+7〚居場所〛
一さんの大きな手が、俺の手のひらに、奪われた青い宝石をそっと戻した。
体温と一緒に伝わってきたのは、言葉よりも重い『ごめんな、遅くなって』という鼓動の響きだった。
俺はそっと補聴器を耳につける。
補聴器を着けても、殆ど音は聞こえないはずなのに、みんなの安堵の音が胸に響いた。
目の前には、捕らえられていた筈の癒宮も、闘っていた戈山や水戸、藤堂。
それから、魁漆座の喧嘩だと言うのに協力してくれた公揺党の男性陣・黒羽さんと三輪さんもいて、今度こそ本当に胸をなで下ろす。
すると依は、俺やみんなに向かって頭を下げた。
〈魁漆座。改めて、本当にすまなかった。こんな上っ面だけの謝罪で許されるとは思っていないし、許されなくても良い。……ごめんなさい〉
〈……。そう言えば、あなた達はこれからどうするの?私を攫えって依頼されたんでしょ?〉
〈その事については問題ない……はずだ。俺が何とk―――〉
俺が何とかする、そう依が言いかけた時だった。
病院の外にある電柱の先に付いている、大きな受診機からブワッと謎の寒気がしたのは。
黒幕の発する殺気が、電気信号に乗って俺の肌を刺した。
一さんも、戈山らもみんなその受診機に目を向けている。
〈問題ない、ねぇ。無いわけないだろ、バカが。しくじりやがって〉
〈っ……!……何でお前が……〉
〈まぁ、まぁ、そんな構えなさんなや。俺が用あるのは、お前らじゃねぇからよ〉
〈こいつらは―――〉
〈なぁ、九条蓮。お前だよ、お前〉
気のせいだろうか。
今スピーカーの振動が俺の名前を刻んだ気がしたのは。
水戸は目に見えない敵からの侮辱に、拳を握りすぎて爪が食い込むほどの怒りを感じていた。
藤堂はスピーカーから流れる殺気を、物理的な「毒」のように浴びてしまっている。
二人の反応は普通だと思う。
俺だって身体が少し強張った。
しかし、どうやら一さんや戈山は違った様で。
戈山の表情からは笑顔が消え、今度は冷徹な瞳でスピーカーを見つめている。
対して一さんは、かなり強い力で制服の裾をぎゅっと握りしめていた。
〈お前は、魁漆座にいて良い人間じゃない―――〉




