ガールズトークは1人うるさい奴がいればメチャメチャ盛り上がる。
「次やったら、あんたのこと刑務所に叩き込むから」日高検事はそう言った。
「はい、承知しました。」
佐々木刑事のお見舞いに来たら日高検事と鉢合わせしてしまった。早く帰りたい。
「あんた、いつから美人局してたの?」
「15…」
「はぁ!?」
「ちょっと日高検事、ここ病室…」と佐々木刑事がなだめた。
佐々木刑事の怪我の容態は手足の骨折だった。それでもイダは綺麗に骨を折っていたから後遺症は残らないそうだ。まぁだからと言って許されることじゃないけど。
あぁフルーツバスケット置いてとっとと退散する予定だったのに。この検事さんグイグイくるから苦手なんだよな。帰りたい。
「貴方はなんでそこまでして美人局していたのよ。」
「自分の生きがいを見つけるため。性犯罪者に復讐するため…かな」
日高検事は何も言わず私の顔を見た。まだ喋れってこと?私は早く帰りたいから怒りにまかせ言葉を続けた。
「貴方たちのせいですよ。貴方たちが犯人を捕まえないから。不起訴にするから。私達が加害者を殺すしか冤罪にかけるしか無かったんです。アイツらは一般社会に生きてちゃいけません」
「それは…」と言って佐々木さんは口をつぐんだ。
本当は知っている。この人達がそんな世の中を正しい道にするべく戦っていることを。私なんかよりずっと前から心が折れても正しい道で戦ってきたんだ。ダメだ今のは言い過ぎた。謝ろう。
「ごめんなさい」
あれ?そう先に謝ったのは日高検事だった。
「私達のせいで貴方のような子を産んでしまった。これは私達大人の責任。だけど信じて欲しい。被害者を守って加害者が罰される社会を私が絶対に作るから」
そう言って日高検事は私の手をギュッと握った。
「だから…もう美人局なんて、自分から睡眠薬を飲まされてレイプされに行くなんて2度としないでください」
私と日高検事の握り合う手の上には涙がぽとぽとと落ちてきた。私も胸がきゅうとなった。
「どうか、自分を!じ、自分を大切にしてください!!貴方が傷ついて社会が良くなっても、性犯罪者が消えても!私は嬉しくありません!!!こんな小さな身体で…お友達のために…!貴方が戦っても私は!!ごめんなさい!ご、ごめんなさい…!」
日高検事は嗚咽混じりながら私にゆっくりと言葉を伝えた。今はまだこの人がどうして私の為に泣いてくれているのかよく分からない。それでも、日高検事のぶつけてくれた思いは一生忘れたくないと心の底から思った。
「冬梅さん、でも貴方のお陰で私は胸がスカッとしちゃった。やっぱり性犯罪者はボコボコにするべきだね!」と佐々木刑事は笑いながら言った。
ボコボコにされた佐々木刑事が言うから面白くて大袈裟に笑ってしまった。
「でも、そのボコボコにする仕事は私に任せて!」
「いーや検察に任せて!」
「あぁじゃあ警察と検察、力を合わせて頑張ってください」と私は言ってこの話を終わらせた。これ以上離すと、なんだか私も泣いてしまいそうだったからだ。
「ナベシマのやつも柊のやつも実刑だってね」と日高検事は鼻をかみながら言った。
「そうですか…」と私はどこか鈍い反応をしてしまった。実刑と言っても柊木は2年で執行猶予。ナベシマは実刑6年だ。すぐに出てくる。
「柊木と示談しなかったら実刑だったろうけど、そうなったらアナタ証人として出廷させられていたのか」
そう、柊木が起訴されてから私は示談をした。公判で私が証言しなくてもいいように私の供述調書の内容を認めて自白事件とすること。それに公判で私の名前や私と特定する出来事は話さないようにすること。このことを条件に柊木と示談をした。
まぁ、罪を軽くしたいなら被害者が私だと特定されないようにしろよってことだ。
お陰で私は周囲から被害者だとバレずに平穏な日々を過ごせている。でも…そのせいで柊木の罪は軽くなった。私が自分のことを優先したせいで、性犯罪者を、刑務所に入れられなかった。
「冬梅さん、そんな難しい顔しないでください」と佐々木刑事は折れている手で私の太ももをポンと叩いた。
「今度こそね、第二のナベシマ柊木が出た時は正しい罪で断罪させてやるから」と日高検事は私の手を再び握り直した。
その顔は夕日に照らされ、とても力強いものであった。被害者たちへの希望そのものだ。
この顔を見て、もう美人局はしないと2人の顔とこの夕日に向かって誓った。
まぁ示談した理由の1番の理由は金だったけど、そのことは2人に言わなかった。
柊木が起訴されたあと示談金として柊木から5000万もらった。(柊木は執行猶予に必死だった)
その内訳は藤田の闇金の返済、マシロの戸籍の購入、使うべきところに使った。
そこから残ったお金は高瀬さんはじめ、性犯罪被害者の支援に使った。
性犯罪被害にあったら日常を送るのが著しく困難になる。学校に通えなくなったり、会社に行けなくなったり。それでも無慈悲にお金はどんどんと減っていく。
被害者貧乏という言葉が世間に浸透されていないのが悔しいと日々思う。
私達はわかる範囲でナベシマ事件の被害者に金銭を渡した。
奪われた尊厳…心の傷、体の傷はすぐには癒えることはないし金で解決できることでは決してない。
だけど生きていくのにお金は必要だ。
性被害によって大切なものを奪われた彼女たちが、少しでも前を向けるようにこのお金を使って欲しい。
最後の美人局で手に入れたこのお金で。
次回で本編は最終回です。もう、後書きが終わったらすぐ更新します。




