+9〚ドキュメンタリーニュース〛
その時の事について一さんや戈山に話を聞こうとすると、サラリと避けられる。
理由は分からない。
でも、いつかこうなる事は予測していた。
あの受診機の振動が現れなくとも、きっとこうなっていた。
俺は、ここ以外ではずっと一人だったから。
ふと、窓と紺色のカーテンを閉めて部屋にある白い勉強机の上を見る。
そこには、普通の高校生……十七歳なら持っているはずの筆箱やノート、教科書と言った勉強道具は一切なく、ただポツン、とアクアマリンの様な補聴器ケースと、薬が入った白い綿地のポーチ。
それから飲みかけのペットボトルのコーラが置かれていた。
ポーチを開けて、夕食後用の薬を取り出す。
俺の飲んでいる薬は全て粉薬……散剤だ。
決して錠剤が飲めないわけではない。
……決して。
利尿薬、強心薬、血管拡張薬……。それらの薬を混ぜてコーラやサイダー等の炭酸ジュースで飲む。
良く、ジュースで薬を飲むことは良くないとか、ジュースで飲むなんて甘えだとか、散々言われることがあるが苦いからとしか言いようがない。
ドキュメンタリーやニュースで放送されるほど、病と共に生きる日常は、綺麗なことばかりではない。
泥臭く、苦しく、自分なりのやり方で折り合いをつけるしかないのだ。
もう気づいた人もいると思う。
俺が患っている病は、先天性難聴だけではないのだ。




