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2*事件

 エシクは、いつものように・・ラーシクの家へ向かう。

ダシュリの具合は、どうだろうか? 昨日はラーシク・・ずいぶん遅かったけど・・・。でもま、無事戻って来たって知れて良かった。


 エシク「ダシュリ、おはよう・・今日も、良い天気だよ」

ダシュリ「・・・・・・」


 あれ? いつもは、もう起きてるのに・・・。

俺は、ダシュリの声聴かないと、森へ行きたくない。


ラーシクは、もう出かけてるだろうから、玄関へ行く。


 は? なんで、ドア・・開けっ放しなんだ?



 なんか、胸 騒 ぎ がする。


 エシク「ダシュリ?・・起きてる? ・・・居る・・・よな?」


 「入るぞ・・」と言って、俺は一歩、踏み込んで瞬間的に、ダシュリの部屋に走り出した!異様な血のニオイを嗅いだからだ!!





 エシク「・・・そんな・・・ウソだ・・・・・・・」



 俺の中に、今まで感じた事が無いほどの 感情が 沸き上がっていた。


 事情を知ってるはずだ。あいつなら! 今すぐ追いかけないと!

俺は斧を持ったまま・・森を抜け、最短ルートで町へ向かった!


今日も、良い天気! そう思って起きた、いつもの日常。


朝食を家族と過ごし、ロローやラパスさんを見送り、ラーシクを見送り、エシクを見送る。



 いつもと、同じ。そう思っていた。


ロロー と ラパスさんを見送った所までは、いつも通り。





・・・あら? ラーシクは?・・

門の見張りをしていた、セルフさんに聞いても「今日はまだ、見てない」そう。


まさか…寝坊?・・ラーシクは、私が知る限り一度も寝坊をした事が無いわ。


そうだ!夜の見張りだった人に聞いて・・・って、寝てるわよね・・。夜の見張りは、夜の間ずっと起きてるから、交代して家に戻れば‥すぐ寝てしまうそう。


あら・・・そういえば、エシクは?

私が考えてる間に、森へ行ったのかしら?


でもそれなら、一声かけてくれるはずなのに・・・。



気になってはいたけど、ひとまず今日は、おばあちゃんの所へ行こうかしらね。


と、おばあちゃんの仕事場…教会内の一室へ向かう私だったけれど、何やらラーシクの家の方が騒がしい。どうしたのかしら?と、後ろから突然、声をかけられる! ロローだった!


  「どうしたの?ロロー・・ずいぶん早いのね」

ロロー「それが‥村の人が父さんを呼ぶから、私も戻ってきちゃった。何かあったの?」

 「わからないわ。ラーシクの家の方が騒がしいけど、それのせいかしら?」 


なんだろう?・・・・・何か・・嫌な予感がするわ。


ロロー「また、大型の奇形種でも出たのかしら? ダシュリは無事かな?」

  「そうね。私たちも、行ってみましょ」


 それでも私たちは、歩いて向かう。


  私「そういえば今朝、ラーシクにもエシクにも‥会えなかったのよ」

ロロー「え?ラーシクに限って、そんな事ないと思うけど・・寝坊?」

  私「わからないわ。ラーシクなら、明け方に出かけた可能性もあるし。だけど、エシクは‥どうしたのかしら?」


ロロー「あれ? ねぇ見て、ミーリ!」

と、ロローが指さす先に、エシクの父である、スクーレさんまで居る。


  私「スクーレさんまで、どうしたんですか?何があったんです?」

ラーシクの家の前に集まってたみんなが、振り返る。

スクーレ「・・・」


ロロー「なに? ダシュリに何かあったの?! 父さん!!」

ラパス「お前たちは・・・見ない方が良い‥」


ロローは、駆け出していた! ラパスさんに止められるけど、飛び越えて入る!直後、ロローの悲鳴がっ! 私も追いかける!!


  私「ロロー?!」


追いかけた先には・・・・



 ロローが、ダシュリの部屋の前で、腰を抜かして口を両手で抑え、目を見開いて、座り込んでいる。



・・・ダ シ ュ リ ?


