おかえりなさい。イダ。
区切りが悪いので今日短いです。
すみません。
体が動かない。電流食らったしな…体の節々が痛すぎる。ん、違う…なんだコレ?
「はーい!皆さん見てください!!これが亀甲縛りです!!」
「ほぉ…これはなかなか。」と秋口刑事。
「エッチですよ!だめです!マシロさん!」と黒瀬さん。
目が覚めたら私は亀甲縛りをされていた。マシロに。さっきまでの緊張感はどこに行ったんだ全く。
「大丈夫ですよ!!姉様しっかり気を失っているし!」
「…あ、ま、マシロさん。後ろ…」
「え!?」
「おはよーマシロ。」と私は顔を上げてマシロのことを睨みつけた。
「あっ…」
縄を黒瀬さんに解いてもらった後、マシロにとびきりのゲンコツをした。
「いったーい!!」
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さてと…私は両腕を確認した。やっぱり骨は折れてない。佐々木刑事はともかく、鮎川は私とマシロちゃんのことを傷つけられなかったんだな。
辺りを見渡し「佐々木刑事は?」と私は聞いた。
「とっくのとうに救急車。久保ヒカルも。」と瀬戸夏美が答えた。
「瀬戸さん…無事だったんですね?」
「無事だと思う?」と言って瀬戸は右手を挙げた。瀬戸の右手はぐるぐるに包帯で巻かれていた。
「あの距離から私の右腕狙うって化け物よ。本当に」
「確かに」
何故あの人に勝てたか今もよく分からない。偶然の偶然が重なった奇跡だ。
「ふー」と私は息を吐いた。次に私が何を言うか瀬戸夏美は分かっていたのか
「あっち」
と指を刺した。その指の先にはパイプ椅子に座らされて手足を縛り付けられた鮎川がいた。
「無駄。一言も喋らないわ。」と瀬戸夏美が言った。
「そうですか」と言って、鮎川の元に向かった。
鮎川は下を俯いていた。唾を頻繁に飲み込んでいる。意識はもう戻っている。相変わらず頑丈な体だ。
「鮎川さん、失礼します。」
私は正面から鮎川の膝の上に座った。そして両手で鮎川の顔を持ち上げた。その顔はもう鮎川ではなかった。かと言ってイダでもなかった。
白くて綺麗でまっさらな顔だった。笑っているのか怒っているのか、悲しんでいるのか分からない不思議な顔。神様がいるんだったらきっとこんな顔なんだろうな。私はそんな彼の顔を見てキスをしてしまった。
「座位だ!エッチ!」とマシロちゃんが叫んで黒瀬さんがマシロちゃんの口を押さえた。
それを聞いた鮎川の口角が上がった。
「笑った…」と私は思わず言ってしまった。
「笑うさ…」と鮎川は言った。
「なんで瀬戸さんが話しかけた時は無視したのさ?」
「初めて話す人は桜が良かったんだ。」
「初めて…?」
「初めてだよ。私がイダとして生きると決めてから」
あぁ…感情が高まったら喉がギュウってなるのはなんでだろう。それに、この喉のギュウを堪えきれなくなると涙が溢れてくるのはなんでだろう。大粒の涙がぽとぽと零れ落ちる。
帰ってきた。私が欲しかった人が。久保ヒカルを殺さなかったから。レイプ犯を殺さなかったから。復讐が成功しなかったから帰ってきた。
「おかえりイダ」
私はイダのことを力一杯抱きしめた。
次回から順に柊木裁判、ナベシマ裁判、エピローグという感じです。少し前後するかもですが。




