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死に戻り悪役令嬢はもうどっちでも良いです!

作者: ありあんと

 ああ、またこの夢か……とルシールはウンザリしながら自分が目覚めるのを待つ。

 


「お前の様な女とは結婚出来ない!婚約は破棄し、俺はこのマリッサと結婚する!」


 ルシールの婚約者の金髪碧眼イケメン第二王子ブライアンは腕に男爵令嬢マリッサを抱いて意気揚々と言い放つ。


 場所は学園のホール。

 時は学園のダンスパーティ。

 

 マリッサはブライアンの腕の中でウルウルと瞳を潤ませている。

 あのクソぶりっ子!顔の良い男侍らせて結局一番身分が高い王子に狙いを定めたのね!

 とルーシルは憤る。

 何故か化粧あまりしないとか男の前でほざいてたけど、すっぴん風メイクじゃない!男どもはそんな嘘も見抜けないとか間抜けしかいない!


「何ですって!婚約破棄なんて聞いてないわよ!」


 令嬢らしからぬ金切り声でブチ切れているのは公爵令嬢ルシール……こと、この私。

 いきなり訳のわからない難癖をつけてぶりっ子女を虐めてるだの何だのと言って来た。ふざけんじゃ無いわ!と喚いている。

 

 大体、私たちの婚約はアンセルム王家とコーネリアス公爵家の正式なもので、当人同士がとやかく言っても覆り難いのだ。


「お前みたいな底意地の悪い女普通なら俺が捨てた後は貰い手が無いだろうがな!

 ……しかし安心するが良い。

 王家と公爵家の婚約における書面では、結婚する王子は俺でなくても構わないんだ!

 ふふ……お前にはあの体の弱い鈍臭い兄上がお似合いさ!」


「な、何ですってー!」


 ルシールは驚愕している。

 第二王子の言う鈍臭い兄上とは、アドニス第一王子の事に他ならない。

 幼き日には王妃に甘やかされに甘やかされ、王妃が病に倒れた後は、哀れに思った王に甘やかされまくった事でぶくぶくと太った豚の様な男。

 通称ブタ王子。

 しかも身体が弱く、普段は王都にはおらず田舎で静養している。

 王位にはブライアン第二王子がつくだろうと貴族全員が確信している。


 こうしてルーシルはブタ王子に嫁いで行ったのでした。




 という前世?未来?の記憶が蘇ったのがルシール5歳の誕生日であった。

 誕生日の日に突然ぶっ倒れた娘に公爵と夫人は大慌て。

 ルシールを溺愛する兄ルイスも大泣きであった。


 もう少し成長して、王都で流行っている物語から知ったのだが――死に戻りという現象らしい。

 このままではルシールは第二王子に振られて、豚の様な第一王子と結婚する事になる。


 その後は定期的に断罪される時の夢を見る様になった。


 断罪されて結婚した後は、ルシールは夫のアドニスには触れる事さえ嫌がり家庭内別居。

 その上でアドニスは太り過ぎて病気で死亡。

 その後はどうしたかわからないけど、ルシールも多分死んだらしい。

 

 このままではルシールの未来はお先真っ暗。

 豚とまた結婚する!?それだけは絶対に嫌!

 

 ルシールは今度こそブライアン王子に捨てられない様に、今座学にダンスにマナーに精を出している。

 そして、にっくきマリッサがまたしてもルシールの前に現れようものならば、物を隠したり捨てたりするだけでは済まさないつもりだ。

 前世?は随分とまあ手緩かった。反省反省。

 次は最初から本気出す!


 そんな復讐に燃える幼女ルシールであったが、ある日お父様に連れられて王宮へ行く事になった。


「ルシール、今日は第一王子殿下、第二王子殿下と初めてお会いする日だからおめかしするよ」


 父が幼い子供には似つかわしく無いほどの装飾品をごちゃっとプレゼントしてくれた。

 その数々のプレゼントを見ながら記憶が薄ら甦る、

 前世?でもこう言う事あったわね、と。

 着飾った自分を大きな姿見で確認する。

 艶やかな黒髪と濡れた黒目。

 目尻が生まれつき少し吊り上がってる為に性格がキツく見えるが、中身は見た目以上なので問題なし。

 真っ赤なドレスが白い肌に良く映えている。よし!

 

 こうしてルシールは馬車に揺られて王宮へ。

 前世での顔見せの場でのアドニス第一王子に関する記憶はない。

 確か快活で社交的なブライアン王子とルシールが仲良くなった事で、二人の婚約が正式に決まったのだ。


 王宮で懸命に前世の記憶を呼び出そうとするが、何せ幼い頃の体感で十何年も前の話だ。

 とても思い出せそうになかった。


(まあ良いわ。どうせブライアン王子と私が婚約する事になる)


 ブライアン王子は浮気性だし性格に難はあれど、次期国王だし、何よりも顔が良かった。

 ルシールはとにかく顔の良い男が好きだった。


 そして、顔見せの場。

 二人の王子との今世初対面だ。


「遠いところようこそお越しくださいました」

「うわー!可愛いじゃん!よろしく!」


 銀髪に青い瞳のアドニス第一王子王子が優しい笑顔で丁寧に挨拶をし、金髪に青い目のブライアン第二王子が快活に声を掛けながら近づいてくる。

 ルシールはブライアン王子狙いでここに来た。


 しかし、ルシールは眼中に無かったはずのアドニス王子から目が離せない。

 イケメン好きのルシールの審美眼は告げていた。

 アドニスは少しポチャだが、顔のパーツ自体は弟を上回っている……と。


(この超絶美少年の卵が将来あんな醜い豚になっちゃうの!?)


