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レイプされた女は2つのどちらかの道を歩むことが多い。

「レイプされた女が通る道は2つのどちらかだ」


 イイダさんは台所でポットに水を入れながら私に言った。藤田の家の物を、さも自分の物のように使っている。


 テレビに視線を移すと藤田の夫(?)の柊木アナウンサーはデパ地下スイーツランキング3位のモンブランを幸せそうに食べていた。柊木アナの左手を見たが指輪はしていなかった。藤田の指にも結婚指輪はしていなかった。


 私はベットに座り藤田の赤ん坊を抱いていた。すやすや眠っている。ミルクはもう飲んだみたいだ。赤ん坊の顔をじっと見るが、藤田とも柊木アナにも似ていない気がした。赤ん坊はそんなもんなのか。


「さて、その2つは何か?冬梅答えろ」


 赤ちゃんが寝ている前で、レイプされた女がどうとかこうとか話すのはどうなんだよ。全く。


「イイダさんその前に私の質問に答えてください。なんで藤田の家にいるんですか?てか玄関に靴なかったですよね?この赤ん坊は本当に藤田とあのアナウンサーの子供なんですか?藤田とイイダさんはどういう関係性ですか?」


「後…3年間も姿を消して何をしていたんですか?」 


 言いたいことが止まらない。これで聞きたいことは全部か?いや足りないな。


 イイダさんはため息をしながら、おかっぱの髪を整えた。相変わらずサラサラした髪の毛だ。


「はぁ。だから今その話をしようとしたんだよ私は。物事には順番ってものがあるだろ〜冬梅。」


「まぁこの話の中に当てはまらないものは靴だな。玄関に靴が1足も無かったのは、私が自分の靴をベランダに隠したからだ。お前を驚かしたかったからな。」


 イイダさんは少しはにかみながら答えた。


「さぁフユウメ答えろ。レイプされた女が通る道の2つはなんだ」


 回りくどい質問。私は少し間を空けて答えた。


「1つは極端な男嫌いになる。酷いケースは男性恐怖症に。加害者と体型が似ている人に対して拒絶反応を起こしたり、電車に乗れなくなる、仕事に行けなくなる、まぁ社会復帰に時間がかかります。自殺するケースはこっち。」


「よし、では2つ目は?」

イイダさんはポットのスイッチを入れた。ポットがブブブと音を立て始めた。


「….答えたくないか?」

「別に」

「なら答えろ」


 はぁと私はため息をついた。答えたく無い訳ではない。言葉を選ぶのが難しいのだ。


「性行為に対してのハードルが低くなります。自分が受けた性被害を、同意の無い性行為を“大したことが無かった”と思いたくて、繰り返し性行為に走ります。そしてそれならいっそ金を貰おうと身体を売ります。風俗をする女によくみるパターンです」


「正解だ。まぁ2つとも当てはまる場合があるが君のお友達はどっちだ?」


「は、?」


いや、この質問をされた段階で薄々気づいていた。


藤田はレイプをされたんだ。


「もう気づいただろう。藤田はレイプされた。そして風俗に走って自分の被害を大したことがないと言い聞かせて何度も身体を売った」


 ただ金を稼ぎたくて風俗を始めただけだろう。私はずっとそう思いたくて藤田に会ったとき風俗を始めた理由が聞けなかった。


「じゃあ、ホストに落ちて掛け作ってアメリカに出稼ぎに行くのも本当なんですか?」

自分でも驚くくらい弱く掠れた声でイイダさんに聞いた。


「何だそれしか言ってないのか。もっと悪質だよ。というかお前取り乱しているな。冷静に考えたら分かるだろう」


「稼いだ金をホストに使って散財して、1番になりたいエースになりたいって欲を出したんだ。ありきたりだろ」


「それで風俗で鬼出勤を始めたんでしょ」

私はイイダさんの話を遮って言った。


「それだけなら良かったんだがな」


「闇金にも手を出したんだよそれが。すすきの、名古屋、博多、ミナミ、地方にも手を出して飛びまくった。あぁもちろん新宿も」


 私は赤ん坊をベビーベットに戻した。幸い赤ん坊はぐっすり眠っていた。そしてわたしはベッドに座り頭を抱えた。


「んで私に泣きついてきた。こっちからしたらこんな爆弾娘に触れたくも無かったんだがな、話を聞くに冬梅との友達だと分かってな仕方なく最後まで聞いてやった。」


「イイダさんは、すすきのから歌舞伎に来てスカウトやってたの?」

「まぁたまに。知り合いのツテで気ままにな。」


電気ポットがカチッと鳴った。お湯が沸いた。イイダさんはカップにティーパックをセットし、ポットからお湯を注いだ。


「話を聞いても救えないと思ったよ。藤田は敵が多すぎる。私の力はそんなに無い。海外に売り飛ばされて死ぬまで働いても藤田の借金は返せないと本人に伝えたよ」


「そしたら藤田はなんて?」


「私のレイプしたやつを脅して金を引っ張ったらどうか」って言ってきたよ。


「そんなの…」


「あぁ無理だ。不同意だという証拠がない。やってないと言われたらそれまでだ。そもそも金は大して巻き上げられない。」


「藤田の借金はいくらなの?」


イイダさんは紅茶を2つ机の上に置いて椅子に座った。


「2億だ」


「2….バカげてる。」


「何個も何個も闇金に借金したらこうなるよ。今も着々と利子は増えてるから。アイツはまぁ死ぬまでアメリカでセックスマシーンだ。


「んで、こっからがお前の出番だ。」


「冬梅、久しぶりに仕事をしないか」


「は?仕事?」


「そうだ。藤田のレイプをした相手から金を巻き上げる作戦。あれは無理だと言ったが可能かもしれない。何故なら」


イイダさんはベビーベットに目をやった。


「まさか」


「そう。そのまさかだよ。」


「君は柊木リョウゴに接近し髪の毛を採取、赤ん坊と藤田、3人をDNA鑑定にかける。3人が親子だということを証明しろ」


「そんな簡単なこと?」


「いいやまだだ。世間を騒がせようじゃないか。」

イイダさんはそう言って紅茶を勢いよく飲んだ。


「柊木リョウゴを誘惑しろ。そしてレイプ犯に仕立てて豚箱にぶちこめ。つまり警察と検事、裁判官も騙してみせろ」


「友達の人生をぶち壊したレイプ犯を地獄に叩き込め冬梅。」


 私は動揺して紅茶を一点に見つめた。そこには薄赤く透き通った自分がゆらゆらと写っていた。


 その横で「ん〜このシュークリーム美味しい!」とリポートしている柊木リョウゴの声がテレビから聞こえた。


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