4話
すべての魔女狩りが終わった後、私は言った。
「魔女狩りはまだいる」
そして腕を広げて迎え入れる体勢を取る。
子供は察したのか、泣きながら首を横に振った。
「無理です!」
「魔女になれ」
そう言って、子供に護身用の短剣を持たせる。
「お前の両親の仇かもしれないんだぞ?」
「かもしれない、です」
子供の手が震えて刺せない。
「それでも、私が最後の魔女狩りだ」
子供は私の意思が固いと悟って、短刀に力を込める。
だが、落としてしまう。
何度も落として、これが最後だと言う思いでがっしりと力を込めて握らせた。
「師匠、僕は、あなたのことを両親以上だと思っていました」
「そうか。……そうか」
それだけだった。
子供の短刀が私の胸を貫く。
衝撃で前のめりによろめくのを、すっかり私の身長を追い越した子供が支えて森の中の静かな泉の側まで抱きかかえていった。
この子を拾ったのも、こんな森だっけか?
そこでふと思い出した。
「……名前を付け忘れていたね。アランはどうだい?なかなか勇ましい名前だろう?」
「良い名だと思います」
この子は私から出てくる血を一生懸命に塞ごうとして、魔力を注ぎ込んでくる。
それでも、自分の死は悟る。
「よくやった。それでこそ私の自慢の息子だ」
すべての魔女狩りを殺す。
「最初から、決めていたことだ」
「やだ、嫌です!師匠!!」
流れ出る血を止められないと分かったのか、私に縋り付いてくる。
アランのネックレスが鈍く光る。
それを横目で見ながら、血だらけの手で触れていいか迷ったがこれも最後だ。
わしゃわしゃとアランの髪を撫でる。
「お前は、誰にも負けない強い子に育つんだぞ」
「師匠には勝てません」
「ははは。私を殺してか?」
私の言葉にアランが静かに激昂する。
「……やっぱり、そのつもりだったんですね」
それが自らの手で私を殺させたことへの怒りだとすぐに分かった。
「いいか。魔女狩りは滅ぼしたが、あいつらの思想は強い。またいずれ組織が誕生するだろう。その時は、お前が潰せ。もう誰も魔女だなんて判断で人を殺させるな。魔女狩りも魔女も人間だ」
私が神妙に言い含めると、アランは小さく頷いた。
「アラン」
「もっと呼んでください、師匠。初めての僕の名前」
「アラン、泣くなよ。いい男が台無しだぞ」
「師匠の方が格好良かったです」
「ははは。世辞も言うようになったか」
言いながら口からも血を流す。
もうそろそろお別れの時期も近いみたいだ。
「アラン。可愛い私の息子。誰にも負けず、立派な魔女になるんだぞ」
なんて、元魔女狩り部隊の総指揮者が言うセリフじゃないけれど。
ああ、もうアランの顔も見えない。
それでも顔にアランの涙が落ちてくる。
まったく、強くなれと言っているのに、いつまでも子供だな。
そう思いながら私の意識は無くなった。
「師匠、僕、すべての魔女狩りを狩り尽くします。あなたのように」
ネックレスが煌めき光る。
私はそれを知ることはなかった。




