第5話
年月が経って、アルヴィレ視点です。
ウィアさんと会ってから、5年。
そう、5年が経ったのだ!
姉が大学で父さんの同類らしき男に捕まったり、両親が数日留守にしたと思ったら「ウィアと会ってきた」なんて言われて主にオレがぽかんとしたり、一方的に送り続けていたラブレターに初めて返事が返ってきたり!
5年間は色々あったし、長かったけど。
ちなみに高校を卒業した後は両親の元、異世界暮らしのためのハウツーを教わっていた。
つまりは飲み水を生み出す魔法を冷やしたり美味しくする方法とか、異世界で簡単にお金を稼げる方法(空澄家バージョン)とか、そういうあっちに行ったら役に立つ技術を教えてもらったのだ。
「まず夢で会いに行って召喚してもらうために説得する必要があるかな、それとも明日にでも呼び出してもらえるかな!」
「お兄ちゃん、元気だね……」
「アル、夢で会いに行くってどうするの? 5年前のあれは偶然なんでしょ?」
「執念と根性で再現する」
「「うわあ、即答……」」
なんか引かれた。何故。
「いや、風香も同じ状況になったら根性でなんとかするでしょ?」
「根性は使わないかな」
「なんとかしようともがくのは変わらない、だろ?」
「否定はできないけどなんかムカつく」
「いひゃいですねーさん」
風香にほっぺを思いっきり引っ張られた。痛い。
そんな茶番をオレたちがしている横で、時奈はうーん、と考え込んでいた。
「わたしは……そもそも好きな人まだ居ないしなあ」
「時奈はなんか異世界から見つけてきて日本に連れてきそうだよね」
「え、なんで?」
風香の言葉にきょとんとする妹に、それはあれだよ、とオレは説明する。
「長女の風香は日本人と結婚してこっちで暮らすじゃん?」
「まだ結婚しようとかそういう話は出てないけどね」
「シャラップ、前提にお付き合いしてるのは確かでしょ」
楽しそうに茶化してきた風香にそう言い返すと、まあ確かにそうだけど……と微かに顔を赤くする。
カレと出会うまではレアだった風香の照れ顔である。今はカレの話をすればすぐ赤くなるからレアでもなんでもないけど……うん、うちの姉さん可愛い。
「で、弟のオレはあっちで異世界人と結婚予定じゃん?」
「そう……だね?」
それでどうなるの……? という顔の時奈。流石花のJK、あざと可愛い。
「となると、末の妹である時奈は異世界人と結婚してこっちで暮らすんじゃないかなーってお兄ちゃんは思うんですよ。ほらバリエーション的に」
「物語じゃないんだしバリエーションとかは関係なくない?」
「まあそうだけどさー。ニュアンス!」
風香の茶々入れにぶーたれる。
……こーゆーきょうだいの掛け合いも、あっちに行ったら中々出来なくなるんだよなあ。
ちょっと寂しいけど、今更ためらわない。そこで伴侶よりきょうだいを優先するような性格は流石にしてないのだ、オレは。
……おそらく、風香も時奈も。父さんも。母さんはちょっとわからないけど。
父さんの血を継いだのか、そのへんは似たもの同士なのがオレたちなもので。
風香とか、クリスマスとかバレンタインとか、恋人同士のイベントってやつはカレシ作ってからずっとあっちの家でイベント満喫してるみたいだしな! オレもイベントにかこつけてウィアさんとイチャイチャしたかった!
空澄家ではイベントの当日はおおむね、家族団らんは朝、午後や夜は恋人の時間である。うちの両親も含めて。
「風香、時奈。父さんも母さんも……じゃあな」
「ん、元気でね」
「頑張ってね、お兄ちゃん」
「あいつ、恋愛耐性皆無だから……加減、頑張りなね」
「異世界でも元気でな、アル!」
それほど広いわけじゃない廊下に家族が全員集まって。
笑顔での言葉にオレも笑顔を返して、部屋のドアを閉じた。
「さて、ウィアさんに会えますように……というか絶対会いに行くからウィアさんが驚きませんように……」
いざ、就寝。
……そこ、しまらないとか言うなよ?
補足コーナー
・空澄家の恋愛事情
風香:カレシが囲い込む派の押せ押せタイプだったので遠目に見る分には受け身に見える。実態は風香の6割わざとなラブラブ攻撃にカレシが「私の風香が可愛い……っ」と倒れる感じ。父の血(というか教え)は濃いが母似でもある。
アル:計算高く詰め寄るタイプ。父似。独占欲は結構高め。
時奈:ぽわぽわしてるように見えてしっかり旦那を捕まえてくる(予定) 旦那が自分以外の女性と話してるともやもやするぐらいにはちゃんと独占欲を持つ。
光:さっぱり笑顔で「愛してるぜ!」とか言うタイプ。でも嫉妬はする。一歩間違えればストーカーな旦那の愛を苦笑いで全部許容する懐の広さがある。
雹:光が離れる?許さないよ?なヤンデレタイプ。普段は光に浄化されてあまり出てこない要素ですが。彼女の男嫌いを幸いにライバルをガンガン排除していたという設定がある。