表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生したから王道を歩みたい  作者: さくろすけ
始まりの街
4/5

これからについて本気出して考えてみたら


 おばあに連れてこられた家というのは案の定といった感じだった。

 テント、もしくは家とテントのハイブリッドがいくつか。

 脇道を暫く歩き暗い雰囲気の路地裏を抜ける。すると少し開けた場所がぽっかりあいていて浮浪者のたまり場みたいになっている。

 あえて一か所に集めているのだろうか。ともあれこれは……大きな街によくある闇ってやつだな。

 壁が布なのが気になるが、まぁ壁があるだけましか。でも雨が降ったらどうするのかいささか疑問ではあった。

 まさか濡れて過ごすわけてもあるまい。僕とおばあが風邪を引いた日にはポックリいきかねない。



「ばぁ!」


「どうしたんだいルノ」



 分からないことは何でもおばあに聞いてみよう。


「あめ、んっらどうすの?」


「おやおや雨が降ったらどうするのかって?不安になっちゃったのかしら。大丈夫よ、この家は捨てられた魔法具の寄せ集めだからね、捨てられてる物の中にも案外使えるものもあってね。この壁は雨を弾く布を使ってるから雨が入ってこないのよ。今までだって大丈夫だったでしょ?」




(魔法具!?ついに異世界っぽいのきた!!)


 小躍りしそうになるのを抑えつつ、口角の上がり具合は律っせそうになかったので思わず手で顔を隠した。

 それにしても、魔法具がこんな身近に。

 効力のあるものも捨てられているとか、本物はどんだけ凄いのだろう。



 大きなテントではなく脇にある中くらいのテントに入る。ここで2人暮らしをしているようだ。

 おばあは家に帰ると言っていたので大丈夫だろうとは思ったが、テントの外で雑魚寝している人たちが目に入ったときもしかしたらという考えもよぎった。

 ちゃんと屋根有りでよかった。


 キラキラした目で壁を触りまくる僕を温かな目で眺めながらおばあは食事の用意をしてくれた。



 出てきたのは白湯に野菜ぶち込んで温めましたみたいなスープとなんか団子みたいな餅みたいな丸くゴロゴロしたのが2つ。



(こ、これは……異世界名物質素な食事……いや、ちょっと質素過ぎやしないだろうか……)



 とりあえずスープは味の予想がつくのでゴロゴロ団子から。

 ちびっとかじってみる。お団子のようにモチっと……はしていなかった。なんと言うか粉っぽさが残っていて硬めだし噛みづらい。味はほぼ無味である。


「ほら、それじゃ食べづらいだろ。クフをスープに付けながらおたべ」




 この団子クフって言うのか……て言うかさっき買ってたパンは夕飯では無かったのだな。



「パン……」



「ルノはパンが食べたかったのかい? ごめんよ、クフを夕飯用に仕込んでおいてたからさっき買ったパンは明日食べようね」



 なるほど、クフと言うのはすぐ出来上がるわけではないのだな。ここでの主食はパンとこのクフってことか。いずれにせよ早いとここの味気ない食事とおさらばしたいところだな。



 食べ終わったあとはやることもなかったので、おばあに色々と教えて貰った。

 この世界の人は皆少なからず魔力を持っているらしい。魔道具は最低限の魔力しか持たない人でも扱えるように出来ている。

 ボロいランプのような魔道具におばあが手を翳し明かりを灯した時には驚いた。僕も真似して手を翳してみたけど何も起こらなかった。魔力の扱い方が分からないからなのだろうか。

 何度も手を振る姿にふふっと笑みをこぼしていたが、僕にとっては笑い事ではない。早く魔力操作に魔法を覚えなくてはこの世界が破滅に向かってしまう(早く注目されてチヤホヤされたい!)

 

