでずっと黙っていた優人先輩が口を開いた。
「……小那都ちゃん。勝手な事だけど、聞いてもらえる?」
いつもとは違う、真剣だった
「…はい。」
私はゆっくり頷く
「…………だ、」
先輩がぼそっと喋り出す
「え?」
「…守れると、思っていたんだ」
「……。」
先輩は苦しそうだった
「実際には見ていないから確信は無かったけど、薄々気づいたんだ。でも、俺がずっと側に居れば何もしてこないだろうし、近くなら守れると思ったんだ」
そうか……いきなり朝一緒に登校しようってなったのには訳があったんだ。
「…でも、俺の予想は間違いで…、寧ろ逆効果だ。まさかと思って小那都ちゃんを探して、見つけたら小那都ちゃんがビンタされてて…」
先輩の手がそっと私の頬をつつんだ
「混乱したよ。現実を見ている気がしなかった…そしたら動きだして、そこで我に帰った。」
優人先輩は私の頬をつつんだまま、泣きそうな顔をしていた。
…と、先輩が近づいて
「…っ。」
そのまま私を包んだ
「…ごめん…。」
「……」
…驚いた。先輩は今回の事をこんな重く考えていたんだ…。
「…ふっ」
「…え?」
…なんだろ、これじゃあ
「…ふふ、これじゃあどっちが年下かわからないですね」
そう言って、私は優人先輩を抱きしめ返した。
「……はは、こなっちゃん男前…。」
この時の先輩はとても弱々しくて
まるで小さな子どもみたいだった