 ルシールは手櫛でササっと髪を整えつつ、アドニス王子に近づく。


「ご機嫌よう。ワタクシと仲良くしていただけると嬉しいわ」


 ルシールがそう言って微笑みかけると、一歳上のアドニス王子は頬を染めた。

 ふふん……ルシールとて人生経験はそれなりにある。ガキンチョ一人騙すのは容易だ。

 あと、ルシールは性格はともかく顔は良い。


 その後ルシールは何とかアドニスと仲良くなろうとしたが、ブライアンが邪魔してくる。

 くそ!あんたは二番手!引っ込んでろ!

 アドニスを上手い事痩せさせられれば、あんたなんてお呼びじゃないんだ!


 そして帰りの馬車で父に今日はどうだったかと聞かれた。


「アドニス王子は優しそうな方ですね」

 

 アドニスを推しておいた。


 


 後日。


 父が嬉しそうに言う。


「ルシール!お前とブライアン第二王子の婚約が決まったぞ!」


(なんで!?そんなバカな!?)


 ルシールはあと後も事あるごとにアドニス王子を褒めておいたのに!


(かくなる上は……前世のとおり断罪されるしかない!

 そして、アドニス王子は痩せさせる!何としてでも!)



 ルシールは父にお願いし、王子達に会う為に王宮へ度々顔を出す様にした。

 そして、太らない様にしつこくアドニス王子に纏わりついて、食事のアドバイスをした。

 ヘルシーなお菓子を手作りして持参したりもした。


 王妃にも取り入った。

 愛くるしい幼い容姿を利用し、どうすれば年上に好かれるかくらいは分かるのだ。

 ルシールは気が短いが、目標が大きい分自己をコントロールし続けた。

 そして、王妃もヘルシーお菓子の信者とする事に成功した。


 その上でアドニス王子に乗馬を勧めた。

 乗馬はダイエットに非常に効果的なのだ。


 そんなアドニスとルーシルを、ブライアンはしつこく追い回してくる。


「おい!俺もまぜろ!ルシールは俺の婚約者だぞ!」


 邪魔な事この上ないが、ブライアンとて王子の端くれ。

 ルシールも無碍には扱えない。


「ルシールは俺の方が好きだよな!?」


 ブライアンが兄に対抗してくる。

 

 (ふふん……見た目が全てなのに愚かな。

 それに将来はどうせ頭パープーなぶりっ子に騙される癖に!)


 ルシールは断罪の日の屈辱を決して忘れない!

 未だに夢に出てくるのだ!


 ……と思っていた。

 しかし、困った事になった。


 ルシールは、顔の他に体付きも評価対象なのだが、ルシールが筋肉質の男が好きだと言うことを仄めかしたところ、ブライアンが身体を本気で鍛え出したのだ。


「見ろ!ルシール!この筋肉を!」


 立派なシックスパックが誕生していた。

 なんと神々しい!

 ルシールは拝む。


「ルシール……頭がいい男性が好きなんだよね。

 実は僕は学園で今回も一位の成績になったんだ。

 入学から主席を落としたことは無いけどね」


 ルシールの思惑通りに太らずに健康的に育ったアドニスが声を掛けてくる。

 

 そう、兄弟で何故か競い合ってるので、ルシールが適当に煽ったら様々な分野で二人は良い成績を出し始めて、どちらが王になっても文句は出ない高スペックが生まれつつある。


(な、何と眩しい美貌!)


 アドニスはルシールが想定した以上の美形に育った。

 ついでに王妃もヘルシー料理や健康的な生活に目覚めたお陰で若々しく美しく健康的に健在だったりする。


 顔だけならアドニス。しかし、あの割れた腹筋シックスパックは手放し難い!


 そうこうしているうちに、にっくきあの男爵令嬢のマリッサと今世初対面を迎えた。


 両隣りには王子の兄弟。

 今世はアドニスは一学年上で同じ学園に通っている。


「あ、あの……すみません。道を聞きたいのですが……」


(……そういえば、ブライアンとこの女狐の出会いは道案内を頼んだからだったわね)


「今忙しいのがわからない?」


 アドニスが冷たく言い放つ。


「見たことない女だな。あっち行っててくれ!」


 ブライアンがしっしっと追い返した。


 マリッサはガガーン!と顔に書いてありそうな分かりやすいショックを受けてヨロヨロと立ち去った。

 

 (ふふん……勝負あり)


「それでね……父王に聞いたら別にどっちが君と結婚するのでも構わないと言うんだよ」


「いや、おかしいだろ!もう俺と婚約してるんだから兄貴は引っ込んでろ!」


 二人の王子は今日も煩い。


「まあ、ルシール様羨ましいわ」

「二人の王子のどちらを選ぶのかしら」


 周りの令嬢が羨ましそうにルシールを盗み見ているのが分かる。

 ルシールはちょっと気分を良くする。


「ルシールはどっちがいいの?」

「だから、もう俺で決定してるんだって!」

 

(正直いえばもうどっちでも良いわよ!)


 


 それから何年も後、ルシールは国民から慕われる王妃となりましたとさ。

 国王もカッコいいことで他国からも人気があり、国はますます発展したとのことです。


 

 

 

お読みいただきありがとうございました。

他にも色々なタイプの話を書いているので、興味あれば読んでみてください。

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