 どうやって魔法を使うのかをおばあに聞いてみた。大体の人は生活しながら自然と覚えるらしい。

 少ない魔力で行使する魔法ー生活魔法と呼ばれるものーは基本的に詠唱は要らないらしいのだが、初めのうちは詠唱したほうが成功しやすいそうだ。

 詠唱は大体が親から教わる。詠唱することで魔法行使結果までの道筋?みたいなものが出来て魔力の乱れが落ち着く効果があるらしい。

 少ない魔力で済む魔法はそれだけ結果までの道が短いので慣れると無詠唱で出来るようになるみたいだ。

 ただしそれなりに魔力が必要な魔法は扱いが難しく繊細な魔力操作が必要になるためほとんどの人が詠唱をして運用しているらしい。

 生活魔法以上の魔法について学びたければ専門の学校に通うのが一般的だそうだ。ただしそれなりにお金がかかるので貴族や商家の出の人がほとんどだそう。


 さっそくおばあに生活魔法を教えてとお願いしてみたが、ちゃんと喋れるようになったらね、と軽く流されてしまった。

 ……確かに言葉が拙いことは認めるが……悔しい。



 おばあは凄く物知りだった。子供の僕にも分かり易く説明してくれる。

 暫く質問に答えてくれたが

「おばあ疲れちゃったから。今日は早いけどもう寝ましょうかね。明かりを消すからルノも寝る準備をしてね」


 と、寝ようと提案してきた。

 意識を取り戻して初日、興奮しているのかまだ眠気はない。それに色々と考えを整理したい。



「や!や!ねっくない!い~~や!(じたばた)」



 中身28歳おっさんに片足突っ込んだ成人男性の渾身の演技。

 羞恥心がメーター振り切っていっその事すがすがしい。

 まぁここでキリっと成人らしい振る舞いをして気持ち悪がられ路頭に迷うよりは遥かにましだ……と、思いたい……。



「まぁまぁ、ふふふ。じゃあおばあは先に寝るけど灯りは残しておくからね、あんまり夜更かしは駄目よ。ルノはまだ消せないだろうからそのままにしておいていいからね」

 そう言うとあっさり後ろを向いて寝てしまった。


 駄々をこねたのは自分ではあったが思っていたのと違う対応に困惑。

 3歳児をおいて先に寝るのか……元の世界の常識と比べるのもどうかと思うが度々引っ掛かりを覚えてしまう。

 まだ小さな違いだからいいが下手なことをして怪しまれないよう気を付けなくては。




 とにかく今は状況を整理してこれからについて考えていきたいと思う。


 

 まずは自分の置かれている状況。

 僕は両親に捨てられて運よくおばあに拾われたのだと考えられる。

 いつ捨てられたのかは覚えていないしなぜ捨てられたのかも分からないが考えても仕方がない。

 志真としての意識が戻る前に死ななかっただけ運が良かったと思うしかない。


 次に僕自身について。

 言葉は理解できるし、話せる。記憶にはないが学習していたのだと考えられる。

 現時点で魔法は使えない。体力もこの貧弱な身体ではあるほうとは言えないだろう。

「ステータス」と手を前にかざしてみたが何も表れなかったのでステータスという概念のない世界だと思う。

 ……誰も見ていないにしろちょっと恥ずかしかった。

 あと天の声に望んだのは——顔。

 すぐに確認したいところだったが周りを見渡しても鏡らしきものは見当たらなかったのでこれについては保留とした。



 ギリギリ、本当ギリギリ辛うじて衣食住揃っていて能力値は初期値。駆け出しもいいところである。


 この世界についての情報はまだ多くは得られていない。

 車なんて見かけなかったし機械をピコピコいじりながら歩いている人は居なかった。因みに空をほうきで飛んでいる人も居なかった。

 だけど、文化レベルは生前と比べるとそんなに劣っていないのではと感じた。

 石作りの街並みではあったがライフラインはしっかりしていそうだったし、魔法があって魔道具があるのならば、恐らく大抵の不自由なことはこの未知なる力が解決してくれるのだろう。



 ・・・・・・体験することができないのが残念である。



(くそ!今頃は裕福でなくても一般家庭で健やかに魔法の鍛錬に勤しんでいるはずだったのに!)

 

 ルノは心の中で悪態をつく。


 記憶は途切れてるわ2~3年無駄にしているわで幸先の悪いスタートになってしまった。

 だがまだ悲観する時ではない。

 挽回はまだ可能だろう。立ち止まることこそ愚者のすることである。

 成長するまでの期間”お願い”が言い渡されないのがせめてもの救いだ。



 とりあえず理想の異世界生活を成し遂げる為には足りないことだらけだ。

 今は焦らず地道に能力を伸ばしてからやりたいことをやっていこうと思う。



 社会人はPDCAサイクル!Plan(計画)⇒Do(行動)⇒Check(評価)⇒Action(改善)と言われているように(誰に言われているのかは知らん!異論は受け付けない!)

