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“フェミニズム”を自己都合で解釈する“女”ほど厄介なものはない

今回は黒瀬さんメインのダラダラ喋る回です。

読まなくても別に本編に差し支えありません。

つまらない上に胸糞です。


長いので読み飛ばしオケです。

冬梅さんめ、鮎川の件が一件落着したからって完全にどうでも良いと思っている。柊木リョウゴの裁判を。


君に睡眠薬を飲ませた男の裁判を。まぁそんなところも彼女らしいか。


 法廷を見渡す。傍聴席は満員御礼。記者も多い。この裁判がいかに世間の注目を集めているかが分かる。だけど…いつもより女が多くて性犯罪マニアが少ない。おかしい。何があった…?


 性犯罪事件はマニアが多い。大体というかほぼ100で中年男性。それなのに今回は中年の女性が多い。身なりもしっかりしている。なんだこの人達?


 今回は被告人が柊木リョウゴだからか。テレビ局の人気アナウンサーとなると皆裁判に行きたくなるんだな。


 あぁ…それでもあいつはやっぱりいるのか。クソ芸人。目立つ格好をしているからすぐ分かる。


 俺は傍聴席の左奥側に座る男を睨みつけた。


 こいつはテレビによく出てる傍聴した裁判をネタにする芸人だ。俺はコイツが心の底から大嫌いだ。被害者が事件のことを忘れて静かに暮らしたいと願っていても、コイツが面白おかしく裁判をネタに取り上げて世に広める。ラジオでべらべら喋って、テレビでべらべら喋って、被害者の周囲がまた苦しい思いをする。特に性犯罪でだ。なんでこんな奴が世間から受け入れられているんだ全く。


 あぁ…いけない。また余計なことを考えてまった。俺は深呼吸を3回した。そして最後に大きく息を吐いた。


 性犯罪の事件は何度も経験している。だが、こんなにも緊張するのは初めてだ。


 何故ならこの事件は冤罪。


 ははは。めちゃめちゃ面白いな。俺は何を今から目撃しようとしているんだ。冬梅桜め。君と会ってから俺の人生は滅茶苦茶だ。まぁでも…最高だ。


 頬が自然と緩む。いけない。またあの芸人に変なこと言われるな。



 この件は冤罪でも、柊木はきちんと裁かれなければいけない。

 


 だって…これで柊木が裁かれなかったらコイツはマスコミの世界に戻ってきてしまうもんな。


 証拠がなくて罪を立証できなかった被害者。

恐怖で被害を申告出来なかった被害者。脅されて戦う気力を奪われた被害者。


 さぁー冬梅桜によって作られた無実の罪を君に着せてあげよう。柊木リョウゴ。君には似合うだろう。


レイプされた彼女達に代わって復讐だ。





「それでは開廷します。」




 俺は被告人席に座る柊木を睨みつけた。柊木もそれに反応して俺を睨みつけた。かつての友、かつての依頼人、そして今は敵。



 今日終わったら裁判の様子を冬梅さんに報告しに行く。待っててください冬梅さん。




 


ーーーーーーーーーーーーーー


「皆さん食後はいちごミルクで良いですね?」


「はい!マシロは大きいやつ!」


「だーめ。そう言って前飲みきれなかったじゃん」


「むきー!!!」


「全く…”びっくりドンキー”は、人すらも殺せそうな分厚い木のメニューが大事なのに…タブレットにしやがって」


「池袋に店があっただけでも良いじゃないですか?イダも食後で良いね?」


「あぁ」


「黒瀬さんは?」


「え、あぁはい。その食後でお願いします。」


 なんだか俺の思っていた報告会とは違う。友達と時間潰しにファミレス行く感じだ。


 冬梅さんが一通りタブレットで注文を済ませてくれた。


そして一息ついてから俺に「黒瀬さん2回目の公判お疲れ様でした。」と言った。


「お疲れ様です!」とマシロさん。

「おつかれ〜」と鮎川。


 そんな3人に「ありがとうございます。」と俺は一礼した。そして「まぁ実際に被害者参加人として裁判に参加しているのは谷村弁護士なんですが…」と付け加えた。


 なんだか不思議な気持ちになった。雰囲気が緩い。裁判の報告だからもっと重たいものだと思っていたのに。


「んで倫太郎どうだったんだ?」と鮎川が聞いた。


「まぁ勝てそうですね。冬梅さんの体内からは睡眠薬が検出されていますし。ただ柊木が冬梅さんに挿入した証拠は見つからなかったので準強制わいせつ罪…執行猶予になるかと…」


