+3〚公揺党〛
……―――土下座をした。
あんなに恐ろしい地鳴りを響かせておいて、伝わってきたのは殺意じゃなく、肺が破れそうなほどの『必死さ』だった。
左眉の上に上に付いた傷跡も、着こなされた闇色のスーツも、何処かで見たことがある気がして、俺はじっとその人を見つめる。
驚く俺と戈山に構うことなく、男はスーツが汚れる事も気にせず頭を地面に打ち付けた。
〈お前ら二人、本っっっっ当にありがとう!おかげでうちのマネージャーは無事だぁ!〉
〈……!?、?〉
〈……えっと、あなたは……?と言うかこんな街中で土下座は辞めてください……!〉
〈いや、時代が時代なら腹切って心臓を捧げてるところだ!マジでありがとう!〉
〈良かったです……令和で〉
〈ちょ、ちょっと悠ちゃん……!〉
男が地面に頭を打ち付ける度に地震の様に振動が響く。
周りの客や怪しげな人達もこちらを凝視して来ている。
視線が痛い。
何度も何度も、頭突きをしている男の額は、何度目かでとうとう赤く腫れ上がって来ていた。
大和があわあわと、焦るとやっとの事で彼はその場に立ち上がった。
地面は、濃い亀裂が入っている。
〈えっと……お、あった!これ、俺の名刺な!お前らその制服ってことは魁漆座だよな?惣のとこの〉
〈ど、どうも……。惣って……一さんをご存知なんですか?〉
大和が彼の額から垂れる血を拭うと、男はブランド物の皮名刺入れをスーツのポケットから取り出し、その中から黒よりの灰色の名刺を俺と戈山に一枚ずつ手渡して来た。
そこには、赤色で「NPO法人・公揺党」、「党首:諏訪 悠稜」と書かれてある。
俺は手渡された名刺と男の……諏訪さんの顔を何度も交互に見据えた。
〈こう見えても惣や支配人とは三つしか歳変わんねぇんだ!惣には……うん。
マジで色々と世話になってる〉
〈……え、三つって事は大人ですか?〉
〈ん?おう。オトナだな。年齢的には!俺らの党と魁漆座の目的は似たような物だからな。
たまにカフェに集まって駄弁ったりもする仲だ。魁漆座にいた奴が卒業してこっちに来る……何て事もある!
うちはまともに就職出来ないハンデを背負ってきた奴らに仕事や居場所を提供したりもしてるからよ!
若い奴だとゼロ歳から上は六十歳まで、幅広い年齢層にご贔屓にしてもらってる!〉
公揺党の話は幼馴染の一惣一からも良く聞く。
いや、厳密に言うと言葉で聞く、では無く、手話で聞くなのだが。
魁漆座が物理的にも精神的にも居場所のない高校生達の一時的な居場所を提供する場所なのに対し公揺党は、そんな子供や大人の未来を保証する場だと。
彼処の大将にはいつも困らされていると言う愚痴も交えて。
魁漆座との仲は良好で、今の所条約も結ばず関係を続けられているそうだ。
〈えっと、紹介します。こっちの子は九条蓮。一さんの幼馴染で魁漆座の二年座長です。
耳が聞こえないので、筆談でコミュニケーションを取ってて……。俺は戈山湊。二年副座長をやってます〉
〈そうか、そうか!お前らが九条と戈山か!いやぁ、会えて嬉しいぜ!〉
〈そう言えば、くるみさんとはどう言うご関係で?
彼女はどうしてあのチームに追われていたんですか?〉
〈くるみは公揺党のマネージャー兼俺の幼馴染……なんだけど、GRALの事はまだ何もわかっていないんだ。
党の者に調べさせてはいるんだがな。奴らが何をしたいのかも、どうしてくるみを追っていたのかも……。
……取り敢えず、RIRIERUに邪魔しても良いか?〉