 着実に能力向上を計るのであればこれだろう。

 まぁアルバイターで単純作業の繰り返ししか作業の無かった僕には、前世ではあまり関係無い話だったんですけどね・・・・・・。

 会社に勤めていた期間も短かったからがむしゃらに仕事を覚えてるって感じだったし・・・・・・。

 

 それでも大学の時の講義でこのサイクルについて学んだ時の話が頭に残っていた。

 成長の達成感が今後のやる気の継続に大きく関わりそうなので、とりあえず初めだけでも計画を立てておこうと思う。


 (何を隠そう志真と言う男は飽き性な割に理想だけは高い所謂くずにんげほんげほん)



 今回はこれにそって実行してみることにする。

 何事も気持ちが大事なのだ。


 ・・・・・・なんかPDCAサイクルこなしてる自分ってかっこよくね?


 うん。やる気が1番大事!(精神論)



 とりあえず計画を立てるところから。

 紙も無いしそもそも文字も書けそうにないから脳内で作成、暗記になってしまうけど、いくつか忘れてしまっても考えないよりはマシだろう。


 やりたい事をざっくり思いつく限り挙げてみる。

 魔法の取得、この街の把握、生活向上、体力向上、洋服が欲しい、お金が欲しい、お腹いっぱい食べたい、お風呂に入りたい・・・・・・やばい細分化されてきてキリがない。


 (魔法の取得は絶対だとして、この街の把握はどうか。う~ん、これも譲れない。

 何するにも知らない土地じゃあ勝手が分からないし。

 生活向上は・・・・・・まぁ、街の把握ができなきゃ進まないか、保留。そうなるとお金稼いだり足りない物買ったりも保留だな。

 体力向上、これは・・・・・・食事量の足りていない子供がすることじゃないな、保留。

 ってか何はともあれやっぱり今居る街について調べることが大事かも。)



 まずは大まかに2つに絞って考えていく事にした。

 1つは魔法の取得。もう1つはこの街の調査。

 

 

 目標達成の為には何が必要だろうか。


 

 とりあえず生活魔法を使えるようになるのをゴールとして考えてみることとする。


 (おばあに魔法を教えて貰うのが手っ取り早いけど、ちゃんと喋れないからダメって言われたんだっけか。

 なら喋れるようになるまで発音練習が当面の目標か?

 それにしても、魔法を使えるようになる為に発音練習をすることになるとは・・・・・・うーん、異世界恐るべし。)


 魔力を感じられればすっ飛ばして魔法の練習出来るのにと、もどかしさを感じつつ次の課題ー街の調査ーについて考えてみる。


 (とりあえず街全体の把握だな。体力の限り歩き回るかどこかで地図でも入手するか。

 この身体だと体力がもたない可能性があるから歩き回るには慎重にいかないと。

 それから領主は誰とかお偉い様方への最低限の振る舞いとかは知っておくべきかも。馬車横切って死刑とかありえない話ではないし。

 もしくは出逢わないように徹底してみるか。普通に考えたら話をする機会なんてこないだろうし。

 まてよ、貴族相手よりまずは浮浪者の溜まり場みたいなこの場所での他者との関わり方とかを気にするべきかもな)


 街について考えているとあれもこれもと出てくる。一旦考えるのを止めた。

 まずは現実的なところでゴールを決めなければ。

 ルノは少し考えておばあが毎日行くであろうあの通りと家と商店街の周辺の道の散策ー例えば誰かに追われた時には迷わず逃げられる、程度の把握ーを目標とした。

 これとは別に、この溜まり場に馴染むことも平行してやっていくこととする。

 知り合いが5人くらい出来れば達成としよう。



 夜も更けてきた。


 もう一通り考えるべきことは考えただろう。

 いそいそと足もとにあった布に包まり瞼を閉じる。


 (明日から忙しくなるぞ。やりたい事やらなければならないことがいっぱいだ! だが子供があんまり夜更かしをしては悪い鬼が来てしまうな。早く寝て早く起きよう)


 

 わくわくする気持ちを抑えつつ、今日は眠りについた。




 ——————




 少しして尿意で目が覚めた。

 特にどこでしろとも教えられていないが、子供だしその辺でいいだろう。

 

 テントから出て一応人のいないようなところまできた。

 外の明かりは遠くにぼんやり見える程度なので、部屋のランプを持ってきた。

 今日はランプを消さずに寝てよかった。


 一応人のいないところまできてズボンを下す。

 まだ半人前のムスコをつかみ・・・・・・?


 ムスコをつか・・・・・・。


 ・・・・・・息子を・・・・・・スカッ。



 (おいおい嘘だろ)



 気持ちを落ち着かせて下を向く。



 うん。




 まじか。


 

 28年連れ添った相棒は今世に転生できなかったようだ。

 

 



 

 俺のハ―レム イズ ダイ。

2023/01/30 主人公の名前を変更しました


既存のやつちょっと変更加えたからミス多発しそうだなぁ~(^-^;

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