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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その40 後継者問題解決策

作者: 天城冴

ニホン国、某与党大物政治家の誕生日パーティーの前夜。高齢の政治家である父が自分を後継者にすると発表するのではないか、と期待した長男だったが…

ニホン国、首都のとある邸宅。屋敷の主である与党大物政治家の誕生パーティーを明日にひかえ、あわただしかった屋内も準備を終えて静けさを取り戻していた。大勢の来客が来るのに備え、家人のほとんどが早めに寝ていたが、最上階の一角だけは煌々と明かりがついていた。

「お父さん、まだ起きてたんですか?」

「ああ、お前こそ起きていたのか」

「ええ、まあ…。そのお父さん、明日で75歳ですね、少し早いですが誕生日おめでとうございます」

「ああ、ありがとう」

息子の言葉に老人はにこやかにうなずいた。その年齢にしては力強い声と張りに少し驚いた息子は思わず尋ねた」

「そ、その、お父さん、なんだか、大変お元気で…。いや、いつまでのお元気なのはいいんですが、その、ご年齢も考えて…」

「ハハハ、お前、儂が元気で、驚いているのか。そうとも儂はいたって元気だ」

「そ、それは大変結構なこと…。その、まさか、引退をまた伸ばすおつもりですか?その僕もそろそろ50代になります。いつまでもお父さんの秘書ではなく、独り立ちして政治家としての第一歩を踏み出したい、いや今後のためにも踏み出すべきだと思うのですが」

「ああ、いいぞ。勝手にやるがいい。しかし儂の地盤は譲らん。来年も再来年も…ひょっとしたら永久にだ」

「え、な、なんですって!ま、まさか、妹の夫のあいつに譲られるおつもりですか!長男の僕を差し置いて!いいですか、お父さん、あいつは口こそ達者ですが、覇気がなくて、理屈ぽくって。まあ、科学者とかにいろいろ付き合いがあるようなのは、確かに役に立つかもしれませんが…」

「そういうことじゃない、誰にも譲らん、儂がずっと選挙にでるのだ」

「な、何を仰っているんです!もうお父さんは75歳なんですよ!ジコウ党は年齢制限を今回は見送ったとはいえ、国を担う政治家が老人では、何かと」

「黙れ!我々はもう老人ではない!いや老人ではなくなるのだ!」

「え、な、なんて?」

「科学の力だ!若いやつの血を輸血し、細胞を活性化して…、その、難しい理屈は抜きだ!とにかく、儂は若返り、健康と長寿、凡人ではありえない生を手に入れたのだ!これで引退なんぞ、しなくて済むのだ!馬鹿な息子や油断のならない娘婿や部下を渋々、後継者にしなくてもいいのだ!」

「ま、まさか、そんな…。確か、その研究は実験段階…」

「ハハハ、お前も知っているだろう。表向きはそうでも金の力で研究は飛躍的に進められるんだ。難しい審査だの、反証実験だの、すっとばして、被検者や装置などをふんだんに使えれば研究はどんどん進む。もっとも、そういった情報は我々トップにいるものしか手に入らんがな。もちろん、その成果もだ」

「そ、それで、若返るっていうんですか。まさか永遠に生きる気じゃ」

「できれば、そうしたいがな。そうなるためには大量の若いやつの血がいるんだよ。とはいえ20代だのと贅沢はいわんでもいいらしい。まあ50代まで、つまりお前たちぐらいまでなら大丈夫だそうだ」

「ひょ、ひょっとして僕や弟の友人たちまで呼べといったのは…。そ、そういえば、ひきこもり支援団体とかからも人を呼んでましたね」

「どうせ、社会の厄介者だ、お前も、弟もな。儂の名を借りて会社を作っては潰してるじゃないか、あいつは。お前も儂の秘書ということで、いろいろ接待をうけてるだろう。スキャンダルになりかけたのを何度もみ消してやったのか、忘れたか」

「そ、それはお父さんのためになると思ってやったまでで…」

「言い訳はいい。お前の友人も似たり寄ったりだろう。アトウダだのが嘆いとったわ。政治家じゃない兄貴のほうだがな。あそこは議員のほうを始末するそうだがな、老人同士とはいえ遺伝子とかが近ければ、より効果があるそうだ」

「兄弟で、そんな…。お、お父さん、まさか、僕の血を」

「もちろん、もらうぞ。だが、安心しろ、お前たち兄弟は生かしておいてやる。親子、兄弟の血を定期的に接種すれば、ますます若さが維持できるというからな。まあ、お前の子供のほうが良ければ、そのうち換えるが」

「ヒイイ、化け物、吸血鬼!」

逃げようとした息子を老人はあり得ないほどの力で押さえつけ、首にガブリとかみついた。


(この終わり方では消化不良という方へ)

“うん、やはり、噂は本当だったか。サンカイ幹事長が怪しげな老化防止術を行ったというのは”

ここは反政府団体のアジト。

屋敷にひそかに仕掛けられたマイクを通して聞こえた会話にメンバーたちは恐れ、おののいていた。

“若者を、息子まで犠牲にして自分の生にしがみつくとは、もはや人間ではない”

“税を搾り取り、徹底的に監視し、貧困者への救済を妨げていたのも間接的な搾取、吸血行為とはいえたが、まさか本物の吸血鬼に成り下がるとは”

“今まで、我々は平和的な活動、デモや政府の不正行為を指摘するSNSや裁判などを主として活動してきた。ぎりぎり法にふれそうなのは、こういった諜報活動程度に抑えてきたが、こうなっては、強硬手段に出るしかない。やらなければ、ニホン国は吸血鬼と化した上級国民どもに支配されてしまう!化け物の国だ”

とメンバーの声をうけ、リーダーは

“うむ、幸か不幸か、明日のパーティーの招待客に我々の仲間がいる。探りを入れる程度にするつもりだったが、放っておいては彼らやほかの招待客の命にかかわりかねない。計画を変更し、政治家どもの恐るべき陰謀を白日の下にさらすんだ!”

呼応するように、メンバーたちも声を上げる。

“そうだ、吸血鬼どもを日光のもとにさらして、退治しましょう!”

“国民の血肉をすする奴らに鉄槌を!”

ひとしきり声があがったあと、

“では、至急、作戦の練り直しだ。明日、奴らのおそるべき陰謀を暴き出し、真に国民のことを考える政権をつくるのだ。本当のニホン国の後継者をな”

リーダーの指示で、さっそくメンバーたちは中央の机に集まった。


若者の血を老人に輸血したら若返ったらしい、とかいう研究はあるらしいですが、現実に応用できるかは不明です。くれぐれも早まってやらないでください。

なお、悪人がそのままなのはイヤーとかいう方もいらっしゃる場合のため、オマケをつけました。蛇足ですが、退治されるフラグはたてましたので、ご勘弁ください。

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