「ほらバカ桜。なんで挿入させなかったんだよ。罪軽くなるぞ〜」


「無理だって!こっちは意識失っている設定だったんだもん!」


「姉様も衰えてしまったんですかね?!」


「うるさい!私は衰えてない!」


「はーあ。お子ちゃまになっちゃって。退化しちゃったのかな。」


「イダ!!」と冬梅さんは顔を真っ赤にして机を叩いた。


 あーあー。うるさいのは君たちだよ全く。そんなじゃれ合っている3人を制止するために来たと錯覚したくなるタイミングでハンバーグが来た。


 注文したチーズバーグディッシュが目の前に置かれた。木のプレートにハンバーグとライスとサラダが一つに置かれている。こんなの初めてだ。


 見入っているところに冬梅さんからお箸が渡された。


「あ、ここはお箸で食べるんですね。」  


「そうなんですよ。黒瀬さん“びっくりドンキー”初めてでした?北海道にはうじゃうじゃありますよ」


「へー…」と言って俺はハンバーグを口にした。美味しい。なんか背伸びしてないし、安っぽくもない、安心する味だ。



 「そうだ。日高検事には会いましたか?」


 「いえ会っていないです。公判からは検事が変わるんですよ。」


「へー。ずっとキムタクがやるって訳じゃないんですね。」


「そうですそうです。」と言って俺は思わず苦笑いした。キムタク…HEROのことか。


「あーあ。勝つ裁判だったら私も行きたかったなー」と冬梅さんは目玉焼きを箸で割りながら言った。


俺は思わず手を止めてしまった。


「ダメです。いくら冬梅さんでも当事者からしたらあれは一生傷つきます」


 強く言いすぎたのか、全員が箸を止めて俺の方を見た。


「なんだ倫太郎…。柊木のやつ被害者が冬梅って名前出したのか?」


「いえ出してません。法廷で冬梅さんの名前出さないって示談書に書かせてますから…。それに判事や検事にも被害者の名前は絶対出さないことを約束していますし」


「じゃあ…」

と冬梅さんが言いかけて黙った。



「柊木は確かに睡眠薬は飲ませたけど同意はあったし、冬梅さんは濡れていたと言って、君の落ち度や態度、仕草を判事や傍聴席に向かってショーのように話していました」


「…そうですか」と冬梅さんの顔つきが少し暗くなった。


「まぁ被害者が“冬梅桜”って特定されなきゃ良いだろ」と鮎川はハンバーグを左頬に頬張りなながら言った。


「それなんですが…」


「おい、なんだ特定されたのか…?」


「いや確定では無いですが、その冬梅さんの大学の人達が傍聴席に来てまして」


「あーそっか。今テスト期間中だから暇なのかな」


「いえ、学生じゃなくて…」


「はぁ?」と鮎川と冬梅さんは口を揃えて言った。本当に親子みたいだこの2人は。一方マシロさんは俺たちの話も聞かずプチトマトを食べるか隣の冬梅さんの皿に入れるか葛藤している。


「学生じゃないってことは…」


「教員か、大学職員だな」


「そうです。確か冬梅さんの大学にフェミニストで有名な教授がいましたよね」


「え、あぁ…そういえば、はい。」


「彼女が来ていました。それと彼女の取り巻き。そして大学職員も。」


「はぁ」と2人は深いため息をついた。


「これは俺が高瀬さんから聞いたんですが、学生の方では被害者をそっとしておいてあげようって話になって1人も裁判に行く人はいなかったみたいです」


「はっ…!気が使えないのは社会人の方だったな!」と鮎川は乾いた笑いをした。


「私って特定されないと良いけど、大学に居づらくなるし」と冬梅さんが言ってこの話は終わってしまった。あまり2人も聞きたくないだろう。




 実はこの話に続きがあったけど言えなかった。

公判が終わって法廷を出ると傍聴席の女達は楽しそうに、


『被害者は高瀬さんじゃない!』


『インターン行った子が誰か就職支援センターに聞いてみようよ』


『なんで犯人のやつ被害者の名前言ってくれないの!手間かけやがって』


『皆さん良いですか、性犯罪というのは魂の殺人と言われていましてね、今回の例で言うと…』


聞くに堪えない雑音を女達は廊下で響かせた。自分の大学の生徒が被害に遭った(厳密には違うけど)のに何故彼女達はこうも楽しそうなんだろう。どうして性犯罪をエンタメ化して楽しむんだろう。


性犯罪マニアよりもこっちの方が残酷なんじゃないかと思ってくる。


 自分が被害者を傷つけている可能性を全く疑わず、正論の刃をかざして生きるフェミニスト達。


 あぁ冬梅さんも高瀬さんも法廷に来なくて本当に良かった。


 性犯罪被害者が法廷という舞台で、加害者や弁護人、傍聴席から傷つけられずに戦える日はいつか来るんだろうか。


いや来ない。断言できる。


何故なら人は悪だから。変わらないから。


性犯罪被害者は法廷に近づけさせない。その代わりに被害者参加制度を使って俺達弁護人が被害者に代わって悪意と向き合うんだ。


そう俺が心の中で誓ったところにいちごミルクが運ばれてきた。一口飲んで冬梅さん達が注文する理由が分かった。これは美味しすぎる。


「黒瀬さん顔に出過ぎですよ。まぁ美味しいなら良かった」


 しまった。つい頬が緩んでしまった。目の前には俺の顔をみてニコニコと笑うマシロさんと冬梅さんがいた。


 食事が終わって店を出て、冬梅さんは伸びをしながら「敵は傍聴席かー」と呟いた。


 「なんだお前傍聴席行きたいのか」


「違うよイダ。あー…やっぱそうかも!」


「ダメですって冬梅さん!ここで貴方が傍聴席なんて行ったら…」


「いや私の裁判じゃなくて!!」


「へっ…」


それから冬梅さんに聞かされた言葉を聞いて俺は息を呑んだ。隣にいた鮎川もだ。鮎川の方がショックを受けている。顔が真っ青だ。


 全く冬梅桜は考えることがいつも恐ろしい。そしていつも俺をドキドキさせる。

後書きを見てくれているということは、こんなつまらない回を最後まで読んでくれたということですね。ありがとうございます。自分の中では描きたい話だったけど、読んでくれている人からしたらつまらないよなぁと葛藤しながら描きました。そのせいで掲載するのが遅くなりました。でもどうしてもこの地獄を1人でも多くの人に知ってもらいたくて描きました。

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