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白いページの中に-6

            *


 遮断機が上がり、踏み切りを越える。子供たちが駆け出していく、ため池のほうへ。

 角を曲がると、池端に子供たちの集う姿が見えた。けれど、あたしの視線はそこから外れて右へ向けられた。植木の陰にかすかに見えるブランコ。あたしの足はただその方向へ踏み出していく。

 公園の角に差し掛かって植木の間から覗いてみる。

 いる。予想どおり、ブランコには、石川君が揺られている。

 公園の入り口に回ってゆっくりと近づく。ジャリ、と砂を踏む音がかすかに鳴る。それに併せたように、彼は顔を上げた。

「来てくれると、思ってた……」

 思いがけない台詞に、あたしは言葉を失っていた。

「……来て欲しかったんだ、……きっと」

 力なく動く唇に魅入られて、あたしは動けなかった。彼の唇から、瞳へと、そして顔全体へと焦点を合わせて、ようやく彼が泣きそうな顔をしていることに気づいた。叱られた稚い幼子のようなその表情は、とても強面の評判の石川君を想像することはできなかった。

「……俺、……どうしたらいいんだ」

訴えるような言葉に、身動きできなかった。このまま抱き寄せてしまいたいほど、彼は脆く儚い存在に思えた。

「……警察は、…何て?」

「……あいかわらずさ。……それに、近藤のやつ、どっか行っちまった」

「え…?」

「逃げたんだよ……。今日、学校に来なかった」

「でも、……家にいるかも」

「…ちがうんだ。約束したんだ、無実なんだから、絶対休まないでおこう、って。休んだら、犯人にされちまう……」

「そんな…」

「なのに、あいつ、休んだんだ。逃げたんだ」

「い、家に、行ってみたら?いるかもしれないよ」

「……電話したんだ、学校から。そしたら、いない、って、学校に行きました、って、あいつのお袋さんが言ったんだ」

「…そ、そんな……」

「もう、だめだ……」

「ね、あたし、一緒に行ってあげる。だから、帰ろう。大丈夫よ。ちゃんと説明すれば、わかってくれる」

「……だめだよ。みんな…もうだめなんだ」



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