第4話
一方その頃……。ウィア視点です。
不定期で送られてくる、ヒョウ様からの手紙。
ヒカル様が直感で魔法を使って転送しているらしい(あの方は感覚派なのだ……)その手紙が送られてきたのは、アルヴィレと名乗った少年……ヒカル様とヒョウ様の息子らしい彼が帰った、翌日のことだった。
『ウィアへ
久しぶり。前に手紙を送ったのは3ヶ月前だけど、元気にしてる?
と、挨拶はこの辺にして、早速本題に入るね。
うちの息子……アルヴィレが、昨日君と会ったと話してくれた。
その時、アルは君に一目惚れしたらしいね。告白されたって聞いたよ。
早く大人になりたいって気合を入れてるから、覚悟しておいた方がいいよ。
そういう訳で、これから手紙を送る頻度が増えることになると思う。
アルヴィレが君に恋文を送るって笑顔で机に向かったからね。
気が向いたらでいいから、返事も書いてあげてほしいな。
――空澄雹』
…………どこから突っ込めば!?
彼……アルヴィレが、なんというか、その、こ、こくはく、というものをしてきたのは事実だが……事実なんだが……。
「なにをどう覚悟すれば良いのでしょうか……」
恋文か? 恋文とか言うおそろしいものか?
しかも返事を書く、ということはその手紙をしっかり読む、ということだぞ?
なんというか、真っすぐ言葉を投げてきそうな、彼の、こ、恋文を。
「無理な気がします、ヒョウ様……」
思わずそう呟いて、私は頭を抱えた。
なお、翌日。
『アルが昨日の夜には完成させていた手紙を送ります。光がむくれながらも頑張ってくれた甲斐がある返答が来ることを、空澄家一同期待しています』
そんな、ヒョウ様の字で書かれたメモ用紙と共に、薄いピンク色の封筒が送られてきて。
おそるおそるそれに目を通すことになることも。
その甘さに耳まで真っ赤になる羽目になることも、その時の私は予想できていなかったのである。
補足コーナー
・アルヴィレの手紙
詳しい内容は不明(作者が考えていないとも言う)
ウィアにとっては尋常でない甘さを持つその手紙は、1週間に一度、数枚の便箋にみっちり書かれて送られてくるのが常となる。
文章の内容は、ホットココアを好んでいたウィアが、彼からの手紙を読む時はブラックコーヒーを用意するようになったほどだったとか、なんとか。