2話
さて、ここから近い魔女狩り部隊の砦は確かあそこだな?
子供を寝かしつけて外に出る。
「禍の目は、早く摘んでおいて損はないんだよなぁ」
そう言って歩き始める。
私は私に出来ることをするだけ。
それが魔女狩りを敵に回すことでも、あの子を守れるならそれでいい。
砦に着くと、頑丈な守りだった。
「昔ならではの定石だねぇ」
そう言って身を隠すことなくそのまま向かう。
「こんばんは」
人好きのする、害のない笑顔だと自分でもわかる。
「何者だ」
返事が来た時には相手の首は落ちていた。
「なっ」
血が噴き出る音を背景にもう一人の首も刎ねる。
「こんなに弱くて門番やらせて、本気で守る気があるのか?」
言いながらも歩みは止めない。
あんなに怯えて帰ってきたあの子が、安心して明日から笑うためにも今夜中に方を付けておきたかった。
「誰だ、お前は!」
なんだここは。
新人、下っ端しかいないのか。
仮にも数年前まで魔女狩り部隊の総指揮者だったんだぞ。
少しは知っておけよ。
まさか私が無名だったなんてことはないよな?
めちゃくちゃ人気あったよな、私。
綺麗な方々からも熱視線を受けていたぞ。たった数年でこんな扱いになるのか。
……ちょっと泣きたくなったのは内緒だ。
「……何人目だったか、もう覚えていないな」
そうこうしている間にほとんどの魔女狩りを殺し尽くして最後はこの砦の隊長の部屋。
分かりやすく豪華絢爛に飾られていた。
「なんだ!誰だ、お前は!……いや、あなたは!!」
「なんだ。知ってる奴いるじゃん」
「総指揮者…!?あの“処刑人”がなぜここに…!」
そう言いながら抵抗する相手を家から持ってきていた包丁で突き刺した。
急所は外さない。
みんな一瞬だったな。
腕が衰えていないことを喜ぶべきか嘆くべきか。
これからのことを考えると、もっと強い方がいい。
「さて、全員殺したし帰るか」
久々に動いたから少し疲れた。
これも歳のせいかねぇ。
来た時と同じように歩いて帰る。
あの子が見る夢が幸せでありますように。
少なくとも、自分が魔女の末裔だと思わないように。
魔女狩りに狙われる未来は私が潰すから。
健やかに育ってくれ。
そう思って帰宅すると、子供は目覚めていた。
「師匠、こんな夜更けにどこに行っていたんですか?」
咎めるように子供のネックレスが光る。
「……血の匂いがする。怪我でもされたんですか?」
「子供にはまだ早いところだよ。怪我は、私はしていないよ」
そう言って、ぐずる子供をまた寝かしつけた。
師匠の歌は下手ですね、なんて憎まれ口を叩きながらもその子守唄ですやすやと寝たのは可愛らしい。
「そのままいい子に育ってくれよ」
魔女狩りに殺される前に、私が魔女狩りを全員殺して守ってみせるから。
その後になら、お前に殺されてもいいよ。
久々の疲れのせいか、うとうとして気付けば私も子供のベッドで寝こけていた。
「師匠、朝です」
「あと五時間……」
「昼になってしまいます!」
誰が育てたのか、減らず口の可愛い子。
ぎゅっと抱き締めて、笑って言う。
「なら、昼まで寝ていよう」
陽の光がネックレスをより煌めかせた。
まるで私の罪を白日の元に晒すかのように。
子供が笑うのが、不穏な気配を感じたが、それでも良かった。
「お前はどこまでわかっているんだかねぇ」
「師匠が思うことが真実ですよ」
訳知り顔で言う子供に、本気で知っているのかと思うけれど、それならそれでいい。
私が守ることに変わりはない。