 この日が来ちゃったのか・・・と、思った。




病弱だから、早くに亡くなるかも・・と、祖母に聞いていたからだ。



 だけど・・・そこで横たわってたのは・・・







皮膚が黒く変色し・・・血だらけで・・・血の海で・・・全部が赤黒くて・・・え・・・嘘・・・どうして…「どうして?!ダシュリがっ!!」


頭が・・真っ白になってく。




真っ白な中で、ダシュリが元気になって、外を歩いた日の・・あの笑顔を思い出してた。エシクの横で、しあわせそうに笑っていた・・ダシュリは・・・。




見るも無残な姿で・・・・・。

 ・・声も出ずに、涙だけが溢れた・・・・。


ロロー「うそって・・っ・・・言ってよ・・っ・・・くっ・・・ダシュリ~・・・」


私たちは、その場から動けず・・ただ、ただ・・泣いた。






祖母が、白い布でダシュリを覆い、声も枯れて泣き疲れてた私たちを、家の外へと連れ出した。


 くるしい。 胸が・・・苦しい。



 ラーシクに、何って言えばいいの?・・・。エシクには?!


でもきっと、ラーシクは知らないだろうし・・・。




 ラパスさんが、ロローをおんぶして、家へと連れて行った。

私も、おじいちゃんと家に戻り「少し、眠りなさい」と言うので、起きたばかりだったのに・・・眠った。



母が、起こしに来た。村長が呼んでいるからと。

 私「母さん、今日は具合・・いいの?」

 母「えぇ。大丈夫よ・・さぁ、行きましょう」

 うん。と頷き、村長の家の前に、みんな 集まっていた。


ロローは、ラパスさんと一緒だ。


 村長は、私たちが全員集まった事を確認し、話を始める。


 村長「みんな、もう聞いてるとは思うが・・・。今朝ラーシクの妹、ダシュリが亡くなった」


ダシュリは、とっても・・良い子だった。


 病弱な体で、思うように動けなくても、笑顔を絶やした事は無い。

時々、兄・ラーシクをいさめたりする事はあったが、泣き顔は・・エシクと恋人になった事を、恥ずかしそうに言った時の…嬉し涙しか‥無かった。


だから、村のみんなが・・ダシュリの為に、いろいろな事で手助けしていた。


 誰からも、愛される子・・・ダシュリ。


 「村長!なぜ、亡くなったのですか?!」

村長「・・うむ。それが…何者かに”殺されていた”のだ」さらなる衝撃を受ける! なぜ?・・そんな事に? 夜だって、見張りが居るのに。


村長「昨晩の夜の当番は、誰じゃったかのぅ?」

 3人ほど、列から出てきた。


町や森へ繋がる門を見張ってる2人・・昨日は、村長さんの息子のアロゴさんと、工芸品作りの親方で、レガロさん。それに見まわりが・・道具屋の息子、オーロさんだわ。


レガロ「昨日も、静かな夜でしたぜ」

アロゴ「門に一番近い家が、ラーシクたちの家ですから、何かあれば俺たちを呼ぶはずです・・でも、それは無かった」


オーロ「俺も、注意して見てまわってたけど…いつも通りだったぜ?」


 村長「そうか‥。問題は起こってないのか。スクーレ、息子は見つかったのか?」

スクーレ「いえ。村長」


 エシクが・・・・居ない?・・・どうして?


ロロー「・・・もしかして、ダシュリが亡くなったのに気づいて・・ラーシクを追いかけた・・とか?」

 村長「その可能性はあるな。アロゴ、門からラーシクは通らなかったのか?」


アロゴさんは、親方さんと目を合わせるけど・・横に首を振った。

オーロ「交代のタイミングで、どこか別の所から抜けて行った・・とか?」


 村長「とにかく、ラーシクなら町に居るだろう。今 次男に迎えに行かせた。じきに戻ってくるだろう・・それまで、ダシュリの葬儀は延期だ。セラータ、葬儀の準備を頼めるか?」祖母が呼ばれる。

 祖母「えぇ。わかったわ」


おばあちゃんに駆け寄り「私も手伝うわ」と言うけど、母が手伝うからロローの傍に居なさいって・・・。


村長の家の前から、解散となって、みんな・・いつもの仕事へ戻る。


あら?・・・ロロー、どこへ行ったのかしら? さっき居たのに・・。

もしかして、森へ? ・・でも、ラパスさんは近くに居るし。


ラパスさんに聞くと、家に戻ったという。

なら、私も・・家に戻る事にした。


お昼の時間に、祖父母や母が戻ってきたから、用意してた食事を一緒に食べる。そろそろ、ラーシクたち・・戻ってきても良い・・頃よね?



お昼の片付けをしている最中に、ロローが扉を勢いよく開けて入ってくる!

