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02 冬支度の打ち合わせ



 森の家に戻ったコウメイは、ギルドからの発注書と標本をアキラに渡す。やはりリンウッドもキリマズラは名前しか知らなかったらしく、森の探索が楽しみだとご機嫌だ。アキラも座布団を点検しはじめ、探す気満々である。


「それで冬支度なんだけどよ」


 マイルズから注意された点を伝えると、寒いのは嫌だとシュウが訴えた。


「この家、暖炉しか暖房ねーじゃん。薪タップリ集めよーぜ」

「リンウッドさんの部屋の暖房はどうします? 冬の間だけでもこちらで生活しませんか?」

「どこで寝るんだ?」

「やっぱり客間を作っとくべきだったなぁ」

「俺は小屋でいい。冬用の寝具をそろえれば何とかなるだろう」


 厚手の毛布や、綿入りの寝具があれば助かるというリンウッドの希望に、アキラも同意するように強く頷いた。ほかほかした寝床で朝寝するのを想像し、うっとりと目を細めている。


「布団も重要だけどさー、冬服だよ、冬服!」


 シュウは防寒着を欲しがっていた。


「動きやすくて薄くて丈夫で、でもすげーあったかい奴がいい」

「スライム(ヒートテック)は高いぞ」

「まかせろー、頑張って稼いでやるよ!」

「布だけ手に入れても意味がないだろう。どうやって服に仕立てるんだ?」


 この四人のなかで裁縫ができるのはリンウッドとコウメイ、辛うじてアキラというところだが、一番腕の良いリンウッドでも破れやすり切れた箇所に当て布を縫い付けるレベルだ。シュウはぞうきんすら怪しい。


「コズエちゃんに」

「頼むのならもっと余裕をもたなきゃダメだ」


 冬はすぐそこというこの時期に、人数分の防寒具を発注するなど迷惑極まりない話だ。今年は諦め来年にしろと止められてシュウは残念そうだ。


「ハリハルタの服屋、ダセーんだよなー」

「魔物しか見せる相手がいないのに、めかしこんでどうする気だ」

「町のねーちゃんたちに見せるに決まってるだろ!」

「確かに、ハリハルタで売ってる服は、新品も古着もイマイチだな。リアグレンまで買い出しに行くか?」


 紡績で栄える街には、流行の服や最新の布地が溢れかえっている。冬服の調達も難しくはないだろう。


「酔狂だと思うが、行きたいなら行ってくればいい」


 服は汚れや破れがなく、ボタンも紐もきちんとついていればそれでいいという、全くしゃれっ気もセンスも無いアキラには、コウメイやシュウのこだわりが理解できない。


「アキも行くんだよ。新しい冬服が必要だろ」

「俺はキリマズラを探さなくちゃならないんだ。服を買うためにリアグレンまで足を伸ばしている暇はない。寒くなったら毛布がある」

「冬の間、毛布にくるまって採取に行く気かよ」

「それもいいな」

「よくねぇ!」


 毛布を頭からかぶり、座布団に乗って森を徘徊されては困る。もしハリハルタの冒険者に見つかったらみっともないぞ。そう叱りつけると、アキラはぶすっとしてコウメイに全権を委任した。


「……適当に買ってきてくれ」

「文句は言うなよ?」

「袖がなかったり裾が短かったりしなければ問題ない」


 言質を取ったコウメイは、鼻歌を歌いながら食事の支度のため台所に向かった。


「問題は大ありだよなー」

「そうか?」


 どんな冬服を着せられるのか想像していないアキラはのんきに構えている。知らねーぞ、と呟いたシュウの声は聞こえていないようだ。

 リンウッドも冬服の必要性を感じたようで、シュウの肩を叩いてお使いを頼んでいる。


「シュウ、俺の冬服も見つくろってきてくれるか?」

「いいぜー。ズルズルしてねー服を買ってくるから楽しみにしてろよ」

「同じ型の厚手の服でいいんだが」

「どいつもこいつも――」


 魔術師の才能は、身なりをかまわない人物を選んで与えるられているのだろうかと、シュウは真剣に悩んだのだった。


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