6話
ノアは不思議な存在だ。
酒場で復活する魔女狩りと、師匠を想い一人で飲んでいたらいつの間にか相席していた。
いつから居たのか僕にすら分からなかった。
その薄気味悪さに最初は警戒していたが、師匠の話題を口に出されて余計にそれは厳重なものになった。
「あなたですか?殺したお師匠さんの代わりに魔女狩りを滅ぼしているっていうのは」
「……そうだが」
「奇遇ですね!私も魔女狩りを滅ぼしたいんです。どうですか?組みません?」
何故、どうして、そんな言葉をすべて聞き流してノアは僕の隣にいる。
離れようとしたが、こちらの思考を分かるように先回りしてくる。
「まったく、アランが一人で歩いていたら詐欺に遭いますよ」
「どこの子供だ」
「子供ですよ」
僕より年若いノアが訳知り顔でそう宣う。
まるで師匠に言われているようだ。
ノアに師匠を重ねたのはその時が初めてだった。
それからも度々師匠に似た言動に、いつの間にか絆されていった。
こういうところが詐欺に遭うと思われるんだろうか。
けれど、ノアは本当に不思議な存在だった。
普段は飄々としているのに、魔女狩りを殺すとなると一気に目つきが変わる。
すべての憎しみを込めて。
「ノア」
「なんですか?」
その瞳が師匠のようだと思った瞬間から、ノアは僕にとって師匠には及ばずとも他の人間と比べて特別なんだろう。
「なんでもない」
「変なアランですねー」
そう言いながら敵の首を軽々刎ねていく。
本当に、昔の師匠を見ているようだった。
「なあ、なんで師匠のことを知っているんだ」
「それは、秘密です」
「何故」
「秘密があった方が格好いいじゃないですか」
ノアは飄々とそう躱して言い逃れる。
血縁か?
でも、師匠からそんなこと聞いたことはなかった。
そこで僕は思い至った。
僕は、師匠のことを何も知らない。
ネックレスが熱い。
時々、僕を捨てた両親の唯一の形見が僕の感情に比例するかのように熱くなる。
「ノア、このネックレスに見覚えはないか?」
この砦の最後の魔女狩りを倒して尋ねる。
「さあ?でも、綺麗ですねー。大切にした方がいいですよ」
「……ああ」
知っているのか、嘘をついているのか。
僕には判断がつかなかった。
そのまままた流れるように次の街へ行く。
魔女狩りがいる限り、僕達の旅は終わらない。
師匠。僕は、どれだけ殺したらいいんでしょうか。
人に欲がある限り、魔女狩りはいなくならないと思うけれど、それでも願わずにはいられない。
人間に、欲望がなくなりますように。
なんて、魔女狩りを滅ぼしたいという欲望を持っている僕が言えることじゃないけれど。
「アラン」
ノアの笑顔が、師匠の笑顔とは違うものだけれど、同じに思えてこの笑顔だけは守りたいと思った。
これも欲望だろう。
「ノア」
ノアが何者でもいい。
師匠に似た、この不思議な存在を守りたい。
またネックレスが熱くなった。
その熱を無視して、ノアの後を追っていく。