ロロー「ミーリ!! 一緒に来て!!」

祖母にうながされ、手を拭き・・家の外まで、ついて行く。


  私「ロロー、どうしたの? ラーシクが帰って来たの?」

と聞く私に、2つに縛った髪の毛が顔に当たって痛そうなくらい、首をぶんぶん横に振る。

ロロー「違うの!帰って来てない!!行方不明なの!!」と。


 どういう事? ゆっくり、説明させると・・・


ラーシクを迎えに行ってた、村長の次男・ハバリーさんが町に着いて、いつもの店などで聞いたけど『今日は来てない』と、どこで聞いても、そう答えたそう。途中で、ラーシクを見た‥と言う人には会ったけれど、すぐに町から出て行ったみたい。


 ラーシク?・・・どうしたと言うの?・・・どうして?


ロローは、すぐにでも町へ 行きたそうにしている。

でも、もう今から行くと・・町へ着く前には、夜になってしまうわ。


ラパス「ロロー!今から行く気か? 駄目だぞ!」

ロロー「ヤダ!ラーシク探しに行くの!!」


ラパスさんは、ロローをひょいっと肩に背負って「せめて明日にしろ」と言って、私に会釈し・・家の方へ、歩いて行ってしまった。


凄く大きな声で、わめいてる・・ロロー・・・・を、私は見送った。



帰宅後、村長が村の男性数人で、近くの町と光の教団へ‥探しに行くという話を聞く。



 だ か ら ・・・


「ミーリ。ロローもだけど・・無茶な真似はしないで、村でおとなしくしていてね」と祖母は言う。


 どうするのが、良いのだろう・・・。

ラーシク・・・。エシク・・・無事で居てね・・・・。


私は、二人の無事を祈った。




 一方その頃、ロローの家では・・

父と娘の、壮絶な言い争いが続いていた!


だが、疲れてきた2人は、蓄えの干し肉に 噛みつきながら、続ける。


ロロー「どうして?行っちゃあ駄目なのよ?! 2人は友達ってだけじゃないのよ!」

ラパス「どこに居るかも、検討つけてないのに、出かける奴があるか!」

ロロー「だって!・・・心配・・なんだもん・・」


父は、頭をかき・・・

ラパス「狩りに行く前に、言ってる事を・・忘れたのか?」


その言葉に、顔を上げる。

ラパス「狩りの基本は?」

ロロー「入念な準備と、じっくり待つ事」


ラパス「村の門の外は?獣が居るか?」

ロロー「奇形種も・・」

ラパス「そうだ。ミーリも連れて行くつもりなら、彼女の分まで、しっかり準備が必要だ。そうだろ?」


ロロー「・・・うん。そうだね。そう・・だった。狩りに出かける私が、見つける前に、何かにやられない為にも・・準備・・しないと…」


ラパスは、少しホッとした表情を見せる。


 ・・時間は 稼げた。


娘が飛び出す前に、ラーシクとエシクを見つけなければ・・・。








 どこかの・・・洞窟内・・・


エシク「・・ふぅ・・ラーシクの奴・・・どこに・・・行ったんだ・・?…町で聞いても、町から出た・・・って・・・。ふぅ・・はぁ・・・」


何か…胸が苦しいままで、勢いで出て来てしまい、村の外の奇形種は、斧で倒し・・進んで来たけど・・・。腹も減らない。それより、見つからないラーシクが、何か知ってると思った。


