東京カシス
初投稿でへちょいです(Д`≡´Д)
因みに別のHNでサイトに載せた話の改造なので、見覚えのある方いらっしゃいましたら……盗作じゃありませんのでっ焦
夜に沈む
ちりばめた宝石
発光ダイオード
口に入れた
味のないチェリー
__東京カシス
洒落れたバーだった。
何となくあいつは店の雰囲気にあっていた。
さすがは行きつけ、一般市民とは違うもんだ、やってることが。
「…いきなりごめん、」
「別に…暇だったし」
顔を見ずに答えた私に飛鳥は「うん…」とかえして、真っ赤なチェリーを沈めたカクテルに薄い唇を寄せた。
カクテルに沈めるチェリーは美味いときいたことがない。
むしろ不味いとさえきく。
なぜ沈めるのかは、知らない。
「…東京は、どう?」
「うん、慣れた…かな。いいよ、とても。」
また、一口。
「…都会って怖いのかって思ってたけど、そうでもないんだ、よくしてくれる人はたくさんいる」
いつから。
いつから飛鳥はこんな"大人"みたいになったの、
夢があると島を出た。
ごめん、と一言を残して私を置いてけぼりにした。
あの時一緒に行こうと手をさしのべてくれてたら、私はなんの躊躇いもなく、あんたの手をとったのに。
泣くに泣けなくて、涙を流したのは一週間もしてだったんだ。
「なんで今更、って思った、よな」
私はあの頃に立ち尽くしたままだよ。
あの時からなにひとつ動いちゃいないんだ。
「……うん」
甘いはずのカクテルが苦い。
アルコールがまわらない。
時間は進んでいるのだろうか。目は、やっと薄暗いバーになれてきていた。
「…なんでわざわざ東京までよんだの、」
「…言いたい、ことがあった」
「…なに、」
飛鳥は言うのを躊躇らっているらしかった。
唇がモゴモゴと動いている。
それにクスリ、と笑ってみせたら困った顔で少し睨まれた。
ああ、その癖はなおってなかったんだね。
どこか安堵する自分が嫌だった。
「…なに?」
「……一緒に、住まないか」
躊躇うはずだった。
現に少し驚いた。
そんな顔をしてしまったんだろう、飛鳥の顔はきまずそうだ。
「……ごめん、それだけなんだよ」
「…、」
「……高校を卒業して、体いっこで東京に出て、いろいろあったよ、ここまでくるのに。」
「…うん、」
「ずっとお前の事を考えてた。ずっと後悔してた、無理矢理にでも連れてくりゃよかったなって。…でも、俺のエゴじゃ、由依を縛っちゃダメだと思ったんだ……おまえは、俺には捕らえとく事は出来ないって」
飛鳥は、何を言ってるんだろう。
私はもうずっと前から飛鳥のものなのに。
それも動けなくなるほどに…縛っちゃいけないと思ってたのは私も同じだったんだよ。
「忘れられるって思ってた。…でもこうやって何とかなった今でも、ずっとずっと由依のこと、考えてる。……オンナノコだって抱いてみたけど、ダメだった……なぁ、まだ、妬いてくれる?」
忘れたかったのはなに?
忘れたいわけじゃない。
「忘れなきゃ」
そんな激しい思い込みだった。
例えばもうずっと離れることはないのなら、それこそ東京の夜のような甘く苦い素敵な事だろう。
あの時から変わっちゃいないのは私もあいつも一緒だったのかな。
そして呼ばれただけで東京にまで出てきたところからまた、全部はじまってたんだ。
「……妬いたげない、」
あいつのカクテルに沈んでいたチェリーを口に運んだ。
噂どおり酷い味。
おもむろに、二人して微笑んだ。
おわり
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