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ラブホテルは1人でいると虚しさが半端ない

もうエロは無いぞ。

 朝起きると藤田はいなくなっていた。


 時間は朝の10時。そうか。藤田は飛行機があるから帰ったのか。起こしてくれても良かったのに。本当にあいつは気ままに生きている。


 ラブホテルのチェックアウトは11時だ。私はシャワーを浴びに風呂に向かった。


 すると机の上に手紙と鍵とリップが置いてあった。藤田の忘れ物?なんでこんな意図的に並べて置いてあるんだろう。私は手紙を手に取った。冬梅へと書かれていた。



冬梅へ


飛行機があるから先に帰ります。

直接お願いしようと思いましたが、怒られそうなのでこちらに書きます。


私の家にいるペットを私の代わりに育ててください。住所はこちらです。もし育てるのが難しい場合は私の実家に渡してください。


私は冬梅には幸せになって欲しいと心の底から願っています。どうか危ない真似はしないでください。


最後に私のお気に入りのリップをあげます。

貴方は輪郭と骨格が綺麗なので化粧をちゃんとしたら可愛くなります。


大好きだよ冬梅。


藤田より




 なんで敬語?最初に思った感想はこれだった。そして少しずつ恐怖という感情が身体全身から湧き上がってきた。


 もう2度と藤田に会えない。覚悟を決めた人の手紙だった。こいつもう帰ってこない。


 前は3年会えなかったけど別に良かった。いつかは会えると思ったし会おうと思えば会えたから。でも今回は違う。もう2度と藤田には会えない。


 私は足がすくんでベットに座り込んだ。


 私はもう一度手紙を読もうとした。《藤田より》の文字に気を取られて、この手紙に2枚目があることを気づけなかった。


 私は恐る恐る2枚目を読んだ。


《イイダさんがすでに動いてます。》と一文。小さな文字で書かれていた。


 私は全ての荷物を持ちホテルを出た。手紙に書かれた住所に走って向かった。


 走りながら昨日の藤田との会話を思い出していた。


 藤田は風俗嬢でホストにハマっている。ホストの掛けを返すためにスカウトからアメリカでの風俗出稼ぎを提案してもらった。入国の対策は万全。


 このストーリーになんの破綻もない。ネット記事とかで読む「ホストにハマった女の最後」みたいなタイトルがピッタリのストーリー。


《イイダ》の名前が出てこなければ!!


 藤田の手紙に書いてあった、「危ない真似はしないでください」


 藤田は全部知っているんだな!イイダさんのことも!私のことも!


 お前みたいな女が、ホストに掛けなんてしないだろ。となるとー


「はぁはぁはぁ….」


 藤田の住んでいたアパートに着いた。藤田の家のドアの前に耳を当てる。足音はしない。誰もいない。


 鍵を開けて部屋に入った。玄関に靴は1足も無かった。その代わりにあったのは


「ベビーカー…..」


 藤田の手紙を思い出す。

《ペットを代わりに育ててください》

もう分かった。こいつが考えていることを。


 リビングに繋がるドアを開けた。


 リビングは綺麗に整頓されていた。テレビがつきっぱなしだった。8時から始まったニュース番組が終わりそうだった。今の時間は10時58分。女性アナウンサーが今日の運勢を読み上げていた。


 そして予想通りベビーベッドがあった。赤ん坊がぐっすり眠っていた。よくテレビがついた状態でこんなにも呑気に寝れるな。


 テレビくらい消せよ。私はベビーベッドに近づき、赤ん坊を抱っこしようとした。すると赤ん坊の腹に紙が貼り付けられていた。


【右向け父】


「は?右」


私は反射的に右を向いた。そこにはつけっぱなしのテレビがあった。


『皆さんこんにちは11時になりました。“パクッとニュース”のお時間です。』


 画面には好きなアナウンサーランキングを2連覇した男性アナウンサー、柊木リョウゴが映っていた。30歳くらいなのに随分しっかりしているなと以前思った。


 私は赤ん坊に「え、君のパパこの人なの?」と思わず聞いてしまった。赤ん坊は「あぁぶぅ」と返事をした。


 いや、おかしいだろ。


 この【右向け父】は藤田が家を出る寸前に書いて赤ん坊に貼ったのか。こんなぴったりタイミングよくいくわけがない。


 私が家に入るギリギリまで誰かいたということだ。誰が?こんなくだらないことを。いや、1人しかいないだろ。


 ここまで疑問ばかり残されると腹が立つ。


「いるんでしょイイダさん。いやイダ。早く出てこい。」


 少し沈黙があってから窓の隣に置いてあるクローゼットからギイイィと音を立てて、長身黒髪おかっぱが姿を表した。


 3年前と何も変わっていない。


「久しぶりだね〜フユウメ〜。何か言いたいことは?」


「クローゼットは人が入る所じゃないんですよ。イダさん。」


さぁ何から聞いていこうか。

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