まさか・・・おまえが・・・ころしたとか・・・・言わない・・よな?・・・



ふふっ まさかな。


洞穴の壁に寄りかかって座る。

明日には・・絶対・・・・見つけて・・・やる・・・


ダシュリ・・・




体が熱いと思っていたが、疲れてるだけだと思っていた。

ダシュリの笑顔を思い出し・・・・眠る。







朝。


今日は、空全体を雲が・・おおっている。


朝食後、ロローは赤く腫れたまぶたで、ぎこちなく笑って・・森へと向かった。


と、門の入口に人が・・・。 その中に、兄の姿を見つける。


 「兄さん!」と駆け寄ると、私に気が付いた兄は、他の人達に声をかけ離れ・・私の所へ来る。


 兄「よう。久しぶりだが、元気だったか? 母さんは?」

 私「うん。まぁ、元気だよ。私も母さんもね。今日は、どうしたの?」

 兄「まぁ俺は…おまえや母さんの様子 見に来ただけだよ・・それより、誰か亡くなったのか?」

 私「ほら・・病弱な子が、居たでしょ?・・ダシュリって言う子・・あの子がね…」


 兄「…そうか、あの子が・・・」

 私「あの人たちは? 知り合い?」


先ほど居た人達は、村長と何か話している。その中に祖母の姿も在った。

白いローブを纏った人達が、数人・・。


 兄「まぁ、俺の研究所に出資してくれてる、光の教団の人達だよ」


・・あの人達が『光の教団』なんだ・・・・。


光の教団は、奇病が発生した際に、治癒術士や薬師が集まって出来た集団で、奇病からの回復を試みて、ずっと研究してきて、進行を止める薬を作ったの。


そして、その薬で症状の進行を止め、その間に、兄のように[完全に治す薬]を開発させてるって話は、何度か聞いた事があった。


でも、どうして・・あ・・そうか。一応 村に教会はあるけど・・神父様とかは居ないから、葬儀の時は…光の教団に葬儀を頼むんだったわ。


久しく無いから、忘れていたけど・・・。


 「じゃあ、俺は母さんに会って来るよ」・・と、兄は去った。



家に戻ろうかと家の方へ歩いてたら、祖母の私を呼ぶ声が聞こえて・・

振り返った。


 祖母の所へ 駆け寄る。


そこに、教団の方が・・私に、丁寧に 折られた紙の包み を渡す。


これは?・・と聞こうとして、顔を上げると・・・優しい微笑みで


「こちらは生前に、ダシュリ様から、お預かりしていた手紙です。ロロー様やエシク様と共に、お読み頂ければと・・」


 なぜ、ラーシクの名前が無いの? 不安になった私の顔に気付き・・


「お兄様には、すでに話せたそうですので、これは、残りのお友達と恋人に読んで欲しい・・との事でした」


 この手紙は、どうやって? いつの?


「ダシュリ様のお兄様が、昨日の夕方に届けに参られたそうです」


 え?って驚いてる間も、話は続く。


「そのすぐ後に、こちらの村での葬儀を・・と承りました」


祖母「ミーリ。ロローが帰って来たら、先に読んでおきなさいね」


エシクは、見つかった時に・・と。



 ロローが戻って来た。事情を説明して、手紙を開ける事にした。


 ・・・私の部屋で。


ロロー「・・・ぐすっ・・・ダシュリ・・」

泣くのは早いよ‥って思ったけど、私も…読む前から泣いてしまいそう。


 私「…ロロー、開くよ」 ロロー「うん。お願い…」

【ラパス】ロローの父・狩人。

引退した父に代わり、村人や行商の為、なおかつ娘を鍛える為にも、毎日ラクハウスの森へ向かい、狩りをする。今は娘の成長を見守りつつ、優秀な狩人になってくれればと願っている。息子も、もう少し大きくなったら狩りに連れてく予定。


【セルフ】男・独身。町に出稼ぎに行ってる姉が居る。両親は他界。基本的に、戦いたくないので、門の見張りは昼ばかり。


【奇形種】奇病により完全に変化してしまった元・獣や人の総称。完全に変化してしまうと、今の薬でも戻らないので、倒す以外無い。時々、森から村へ入り込む事がある。


【スクーレ】エシクの父。木こり。工芸品に使う木々を切るのが日課。息子を育てる必要があるが、いかんせん無口で、教えるのが苦手。おまえのようにはいかないよ‥と亡くなった妻を思い出す。エシク自身から尊敬されてる事を知らない。


【サランの村・村長】2人の息子と1人の娘、妻と暮らしている。この村が出来る際に、移住し村作りに貢献してきた。ラーシクとダシュリの両親が亡くなった後、仕事を下さいというラーシクに、村で作る工芸品や獣の加工品を町へ行商に行けるようにと、教え育てた。その為、2人は村長にとって息子や娘と同じだ。


【アロゴ】村長の息子・長男。奥さんと子供が居る。村長の家には住んでない。奇形種が出るようになった事で、見回りや見張りを提案し、自ら行動している。時期村長候補。


【レガロ】スクーレさんの採ってくる素材から、様々な物を生み出す工芸家。鍛冶屋のおやっさん・・みたいな見ためだが、すごく細かい作業や繊細な美的センスを持つ。妻は他界し、娘は他の町に嫁いだ。


【オーロ】道具屋さんの息子。他所の町へ嫁いだ姉が居る。わりとお銚子者だが、任された事は責任持ってしっかり行う。


【セラータ】ミーリの祖母。薬師。様々な植物を研究していた過去がある。村でのご意見番でもある。


【ハバリー】村長の次男。独身。村長である父の家で一緒に暮らしている。父よりも兄が怖いと思っている。頼まれると断れない性格。根は真面目で優しい人物。


【兄】ミーリの兄。5つ年上。今は奇病回復薬の研究をしている研究員。光の教団所属。普段から外に出る時は、黒いローブを着ている。定期的に村へ訪れ、家族に様子を見に来る。


次回、ダシュリの残した手紙と、ミーリたちの旅立ち・・・。

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