3話
それからは世界を巡る旅が始まった。
なにせ、魔女狩りの支部が世界にあるのだ。
一つずつ丁寧に潰していくと、次第にあの子も同じように戦うと言い出した。
「死ぬかもしれないぞ?」
そう言い含めても頑なに首を動かさない。
やれやれ。
この頑固さは誰に似たのやら。
「まあ、いいさ。子供一人守って戦うぐらい訳はない」
その通り、丁寧に潰して回った。
子供はネックレスが教えてくれると言い、魔女の力を使い始めていった。
魔女狩りが魔女に滅ぼされかけている。
そんな話が出たのは半分を過ぎた頃だった。
噂とは、遅いものだなぁ。
私に見合いの話が来た時は物凄い速さで噂が出回ったぞ。
なんて、昔話を思い出すくらいには余力が出来たのはこの子の魔女の才能が素晴らしいものだったからだ。
護身用に短剣を一応与えたが、すべてを魔法で薙ぎ払う。
その姿は、かつて殺してきた魔女達に似ていた。
ああ、この子も魔女なんだなぁと思い知らされる。
そしてやはりこれほどの魔力のある魔女が親なら私が殺しに呼ばれたかもしれないと思った。
「なあ、もしもお前の両親を殺したのが私ならどうする?」
数十箇所目の砦を制圧し、子供に話し掛ける。
子供は目をぱちくりと瞬かせたあと、俯いた。
「それでも、師匠は師匠です」
「そうか」
それ以上は何も言えなかった。
「さて、そろそろ本拠地を攻めるか」
「本拠地?」
「東の最果てさ」
数年振りに来た魔女狩り本部は、昔とまったく変わっていなかった。
いや、こんな趣味の悪い置き物とかなかったな。
金儲けに走ったか。
魔女とは言えぬ人々でも冤罪を掛けて金持ちを殺し財を奪う。
こんなチンケな組織に成り下がるなんてな。
昔の武器でどんどん殺していった。
泣き叫ぶ者も、命乞いする者も。
子供はなんとも言えない顔をしていたが、段々と表情がなくなっていった。
……情操教育に悪かったか。
「あなたは、あの伝説の処刑人!」
良かった。
本部ではまだ現役扱いだった。
まあ、それでも殺すんだけどな!
昔、魔女を殺したみたいに次々と魔女狩りを殺していく。
ああ、そうか。
流れる赤い血。
どちらも人間なのか。
それでも分かり合えなかったから滅ぼした。
今度は子供のために魔女狩りを滅ぼしている。
「平気か?」
ネックレスが返事の代わりに光る。
子供は冷めた目で魔女狩りを殺していった。
この十年がそうさせた。
震える手も、殺したあと吐きそうになる瞬間も、見ない振りをした。
……私は、多分いい親にはなれなかったな。
この子から笑顔を奪った。
それは重罪に思えた。
だから、せめて魔女狩りを全員殺してこの子に安寧を与えよう。
総指揮者の間に着いた。
懐かしい扉だ。
それを蹴り飛ばすと、中には見知った顔がいた。
「久々ですね、先輩。随分とご活躍のようで」
「まあな。うちの子のために死んでくれ」
私の跡を継いだ後輩と戦うも、仮にも総指揮者。
一筋縄ではいかなかった。
遅れは取らないが決め手に欠ける。
お互い譲らない戦いだった。
「先輩のお子さんってあの子ですか?」
「どうだ、可愛いだろう?」
「最恐の処刑人と言われた人がねぇ」
「お前も親になれば分かるさ」
「自分の子でもないくせに」
それでも、子は子だ。
私の子供だ。
一瞬、足元の瓦礫に足が躓いて体勢を崩す。
殺されるかもしれない。
そんな考えが頭をよぎったのも一瞬で、あの子がこちらに向かって攻撃しようとしているのが見えたので数拍おいて後輩から離れた。
そこへ氷の刃が後輩を襲う。
「くっ、魔女の子供風情が……!」
私に集中し過ぎたせいで、子供の存在を忘れていたらしい。
普段のおっとりとした糸目は見開かれてあの子に飛びかかろうとする。
「させない」
一瞬の隙が命取りになると、後輩にも子供にも教えたのに、子供の方が優秀だったみたいだ。
左胸から血を流す後輩にも情はあった。
「先輩、なんで……」
「魔女狩りを狩る。そう決めたのさ」
そうして、東の最果ての魔女狩り本部は潰れた。
あとは残党を処理していくだけ。
「行けるか?」
「もちろんです、師匠」
笑顔を無くしたなんて前言撤回。
まだまだ可愛い我が子だ。




