はい、双子葉類でした!
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《亜空の樹・発芽種》
Lv5(レベル上限.進化可能)
魔力15/15
進化条件
[500WPT]0/500
[100魔力]100/100[条件達成]
所持スキル
【ショットLv1】【空間認識Lv2】【魔力自動回復Lv3】【星精生成】
所持スキルレベルポイント・1
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はぁ…魔力、やっと終わった…
いや、掛けた時間自体はそこまでじゃなかったけど、作業量が転生してから一番だった…
で、お水どうしよう。
私二号でさっきからずっと空を見上げてるけど、空には雨のあの時も無い。
きっとさっきの雨は奇跡みたいな物だったんだ。うん。
はぁ…あとどれくらいの間、此処で詰むんだろう。
…おや?
向こうに何か来るぞ?
あれは…でっかい牛が引く馬車だ!や、この場合は牛車か。
うーん、まだ此処の世界観はよく分からないけど、見た感じは行商人って感じかな?
いや、単に物を運んでるだけかも。
前者だった場合は、水くらいなら分けてくれるかも。
あの牛車の進路は相変わらずこっち向き。
私二号がどんな姿かはまだ詳しく分からないけど、人がこんな荒野の真ん中に立ってたら声くらい掛けてくれる…かも?
いやそれだと、逆に不審がられて近寄られもしない可能性も…
そうなったらこっちから声をかければいっか。
…てあれ、人と話す時って最初どうするんだっけ。
てか私、最後に人と話したのっていつだっけ!?
あああ来る!来ちゃう!来ちゃうよぉ!
ええとええとどうしよう、
よし、初手は待ちプ安定!
◇◇◇御者 デルケー◇◇◇
旦那様の執事としてこの国に来てからはや10年。
この道も、すっかり行き慣れた物よ。
「デルケー。デルケーや。」
俺の背後から旦那様の声がする。
旦那様は、この地域では名の知れた大商人。
恵みに乏しいこの土地の村々は、旦那様に養われていると言っても過言では無い。
「どうかなさいましたか。旦那様。」
「何だか妙だと思わぬか?」
「やはり旦那様もお気付きでしたか。」
普段なら、そろそろサソリの襲撃に遭う頃合いだ。
だが今日は、カサカサと言う奴らの足音すら聞こえない。
「…あん?」
「どうしたのだデルケー。」
「向こうに人が居ますね。…妙な格好をしていますね。」
その人は、背の高い美人な大人の女性だ。
上半身は紺色の軍服だが、履いているのはひらひらのスカート。
あれは…ストッキングか?あの薄さ、かなりの高級品だ。
髪は腰まで伸びていて、基本は紫色だが毛先は青色。
瞳は、右が紫色で左が紺色だ。
そして何より眼を引くのは、腰から生えた、背中を覆う程の大きな尻尾。蠍の尾のような形状で紫色をしているが、生物と機械の丁度中間の様な見た目をしている。
女性はそわそわした様子で、何かを待つ様に何も無い地面に立っている。
だが、此処は千里先も草すら生えない不毛の大地。
明らかに不審者だ。
女性はこの牛車の進路上に立っていたが、此処は迂回してでも関わらないのが先決か。
牛の頭を少し右に逸らし、その女性を躱す様に進路をとる。
今の俺の役目は、旦那様と物資を安全に次の村まで送り届ける事。
事なかれ、俺はその一心で手綱を握りしめた。
女性が牛車の真横に差し掛かる。
その時、女性が唐突にこちらを見る。
「あの…すいませーん…」
案の定、蠍尾の女性は俺に話し掛けてきた。
やはり近くて見ても、あの尻尾が体の一部なのか装備品なのか分からな。
しかし、声を掛けられた以上は無視出来ないな。
敵意のある様には見えないし、思えばただの迷子かもしれない。
此処は一先ず、穏便に対応しよう。
「旦那様、少々牛車を留めます。宜しいでしょうか。」
「うーむ…まあ構わぬ。」
旦那様の了承を得た俺は、その場で牛車を停止させる。
牛が少しも怯えない様子を見るあたり、この近くには本当にサソリは居ないらしい。
「どうかなされましたか?お嬢さん。」
「えっと…その…」
俺と目が合った瞬間、女性は急にモジモジしだした。
大胆な格好の割には随分と内気な性格らしい。
「…ず…」
女性は微かに何かを呟いたが、全く聞き取れない。
「えっと、なんとおっしゃいましたか?」
「その…もし宜しければ…お水を頂けないでしょうか…少しで良いので…」
「水?」
こりゃ予想外だ。
てっきり、迷子になったから乗せてくれ、とか言ってくるものかと思ったが…
水なら確か、積荷の中にあった筈。
一応この地域では飲料水はそれなりに貴重だが、人命には変えられない。
「判りました。少々お待ちください。今、旦那様に確認致します。」
旦那様は金勘定には厳しいが、どこぞのゴミ領主とは違い人情もあるお方だ。
「如何致しましょうか。旦那様。」
「そう言えば、次に行く村には最近井戸が出来たらしい。こいつは、惰性で持ってきたは良いが殆ど売れないだろうな。」
俺が振り返った時、旦那様は既に水入り瓶を持ってきて下さっていた。
「ほら。そこのお嬢さんに渡してあげなさい。」
「ご厚意、感謝致します。」
水瓶を受け取って、それをそのまま女性に渡す。
どんな時でも、村や町の外で旦那様を馬車から出せはしないからな。
「どうぞ。」
「あ…ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
こんな場所で水無しとは、この人はやっぱり迷子なのか?
一応は次の村まで案内くらいはしてやっても…
“チャパパパパパパパパ…”
…は?
おい、こいつは一体何をやってるんだ?
水瓶をそのまま地面にひっくり返しやがったぞ?
「あの、お嬢さん、一体何を…」
「…双子葉類だ…」
「そうし…何て?」
「やったああああああ!ちゃんと育ったあああああああ!」
「うわ!?」
女性が急に飛び上がって叫び出す物だから、俺も牛も驚いちまった。
一体なんだってんだ?
何が育ったって…
「……!」
嘘だろ…
この大地に、植物が生えてやがる…
◇◇◇商人 ルガ◇◇◇
「煩いな…一体何の騒ぎだデルケーよ。」
「旦那様!草です!この大地に、植物が!」
「何じゃと!?」
嘘じゃろ…
とうとう大地の呪いが解けたと言うのか!?
「見て下さい旦那様!双葉です!小さいですが、本物の植物です!」
ん?
私はいつの間に牛車の外へ…
いや、今はそんな事はどうでも良い!
「おお…これは…!」
とうとうこの大地は、魔神様の許しを得たのか?
それともこの双葉が、呪いに打ち勝ったのか?
いや、この際もう何でも良い!
今我々は、歴史的瞬間に立ち会って居るのだから!