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「石川君?去年一緒だった?」

「そう」

「なに、急にそんなこと聞いて?」

「ちょっと、昨日帰りに会ったの」

「あぁ、なに、それ?」

 少し笑みを浮かべながら美枝は深幸を見つめた。

「そんなじゃないわよ。ね、どんな子だったか覚えてる?」

「んー、あんまり。あんまり、話したことなかったしね、それに、ちょっと石川君って怖かったじゃない」

「え、そうだった…?」

「うん。ちょっと、ワルっぽくって、けっこう学校サボってたじゃない」

「ぅん…そうだったっけ?」

「そうよ。あ、松山君、石川君ってどんな子だった?」

美枝ちゃんは、近くにいた松山君の腕を引いて訊いた。

「なに?石川?石川って、去年一緒だったやつ?」

「そう。覚えてる?」

「ん。クラブ一緒だったから」

「何のクラブ?」

「バレー部だよ。だけど、あいつ上級生とケンカして、夏ぐらいに辞めたんだ」

「そうだったの」

「石川の友達が、上岡の悪いグループとつきあってて、石川もおんなじように遊んでて、よくクラブサボってたんだ。それを咎められて、揉めて辞めたんだ」

「どんな感じの子?」

「どんなって、気の強い、チンピラみたいなやつだよ」

「この学校じゃ珍しいわね」

「まぁ、運動神経はよかったけど、練習嫌いだったから、先輩に睨まれたんだ」

「不真面目タイプね」

「でも、あいつ、態度が悪かったんだ。掃除もしないし、注意されても聞かないし」

「あ、思い出した」

「なに?美枝ちゃん」

「そうそう、一回、あの子に助けてもらった事あったわ」

「え、なに?」

「体育倉庫にボール取りにいったときよ。先生に言われて一人で行ったんだけど、うっかり籠ひっくり返しちゃってさ、慌てて片づけてるときにたまたま石川君が来て、一緒に片づけてくれたの」

「…そう」

「黙って手伝ってくれたわ。はじめちょっと怖かったけど、あぁ、いい子だなって思ったの」

「そんなことあったの……」

「ところで、深幸ちゃん。昨日、その石川君と、ナニがあったのかナ?」

「べ、別に、何もないわ」

「あやしいわね……」

「あ、そうだ、近藤君って知ってる?」

「誰、それ?」

「石川君の友達だって。どこのクラスだろ?」

「もしかして…」

「なに?」

「石川君に、紹介してもらったの?」

「な、なに、バカなこと言ってるのよぉ」

「アヤシイなぁ」

 明ちゃんと美枝ちゃんが囃し立てる。

 そんな場面に自分がいることが、不思議だった。いまも、石川君は、きっと、悩んでいるのに。


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