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ニュー・デイブレイク  作者: 榊原葵
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Prologue②

とある帝国のとある寝室にて


空がほんのり朝日で照らされる時間帯、一組の男女が広いベッドの上で身を寄せ合って眠っていた。男は黒髪黒目で中性的な顔立ちの17歳くらいの少年で、女は色素の薄い金髪で七歳くらいの可憐な美幼女だ。


少年は眠りながら無意識に幼女の頭を撫でていた。


幼女の顔は、安心しているかのように緩みきっている。


そんな心温まる日常のワンシーンに水を差すことをためらうかのような控えめなノックが部屋に響く。


少年はその僅かな音を聞き取ると、目を開け、幼女を起こさないようにベッドから降りてドアを開ける。


そこには、金髪碧眼の、これまた美しい少女が立っていた。


「フェイ様おはようございます。おやすみでしたか?」


「いや、問題ない。」


本音を言えば少年はもう少し寝ていたかったが、この時間帯にこの少女が理由もなく訪れるのは珍しい。おそらく重要な用事があるのだろう。とりあえず部屋の中に招き入れる。


「コーヒーでも飲むか?」


「それなら私が入れます!フェイ様は座ってお待ち下さい。」


少年は、コーヒーを準備しようとするが、少女に遮られる。彼女的に譲れないものがあるらしい。


コーヒーを入れたあと、二人は窓際のテーブルに腰掛けてコーヒーを飲む。


「で、なんの用だ?」


「詳しい説明の前に、まず先にこちらを読んでください。」


会話を切り出した少年に、少女は一枚の書類を渡し、少年はそれに目を通す。


「ふむ。」


書類にはこう書かれていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


【討伐依頼書】


対象:科学王国エピスティニィ北山脈に出現した邪霊の討伐。


推定討伐ランク:S、A


特徴:狼型の邪霊で群れをなしていて統率力が高い。保有魔力量が多く、異能攻撃有りの可能性大かつ身体能力も高い。群れの主も確認されており、危険性がかなり高い。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


少年は書類から顔を上げる。


「こいつを殺せばいいのか?」


「はい、フェイ様にはこの邪獣を討伐してほしいそうです。」


「了解した、これから出撃する。」


少年はコーヒーをすべて飲み干すと、席を立つ。それにならって少女も立ち上がる。


少年が指を鳴らすと、睡眠用に着ていた部屋着が光りに包まれて変化し始める。


「とても凛々しいお姿です。」


「それはどうも。」


光が収まると、少年の出で立ちが変わっていた。黒いロングコートに黒いレギンス、黒いブーツで全身が真っ黒だ。更に腰には剣と拳銃が左右それぞれ一つずつ装着されていた。きっと異世界のサブカルチャーに詳しい少年の親友がいたら「キ○トだ!!」と言うだろう。


「では、行ってくる。」


「行ってらっしゃいませ。」


少年は部屋から出ようとドアノブに手をかける。しかし、部屋の中から聞こえた声に手を止めた。


「パパ?」


鈴を転がしたかのような可愛らしい声。見ると、ベッドで寝ていた幼女が寝起きのショボショボとした目をこすりながらこちらを見ていた。


少年は頬を緩ませながら幼女のもとに行く。そしてベッドにもう一度優しく横たえながら優しい声音で話しかける。


「すまん、俺はこれから仕事でな、いい子で待ってろ。」


「んみゅ~、わかった〜。」


幼女はニコリと笑いながらもう一度眠りにつく。


少年は少女の頭を優しく撫でて立ち上がる。そうすると、そばで一連のやり取りを見ていた少女が、何やら慈しみに満ちた顔で自分を見ていることに気づく。


「何だ。」


「いえ、何でもありません。」


なにもないと言う割に、やたら微笑みながらこちらを見てくる少女に、少年はジト目を向けたあと、ため息を吐いて立ち上がる。


「今度こそ行ってくる。」


「行ってらっしゃいませ。」


少年はドアを開き部屋を出ていった。


◇ ◇ ◇


これは苦しく悲惨な戦争の中で、己の望みを抱きあがき続ける少年少女の物語。そしてこの話は、その中でも後に戦争に多大な影響を与える一人の少年と一人の少女にとって、大きな意味を持つであろう邂逅のエピソードである。


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