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17 深魔の森の料理人



 コウメイはアキラの誕生日にあわせて食材を準備していたのだが、それを知ったシュウが「両方すりゃいーだろ」と連続の酒宴を計画した。かつての風習は捨てがたいものだ。特にシュウはクリスマス(のごちそう)に執着している。その気持ちはわからないではない。

 コウメイがアキラの誕生日用に考えていたメニューは、花房草と芋のキッシュと豆のポタージュスープ、たっぷり野菜のサラダにも花房草を使い、木の実とゆで卵を散らして花のように飾る。角ウサギ肉のソテーには香草を利かせたソースを考えた。ケーキもアキラの好みに合わせ、ドライフルーツと木の実をたっぷり使ったパウンドケーキだ。ほんのりと酒を利かせたケーキに、甘芋と刺の実のクリームを添える予定だ。

 だがこれらのメニューは、シュウが考えているクリスマス料理ではない。


「絶対に間に合わせるからな、クリームたっぷりのふわふわケーキ、忘れるんじゃねーぞ!!」


 そんな捨て台詞を残してナナクシャール島へと旅立ったシュウだ。間違いなく二十四日までに戻ってくるだろう。


「でっけぇ肉料理と、やわらかいスポンジのクリームケーキを忘れたら暴れるだろうなぁ」


 仕方ない、とコウメイはシュウ好みのパーティー料理の手配を急ぐことにした。

 冷凍保存庫を確認し、暴れ牛のかたまり肉を使うと決めた。大きなそれをローストビーフにすればシュウも文句はないだろう。ソースは青チェルのジャムを使い、赤ココの実を散らせばそれらしくなる。問題はケーキだ。シュウの考えているやわらかなスポンジケーキのためには、質の良いきめの細かなハギ粉が必要だし、クリームも卵も足りない。


「買い出しに行くか。あとマイルズさんに予定変更も伝えなきゃな」


 酒はマイルズが調達してくれる約束になっていた。二日ほど早く酒と一緒にこちらに来てもらわねばならない。連日の酒宴になるため、酒の量が足りなければ追加の注文も必要だ。


「シュウ用に、ノンアルの飲み物も調達しねぇとなぁ」


 酔っ払った雰囲気の好きなシュウのために、酒精を飛ばした赤ヴィレル酒でサングリアっぽいものを作るとしようか。


「いや、フルーツポンチっぽいヤツがいいかもな」


 チェリ海草が残っていたから牛乳と赤ヴィレル酒で寒天を作って、レギルと一緒にシロップに浮かべればいい。生の果実が少ないのが残念だが、色合いと雰囲気でそれらしく見えれば誤魔化せるだろう。


「リンウッドさん用の芋料理はオーブン焼きでいいか」


 手抜きで申し訳ないが、じっくり焼いた丸芋に塩とバターは最高の組み合わせだ。全員の好みに合わせた料理を一品作るとなると、マイルズのリクエストも聞かねばならない。


「ああもう、時間が足りねぇ」


 メニューや手順は移動中に考えよう。最も時間のかかる食材の調達が最優先だ。

 コウメイは大鍋にたっぷりの野菜と肉を投入し火に掛けた。魔道コンロの火加減と加熱時間を設定すると、コートと背負子、軽量魔術陣を描いた包み布を掴むと、薬草園にいるアキラに声を掛けた。


「街と村まで食材調達に行ってくる。戻るのは三日後か四日後になるから、それまで鍋と冷蔵庫の作り置きで食いつないでてくれ」


 わかった、と手を上げるアキラに手を振り返し、コウメイは森の隠れ家を飛び出した。



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